2018-01-15

今日、ぼくの世界から緑色が消えました

筒井康隆小説に、世界から文字ひとつずつ消えてゆくという物語がある。文字が消えると、それを使って言語表現されていた物や概念も同時に消えていくのだ。「あ」が消えると、アトムが消え、アイスが消え、愛が消えるといったように。

今日、ぼくの世界から緑色が消えました。

彩りの中で最も推していた色が、これから徐々に透明になっていくらしい。透明になることを本人が望んだそうなので、ならば、まぁ、仕方がないとしか言えない。

透明な色は世界に紛れて見えなくなる。見えなくなっても、無くなってしまうわけではない。モスキート音がぼくには聞こえない周波数で鳴り続けるように、透明になった緑色はぼくの見えないところで世界を彩っていくんだと思う。

それが絶望なのか希望なのか、今はまだわからない。

緑という色は、三原色の組み合わせによって生まれる色。黄色と、何色を混ぜたらよかったのか。今ではもううまく思い出せない。

きみもぼくも幼かった頃、絵の具を混ぜて遊ぶパレットの上はいつも発明ばかりだったね。運動会とき、緑組になったからって、きみの名前ハチマキに書いたこと。今ではもうまじで思い出したくない記憶だけど、でもそれもよかったなって思うよ。

透明になったきみを、それでも愛すとは言わないよ。

透明になったきみを、それなら忘れ去れるとも思えないよ。

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