●直接雇用における非正規雇用司書の契約事情
2018年現在、自治体や大学法人の直接雇用として勤務する非正規の図書館司書は、1年契約を基本とし更新限度を3年~5年までに設定されてるケースがほとんどです。
一昔前は1年契約であっても、職務をこなし勤務態度に問題がなければ、更新を繰り返すことができ、10年以上勤務しているケースも珍しくありませんでした。規則が緩やかで更新の上限設定がない時代でした。当然、異動がある正規職員よりもエキスパートになり、職場の大黒柱的な存在になっていた人も多くいました。
ただ、近年は館種を問わず、契約更新の規制が厳しくなる傾向にあり、どんなに有能でも期限が来れば満了となるケースが当たり前になりました。そうした背景の中、2018年は一つの大きな転換点になるかもしれません。
●改正労働契約法による2018年問題
2013年4月1日に施行された改正労働契約法は、有期雇用契約を結び、同一勤務先で最低1回以上の契約更新を繰り返し、通算5年を経過して勤務した場合、雇用期間に期限のない無期雇用への転換を雇用主に申請できると定めています。この申請を雇用主側は拒否する事ができません。具体的には、次の様な規約条件があります。
○2013年4月1日以降に契約されている有期雇用契約期間を基準に、継続して通算5年を超えていること。2013年4月1日以前の期間は含まない。
○最低1回以上の契約更新をしていること。
○申請時点で同一雇用主と契約をしていること。
○契約職員、パート、アルバイトなどの名称を問わず、全ての有期雇用契約者が該当。
○雇用形態の変更に関しての義務はない(非正規→正規にするなど)。
○採用試験などを課すことはできない。
○クーリングオフ期間が特例であり、契約終了後から再雇用までの空白期間が6カ月以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ通算されない。⇒これを悪用し、更新ごとに6カ月以上の空白期間を設け、過去の分をリセットし再雇用することが自動車業界で行われている。今のところ、図書館業界では確認されていない。
例えば、2013年4月1日に有期雇用契約し、毎年継続更新した場合
1年目 2013年4月1日~2014年3月31日
2年目 2014年4月1日~2015年3月31日
3年目 2015年4月1日~2016年3月31日
4年目 2016年4月1日~2017年3月31日
5年目 2017年4月1日~2018年3月31日
※5年経過したので権利取得
▼この期間に無期雇用転換申請が可能
6年目 2018年4月1日~2019年3月31日
▼無期労働契約が開始
7年目以降 2019年4月1日~
また、注意して頂きたいのは、雇用形態の変更義務はないため、必ず正規雇用になれるわけではありません。あくまでも、有期から無期雇用への転換に関する法令です。雇用形態は、次の様なパターンが想定されます。
[パターン]
①非正規雇用⇒非正規雇用(現状維持)
②非正規雇用⇒非正規雇用(待遇アップ、役職昇進など)
③非正規雇用⇒正規雇用(一般職、職務限定職員など)
④非正規雇用⇒正規雇用(総合職)
図書館業界では、おそらく①が多いと予想し、④は極めて可能性が低いと思います。本来であれば、最低でも②にして頂きたいものです。
まもなく、2013年4月1日の施行から5年が経過し、最初の無期雇用転換の期限時期が迫ってきました。雇用主である企業、自治体、国立大学法人、学校法人などの人事は、その雇用形態を見直す対策と対応に迫られることから「2018年問題」と呼んでいます。実現すれば、労働者にとって雇用契約打ち切りによる失業の不安が解消され、最低限の生活の安定確保につながります。
●無期雇用を回避するため、事前雇い止めをする雇用主側の悪知恵
図書館業界においても、有期雇用者に対しての無期雇用転換を回避する動きが日常的にみられます。人件費の増大、予算や業務縮小を懸念することが背景にあります。現状、無期雇用への権利が生じる前に雇い止めにする事例が後を絶ちません。つまり、5年に満たない期間、もしくは、5年に到達した時点で強制的に契約を終了させるのです。
国立大学法人の非常勤(事務補佐員)などは、契約更新回数の限度が2回となる求人が圧倒的に多く、永続的な勤務は不可能になっています。自治体運営の公立図書館の非正規職員は、更新限度を設けている所と毎年更新のみの記載しか明記されていない所に分かれます。私立学校法人は、5年に到達するギリギリまで契約し、そこで切ってしまう傾向があります。委託業務を受託する民間企業は、1年契約が基本で、受注がある限り契約更新を継続していく傾向がありますが、無期雇用への転換は不透明なところがあります。
2018年以降、どういう対応をとっていくかは、今後の展開を注視していくしかありません。
●ズル賢さ満載の図書館司書求人「雇い止め」乱用事例
