トランプ氏の1日の時間割 オバマ氏やブッシュ氏と比べると
ドナルド・トランプ米大統領の毎日の執務時間が短すぎると、批判の声が上がっている。しかし、「9時5時」では働かない米大統領は、トランプ氏が最初では決してない。
米ニュースサイト「アクシオス」が入手したホワイトハウスの予定表によると、トランプ氏のその日最初の打ち合わせは、午前11時。それまで3時間の「エグゼクティブ・タイム」が入っている。
報道によるとこの「エグゼクティブ・タイム」とは主に、トランプ氏がホワイトハウスの居住部分でテレビを見たり、ツイッターをしたりして過ごす時間にあてられているという。
これに対してホワイトハウスは、トランプ氏はこの時間を使って重要な電話をしており、「1年中ほぼ毎日長時間働いている」と反論した。
トランプ氏についてはかねてから、テレビを見すぎだという批判が絶えない。「アクシオス」の報道は、その批判をあらためて浮き彫りにするものだ。
トランプ氏の普段の予定は
アクシオスが入手した予定表は、ホワイトハウスが毎日メディアに送るものとは違う。
記事によると、トランプ氏は午前8時~午前11時の間に大統領執務室で過ごす時間を「エグゼクティブ・タイム」と呼んでいるが、実際にはこの間、居宅でテレビを見たり、電話をかけたり、ツイートをしたりしているのだという。
トランプ氏は午前11時頃、その日の最初の打ち合わせに出席する。これは通常、情報機関による情報共有の場だ。
アクシオスによると、さらに大統領は「エグゼクティブ・タイム」休憩を何度か挟みながら数回の会議に出席した後、午後6時頃には居住部分に戻る。
トランプ氏は予定表にない数回の「エグゼクティブ・タイム」休憩は、大統領執務室の隣の食堂で、ケーブルニュースを見て過ごすのだという。
アクシオスが例示した1日の例では、午前11時の「ポリシー・タイム」で1日が始まり、正午に「エグゼクティブ・タイム」、その後1時間の昼食をとり、さらに午後1時半から「エグゼクティブ・タイム」と続いている。
大統領の日々の時間割は、就任1年の間に変わったという。
就任当初は、ルーズベルトルームで朝食をとりながら打ち合わせをしていたが、そのうち次第に1日の始業時間は遅くなっていった。国内外を訪問中は、業務時間はいつもより長くなる。
他の大統領の始業時間は
トランプ氏以外でも、大統領の業務時間はバラバラで、変則的な時間割の大統領は多かった。大半は自分のニーズに合わせて日々の予定を組んでいた。
ジョージ・ワシントン大学のマシュー・ダレク教授によると、バラク・オバマ前大統領は朝の運動を日課としていた。その後、午前9時か10時頃に業務を始め、夕食時には必ず居宅に戻り、家族と食卓を囲んでいた。
アクシオスによると、対照的にジョージ・W・ブッシュ元大統領は午前6時45分までには大統領執務室に入っていた。
ブッシュ氏は早寝早起きで知られていたが、オバマ氏は「夜更かし」の習慣があり、時には、家族が寝た後の午前1時~2時まで起きて仕事をしていたようだとダレク教授はBBCに話した。
リンドン・ジョンソンやビル・クリントンなどの元大統領は、深夜に電話をすることで知られていた。
そうした中でトランプ氏の執務時間が取りざたされていることについて、ダレク教授はトランプ氏の精神状態を疑問視する最近の報道に言及し、報道されているトランプ氏の時間割は効果的な政権運営能力に悪影響を与える可能性があると指摘した。
トランプ氏の日々の日程は「混沌(こんとん)を反映し、混沌そのもので、混沌を助長している」と教授は言う。
ロナルド・レーガン元大統領の執務時間は、任期の後半、どんどん短くなっていったとダレク教授はいう。
任期最後の2年間、レーガン氏は政策の詳細に関与していなかった様子で、会議中にうたた寝することもあった。
レーガン氏は退任から5年後、アルツハイマー病と診断された。
トランプ大統領の生産性は
レーガン氏は任期終盤、「ペースを落とす」必要があったが、トランプ氏にその様子はまったく見られない。
トランプ氏のツイッター・アカウントは、早朝から深夜までツイートを発信している。
ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は、アクシオスの記事に対して、大統領の職業倫理を擁護した。
「午前中は居住部分で過ごす時間と執務室で過ごす時間が混在しているが、この時間帯には常に政権スタッフ、複数の議員や閣僚、外国首脳と電話でやりとりしている。トランプ大統領は私が今まで見てきた中で最も勤勉な人物で、1年中ほぼ毎日、長時間働いている。大統領についていくのが大変なので、ペースを落としてくれたらいいのにと言う記者は多い」
しかしトランプ氏の時間の使い方については、「時間割がしっかりしていないと、有害で、本人を消耗させる危険がある」とダレク教授は指摘し、その例として大統領のツイートをあげる。
たとえばトランプ氏は1月、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が自分の机には常に核兵器発射のボタンがあると述べたことに対し、自分の核兵器ボタンの方が「はるかに大きく、強力だ。僕のボタンはちゃんと動くし!」とツイートした。
ダレク教授は、「国家指導者の大統領が自由気ままにふるまうと、危ないことになる。大統領の言葉は政策として受け止められ、多くの混乱を生み出す」と懸念する。
ダレク教授によると、ベトナム戦争中のジョンソン大統領は自己弁護に必死のあまり、真夜中にも補佐官たちに電話していたという。
教授はさらに、ジミー・カーター元大統領の例を挙げる。
カーター氏は、非常に細かいことまで自分で管理したがる大統領で、非常に知的で勤勉だと定評があった。
しかしその裏腹で、政権の効果的な運営や、役割分担には苦労していた。大統領が勤勉に長時間働くからといって、結果を出したと、必ずしも評価されるわけではないのだ。