三　星　城 岡山県美作市明見・入田 立地・構造 　三星城は梶並川と滝川の合流部の西岸、独立丘陵三星山（標高２３３ｍ　比高１５０ｍ）に築かれた山城です。城の規模は東西４５０ｍ×南北４５０ｍほど、城郭遺構は東西に並ぶ三つのピークを中心に全山にわたって展開され、山麓に設けられた居館・屋敷と山頂部に設けられた「詰の城」・要害からなる典型的な根小屋式城館の類例と思われます。山頂ピークに構築された郭群は東から伝本丸（弊サイトは東郭）・伝二の丸（同主郭）・伝三の丸（同西郭）と伝えられ、規模はそれぞれ伝本丸が東西５０ｍ×南北９０ｍ、伝二の丸が東西５０ｍ×南北２０ｍ、伝三の丸が東西１００ｍ×南北４０ｍほど、各郭群ともに派生した稜線を小規模な段郭群に加工した単調な構造になっています。各郭群は堀切で断ち切られているわ 三星城概念図 けではなく稜線鞍部で繋がっていて、各郭群が連繋することにより独立性を高めていたと思われます。基本的には東郭群・西郭群の平場が比較的規模が大きく有事の際の避難郭、主郭部が東郭群と西郭群を結ぶ繋ぎの郭、物見・監視郭として機能していたと推測されます。北東麓の丘陵突先端（比高３０ｍ）に築かれた屋敷地（居館部）は東西８０ｍ×南北６０ｍほど、内部は西から東側にかけて３段に削平され、下段の郭の東・北側下には腰郭が設けられています。屋敷地の谷を挟んだ南側には伝米蔵と称される平場が設けられています。屋敷地の西側の丘陵先端には伝西の丸（弊サイトは北郭）と称される出丸が設けられ、平場の北・西側縁部には土塁が築かれています。大手導線は屋敷地から北郭を通り、山頂のピークに繋がるルートと想定されますが、この間の稜線には北郭から延びた竪土塁が断続的に構築され三星城の特徴になっています。同地は梶並川と滝川が合流する河川交通の要地、また播磨からの旧出雲街道が備前方向に分岐する交通の要衝になっています。 　築城時期・築城主体ともに不明。一説には応保年間（１１６１－６２年）、渡辺長寛により築かれたとも。その後、南北朝期　後藤下野守康基が足利尊氏から勝田郡の地頭職に任ぜられて湯郷に入部し、以後　後藤氏は三星城を拠点にしたと伝えられます。康安元（正平１６　１３６１）年、足利幕府から離脱し南朝方に寝返った山名時氏が美作に侵攻すると後藤氏は山名氏の支配下に組み込まれ、また明徳２（元中８　１３９１）年に勃発した「明徳の乱」により山名氏の勢力が美作から衰退すると、代わって美作守護職となった赤松義則に従属しました。しかし嘉吉元（１４４１）年、「嘉吉の乱」により赤松氏が没落して美作守護職に山名教清が任ぜられ、後藤氏はふたたび山名氏に従いました。「応仁の乱」（応仁元　１４６７）年を境に美作はふたたび赤松氏の支配下に置かれましたが、後藤氏は徐々に独立色を強め、明応７（１４９８）年には後藤勝国が立石景泰の美和山城を攻撃して討死し、文亀２（１５０２）年　嫡子勝政の代に美和山城を攻略して美作東部の有力国人に成長しました。そして永正１６（１５１９）年、美作守護職赤松義村と備前守護代浦上村宗が対立すると、後藤勝政は美作守護代中村則久等とともに浦上方に与して村宗と行動をともにします。しかし天文２２（１５５３）年、月山富田城主尼子晴久が美作に侵攻すると後藤勝基は美作の国人衆とともに尼子氏に出仕し、美作東部の中小領主を傘下に収め、弘治元（１５５５）年には赤松派の豊福氏を美作から駆逐しました。そして永禄５（１５６２）年頃、尼子氏の勢力が衰退すると、勝基は天神山城主浦上宗景に誼を通じて同８（１５６５）年、尼子氏の代官川副久盛の林野城を攻略して東美作の支配権を掌握しました。この間、美作東部は毛利氏と結んだ三村家親の攻撃に晒されましたが、勝基は浦上氏の被官宇喜多直家の支援を受けてこれを撃退しています。しかし天正５（１５７７）年、宇喜多直家は天神山城を攻撃して浦上宗景を播磨に追い落とすと、さらに美作への侵攻を開始します。