たしかに、イーサリアムもビットコインも、会社員が作ったものではないですが、なぜそれが会社員を批判してもよい理由になるのでしょうか。というのも、この世の中に溢れているサービスや商品は個人ではなく、ほとんど会社員が組織として働いて生み出しているものだからです。
たしかに情報技術といった知識集約型の産業では組織に依存せずに、個人が高い価値を生み出せるかもしれませんが、ほとんどの商品は組織で働いて生み出したほうが、効率的です。例えば車を個人がつくることができますか?パン焼き器を個人が0からつくることができますか?ビルを個人が建設することができますか?この世のほとんどのサービスや商品は個人では生み出せません。
イケハヤさんは毎日、通勤電車に揺られるオフィスワーカーだけが会社員だとでも思っているのでしょうか。そんなのはごく一部の人たちです。
どんなに通貨を持っていても、その支払い先には必ず労働者がいます。「世界は誰かの仕事でできている」っていうキャッチコピーあるじゃないですか?あれ本当にそのとおりだと思うんですよ。誰かが現場で働いてくれているから、いろんなサービスを受けたり、商品を使うことが出来てるんです。多くの人が会社で働いているから、私たちは今の生活を享受できているんです。こういうことをいうと、イケハヤさんは決まって、そんな仕事はロボットやAIが代替するって言うじゃないですか?じゃあ、そのロボットやAIをつくるのは誰ですか?個人がすべて生み出せるとでも?ロボットに使われる樹脂や金属、プラスチックといった素材はどうやって手配するんですか?どうやって量産化するんですか?それを個人ができますか?
それに、ロボットやAIが全てを代替できるわけじゃありません。ゴミ屋敷の清掃をロボットが対応できますか?道路の配管工事ができますか?仮にあらゆる業種にロボットやAIが完全に普及して、全ての労働者を駆逐したとしても、今現在働いている人たちを否定しても良い理由にはならないと思いますし、否定する意味もないと思います。なぜなら、今も会社で働いている人たちがいるおかげで今の私たちの生活があるからです。イケハヤさんがかけている眼鏡だって会社員がつくったものです。
イケハヤさんは労働の価値をいくら稼げるかという点だけにフォーカスしていますが、この世界には医療や福祉といった生産性だけでは計れない産業、市場化できない、あるいは市場化すべきでない産業もあります。
情報技術だけが、労働ではありません。情報技術だけがあれば、生活できるわけでもありません。どんなに仮想通貨の値が上がったところで、それとは全く無関係な場所で、実際に手を動かす労働者、足を動かす労働者、現場で頭を働かせる労働者がいないとこの世界は成り立ちません。私たちは、そうした労働者に敬意を払い、感謝すべきであって、やれオワコンだの、社畜だのと貶すことにいったい何の意味があるというのででしょう?人の心を逆なでするだけではないでしょうか。人の心を傷つけるだけではないでしょうか。
価値を生み出し、社会貢献することに個人も組織も労働者も関係ありません。
「何か間違ってます?ぼく。」とのことですが、労働者の恩恵を受けながら、労働者を畜生呼ばわりするのは倫理的に間違っています。
感謝をすれば人の幸福度は高くなることがわかっています。今の日本社会、質の良い商品やサービスが手に入るのが当たり前になり過ぎていて、感謝することが難しくなっているように思います。だから、それを提供してくれている労働者にも感謝の気持ちを抱きづらくなっているのだと思います。日本は先進国の中でも幸福度が低いことで知られています。その要因の一つとして、感謝できない人が増えているからではないかと思うのです。それは、影響力ある人が会社員を貶すことと無関係ではないでしょう。
ここまで書いてもイケハヤさんには届かないかと思うと残念です。労働者は必要な存在です。会社で働く人がいるおかげで享受できている幸福がこの世界にはたくさんあります。できればこの記事を読者の皆さんに拡散していただけると幸いです。よろしくお願いします。