「GQ GLOBAL VIEW」は世界中のコンデナストグループの雑誌記事から『GQ JAPAN』編集部が独断で厳選したトピックをお届けする国際版です。
アルバニアの山奥に人知れず暮らす男装の女性たちがいる。彼/彼女たちは「ブルネシャ」と呼ばれ、アルバニア国内でもほとんど伝説の存在と化している。謎めいた彼らの生態を追って、アルプスの僻地を訪ねた。
Text: Kei Wakabayashi Photos: Jill Peters
筆者のマイケル・パタニティの元に写真が送られてきたとき、彼は最初それが何を意味するのか読み解くことができなかった。それはアルバニアに暮らすオッサンや爺さんの写真だった。けれども、すぐに「ん?」と何かが引っかかり始める。そう。オッサンや爺さんだと思っていた被写体は、実は女性なのだ。彼(彼女?)らはレズビアンなのだろうか? 違う。ブルネシャ(Burrnesha)と呼ばれる人たちだ。
アルバニア人にとってもその存在は謎めいている。現在、いったい何人のブルネシャがアルバニアに生きているのか研究者ですら明言できずにいる(多くて100人ほどと言われる)。「まるでユニコーンみたいですね」。
取材のためにアルバニアを訪れた筆者のパタニティが問うと、自身がブルネシャでもある案内人はこう答える。「ユニコーンは実在しない。ブルネシャは実在する」。
ブルネシャの起源は不確かだが、500年ほどの歴史をもつとされる。アルバニアに古来から伝わる「Kanun」(カノン/教令)によって定められた誓いをすることで、女性が男性へと変わることが許されるのだが、こうした取り決めがなされたのは、主に男性の相続人を失った家系が財産や土地を、家族内の女性に継がせるための「抜け穴」としてだったと考えられている。代わりに、性転換した女性は、一生処女として生きることが定められる。