このため勝基は茶臼山城主笹部勘ニ郎等とともに宇喜多勢と対峙しましたが、同７（１５７９）年５月　三星城は花房助兵衛・延原弾正景能率いる宇喜多勢の攻撃を受けて陥落し、勝基は逃れる途中で自刃したと伝えられます。 歴史・沿革 三星城　主郭（現地表示は中二の丸） メモ 美作東部の国人　後藤氏の要害 形態 山城 別名 ・・・・・・・・ 遺構 郭（平場）・土塁・櫓台・水の手 場所 場所はココです 駐車場 登り口に空地あり 訪城日 平成２２（２０１０）年３月２８日 三星城はＪＲ林野駅の西方６００ｍに位置する独立丘陵三星山に築かれた山城です。（写真左上）　三星城は東西に並ぶ三つのピークに郭群が設けられ、また北側に延びた稜線の突端にも郭が配置された大規模な城館で、北東麓の高台部分に日常居館（屋敷）が構えられています。城へは北東麓の美作中央病院の脇から登山道が設けられ（写真右上　説明板あり）、軽四駆だったら中腹部分まで車で登ることができます。（管理人は軽四でなかったため麓から歩きましたが・・・・・・・・・）　でっ、登山道を登ると進行方向左側に「米蔵祉」の標柱が建てられています。（写真左）　平場は２５－３０ｍ四方ほど、ま～～～、屋敷地に隣接して倉庫が置かれていたのでしょう。 屋敷地（写真左上・右上） 後藤氏の日常居館が置かれていたと思われる平場で周囲より３０ｍほど高い丘陵突端に位置します。規模は東西８０ｍ×南北６０ｍほど、内部は西から東側にかけて低い段差で３段に削平され、下段の郭の東・北側下には腰郭が設けられています。（写真右）　規模は下段の平場がもっとも大きく東西３０ｍ×南北４０ｍほど、上段の郭は１５ｍ四方ほどの小郭で後藤勝基の墓碑（供養塔）が建てられています。（写真左下）　さらに上部には犬走り状の通路？が敷設され、本来はこのあたりから城道が設けられていたのでしょう。（写真右下） 現在、屋敷地からの登山道（林道）は北側に延びた稜線の東側斜面に敷設され（写真左上）、じきに北郭に辿り着きます。（写真右上）　北郭は現地表示では「西の丸」とあり、屋敷地の西側に位置することからきているのでしょう。規模は東西２０－２５ｍ×南北５０ｍほど、北・西側縁部には分厚い土塁が築かれています。（写真左）　北郭から主郭方向に延びた稜線にも郭が設けられていたと思われますが、この部分は林道建設で遺構は消滅しています。ただし稜線の急傾斜部分は林道が迂回するように敷設されており、このあたりに平場が設けられていたのでしょう。（写真左下）　また稜線の西側縁部には長大な竪土塁が築かれています。（写真右下） でっ、林道は主郭下の平場に辿り着きます。（写真左上）　平場部分も相当改変されており、往時のものかは判断不可能。ここから主郭へも登山道がありますが、管理人は伝本丸とされる東郭方向に進みました。しばらく進むと岩井戸と表示された巨大な井戸祉が残っています。（写真右上） 東郭群（写真右） 全体の規模は東西５０ｍ×南北９０ｍほど、ピークに構築された平場を中心に北東・南側稜線に段郭群が敷設されています。（写真左下ー北東側の段郭群　写真右下ー南側の段郭群）　ピーク部分の平場は東西２０ｍ×南北３０ｍほど、櫓台と思われる土壇が築かれています。 主郭（写真左上） 全体の規模は東西５０ｍ×南北２０ｍほど、内部はピーク部を中心に東・西側稜線に腰郭が敷設されたシンプルな構造になっています。（写真右上ー東側の段郭群）　ピーク部分の規模は６－７ｍ四方ほど、規模は小さいものの眺望に優れ、旧出雲街道が通る平野部を一望にできます。（写真左） 　 （写真左下）　主郭から東郭方向 （写真右下）　主郭から西郭方向 西郭群（写真左上） 全体の規模は東西１００ｍ×南北４０ｍほど、このうち山頂ピーク部は伝三の丸と称され、規模は東西４０ｍ×南北１０－１５ｍほど。ピークから東・西側に延びた稜線は数段の段郭群で処理されています。（写真右上ー東側の段郭群）　主郭との鞍部部分は比較的広い平場になっていて、堀切等は見られません。（写真右）