日本のリーダーとして初のエストニア訪問
11月12日、安倍晋三首相が日本のリーダーとして初めてエストニアを訪問しました。日本国内では「安倍ちゃんがなぜか東ヨーロッパ諸国に北朝鮮の脅威を宣伝しまくるツアー」などと揶揄されているようですが、訪問国側はそんな安倍ちゃんでも丁重にお迎えしておりますよ。
安倍首相のスケジュールについてはエストニア政府のホームページがプレス向けに事前に発表していました。
https://twitter.com/Kino_Eesti/status/951462184135118848https://twitter.com/Kino_Eesti/status/9514621841351188わたくしは大統領府があるカドリオルグからほどない場所に住んでおりましてですね。首相の到着予定時刻に現場までわざわざ野次馬に出かけて、大統領府に入る安倍ちゃんの姿をツイッターから生中継していたのでした。野田草履かよ。
(送迎車から降りる安倍首相)
ケルスティ・カリユライド大統領も会見の様子をツイートしていました。
大統領府には昭恵夫人の姿が見えなかったのですが、現地報道によりますとアッキーはタリン市内のヤルヴェオツァ中等学校の日本語クラスを訪問し学生たちと交流していたようです。
アッキーのフェイスブックを見ると「昭恵文庫」なるものを残していったようですね。
カリユライド大統領との会見後、安倍首相は世界遺産区域内にあるトームペア城の政府施設に移動し、ユリ・ラタス首相との首脳会談を行いました。
エストニア政府の公式ツイッターも英語で次のように報じています。
NATOのサイバー防衛センターは、サイバーセキュリティー技術に日本が協力を表明したことを歓迎するツイートをしています。
「電子政府のスポークスマン」として知られるトーマス・イルヴェス前大統領もNATOセンターのツイートを引用してツイートしていました。
エストニアの最大の関心事は「対ロシア」
日本側がアピールしていた「北朝鮮への圧力への協力要請」については、エストニアではそこまで重点的に報道されていません。それよりも「日本がサイバーセキュリティー技術での協力を表明したこと」が大きく伝えられています。
これ、単なる技術的な協力というだけではないんですよね。世界最先端の電子政府を擁するエストニアがサイバー戦争の仮想敵国としているのは、言うまでもなくロシアですから。
そもそもエストニアにNATOのサイバー防衛センターが設けられているのも、2007年にロシアから大規模なサイバー攻撃を受けたことがきっかけですからね。
サイバー攻撃どころか、特にクリミア危機以降はロシアとの武力衝突の可能性も視野に入れてNATOとともに有事に備えているのがエストニアです。
外務省がエストニアの新聞が掲載した安倍首相インタビューの日本語訳を掲載していますが、ここからもエストニアにとって最大の関心事がロシアであることが伝わってきます。安倍首相には「安倍ちゃんのお友達のトランプは米露関係についてどのような展望を持っていると思うか」といった遠回しな質問をしていて(笑)安倍首相も遠回しに回答しています。
パエヴァレフト紙(エストニア)による安倍総理大臣インタビュー | 外務省
これまでロシアにはあまり強硬な対策を取ってこなかった、どころか比較的融和的に見えた安倍外交ですが、今回のエストニア訪問でEUおよびNATO寄りのスタンスをアピールすることになりました。「日本が(ロシアを最大の脅威と見なしている)NATOのサイバーセキュリティーに協力を申し出てくれた」というのは、エストニアの安全保障にとっては好都合な材料というわけです。
おまけ
エストニアの報道が日本一色となった1日でしたが、エストニア公共放送のニュース番組にタリンの日本食レストラン「Tokumaru」のオーナーが出演していました。エストニアで最も有名な日本人の一人です。またお店もタリンではよく知られた人気店です。
また、特に日本語専攻の学生たちは「日本―エストニア間のワーキングホリデープログラムの設立に安倍首相が前向き」という報道を大歓迎しているようでした。これは安倍ちゃんの言うとおり早く実現したらうれしいですね。