こうした、無期雇用化を推進する法律ができたのにもかかわらず、懲りずに半ば強制的に更新期間の上限を設定し、意地でも無期雇用にさせない、往生際の悪い組織がチラホラどころか多いのが現状です。
2017/2018の年末年始に、日本図書館協会HPの求人で確認してみましたが、それっぽい求人がありました。以下、特に職務内容が多岐に渡り、経験を要する内容の求人に絞ってピックアップしてみました。
※募集・掲載が終了しているものもありますが、掲載時の内容を簡潔に書きました。特に契約期間、給料、応募条件、職務内容に絞り、それ以外の内容は省略しています。
■首都大学東京 非常勤契約職員(司書)
○雇用期間: 平成30年2月1日から平成30年3月31日まで。雇用期間2か月。1回まで更新可(更新1回につき、雇用期間1年)有期労働契約であり、雇用更新を保障するものではありません。
○給与: 月給195,300円、賞与なし
○応募条件
①図書館司書資格を有する方
②大学図書館等での実務経験がある方が望ましい
③契約書作成や業者調整の事務処理ができる方
④パソコン操作に習熟している方
⑤NACSIS-CAT/ILL等による業務経験を有する方が望ましい
⑥語学力(英語による文章読解・簡単な日常会話)を有する方が望ましい
⑦本業務を遂行する熱意とコミュニケーションスキルを有する方
○業務内容: 開館・閉館、図書の貸出・返却、レファレンス、利用者管理、文献複写、相互貸借、蔵書点検、資料収集・整理、図書館システム管理、広報・企画、利用者講習、学外連絡調整(書誌・所蔵データ修正、Nll書誌調整、雑誌・新聞受入管理、製本委託管理、資料予約管理、職場体験・研修・見学受入、サービス統計)、その他図書館関連業務
■早稲田大学 図書館運営委託業務管理者(契約社員)
早稲田大学アカデミックソリューション受託
○雇用期間: 2018年4月1日~
※年1回の更新、最長5年間
○給与: 月給225,000円
○応募条件
①図書館での実務経験が3年以上あるか同等の知識があること
②図書館司書資格を有していること
③協調性があること
④長期勤務が可能なこと
○業務内容: 現場責任者業務全般、スタッフ採用・研修・指導・シフト調整、業務品質改善・管理、新規サービス企画立案、大学との連絡・調整業務、業務報告書作成業務
■武蔵野市立ひとまち情報創造館 武蔵野プレイス嘱託職員
○契約期間: 平成30年4月1日から平成31年3月31日まで(更新の可能性あり。最長5年間)
○給与: 月給226,300円
○応募条件
①司書資格を有する方(取得見込の方含)、または図書館勤務経験者
②要パソコン操作
○業務内容: 図書館業務全般及び付随業務
■青山学院中等部 パートタイム職員(図書室勤務)
○雇用期間: 1年(必要に応じ2回まで更新)
○給料: 時給1000円
○応募条件
①図書館司書・司書教諭資格を有する方(または2018年3月取得見込みの方)
②図書館司書として勤務経験のある方が望ましい
③パソコン操作ができる方(Word・Excelは必要最低限、システム管理面やプログラミングに詳しい方)、ICT機器操作に詳しい方が望ましい。
○業務内容
・図書及び視聴覚資料の購入、分類、整理、保管、除籍に関すること。
・図書及び視聴覚資料の閲覧貸出に関すること。
・利用生徒指導補佐業務に関すること。
・その他図書室の運営業務に関すること。
次の求人は、3年以上は更新しないどころか、専任職員への登用もしないと露骨に明記している強気な大学です。
■神奈川大学 横浜キャンパス図書館(契約職員)
○雇用期間: 2018年4月1日~2021年3月31日(3年間)
※契約期間後の更新はありません。専任職員への登用制度もありません。
○給料: 月額180,000円
○応募条件
①司書資格を有すること
②専門学校、短大卒以上の学歴を有すること
③民間企業、官公庁等での勤務経験が1年以上
④図書館での業務経験については必須で、大学図書館での実務経験があれば尚可
⑤各種統計に関する業務あるため、データベースや電子ジャーナルの知識があると尚可
⑥語学力(英語)があれば尚可
⑦Accessが利用できれば尚可
○業務内容
・資料の選書、発注、検収業務
・電子ジャーナル、データベースの契約補助業務
・ガイダンス等の情報リテラシー教育業務
・その他各業務内容の他、学校法人運営業務に係る業務(入学式、卒業式、入試業務)
図書館自体が閉館になるわけでもなく、該当職務が存続するにもかかわらず、権限を乱用し、法律の隙間や抜け道を掻い潜り、人の入れ替えを繰り返すことは、ご都合主義どころか傲慢そのものである。
正規雇用への昇進は困難であっても、無期雇用で勤務できる事は、非正規労働者にとってメリットは大きい。雇用側にとっても、深い専門性や経験値を持つ人材は、人出不足の時代にとって貴重な存在。雇用側はセコい事ばかりせず、人材を長く活用できるように努力してもらいたい。
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