料理家に聞いた、いつもの鍋がもっとおいしくなる「土鍋の育て方」
あまり自炊しないという人でも、鍋ものは作ることも多いはず。
だっておいしいし、野菜たくさん取れるし、お酒に合うし、そして何よりラク!
しかし、まだまだ私たちは鍋の可能性を100%引き出せていないのではないでしょうか?
ということで、料理家・風間章子さんに「土鍋の育て方」を伝授してもらいます。
実はこの写真の鍋、すべて風間さんのもの。
こんなに鍋を置く場所あるとはスゴいすね。
さすがお料理教室をやってらっしゃるだけある。
今回は、土鍋についてたっぷり教えてもらいましょう。
今回は1人用の土鍋を購入。
私、半澤は一人暮らし歴14年目なんですが、初めてこのサイズを買いました。
なんか1人用ってわびしさ&寂しさがハンパないな、とあえて敬遠してきたのです。
でも風間さんはこういっています。
いやいや、1人用の土鍋は本当に使えるから、1人暮らしなら絶対に持って置いた方がいいと思います! まず、鍋焼きうどんが食べられるじゃん。それに大きい鍋を1人で食べるほうが、なんかちょっと寂しくないですか?
……確かに。
1人で大きい土鍋使うと、大量に作らないといけないですしね。
とはいえ、人生に数回しか買わない土鍋なので、最初にやるべきことがあったことを失念。
なんか普通の鍋と違ったような。
そこから教えてもらいましょう。
新しい鍋を育てる
その1 使う前の準備
そうそう、土鍋はいきなり使うのってダメって知ってましたか?
土鍋を使う前に ……
米のとぎ汁を入れて、一度煮立てないといけないんです。
そうだ思い出した!
説明書にも書いてあったけれど、それってなんでですか?
陶器って小さいヒビがあって実は「漏れ」やすいんです。だから米のデンプン質でその隙間を埋めてあげる「目止め」が必要なんですね。
そういうことか、なんかおいしい鍋を作るための儀式だと思っていました……。
めちゃくちゃ大事な行程だったんですね。
ということで米のとぎ汁を沸騰させてから10分ほどしっかり煮立てました。
はい、これで準備完了!
半澤の新土鍋がついにデビュー!
じゃあ何をつくりましょうか?
せっかくなんでお米炊きましょうか。なぜなら米のとぎ汁を作るために、お米を研いじゃったからね。
と、風間さん。
おっ、「土鍋でご飯」はちょっと男として憧れていたやつでした!
さっそく炊いてみましょう!
その2 米を炊く
【材料】
- 水 1カップ(200cc)
- 米 1合
風間さんいわく、
土鍋で炊くときは水1カップとお米1合と覚えておくのがラク、ということ。確かに一回聞いたらもう忘れない! 水の量を調節すればお好みの炊き上がりも目指せます。
ということなので試してみてほしいです。
作り方
1. 米はといだあと給水させておく。
冬は1時間が理想だけど30分くらいでもオーケー。
2. 強火で沸騰させる。
小さい鍋なので大体5分くらい。
3. 弱火で15分加熱後、火を止めて10分蒸らす。
なんと、30分で完成。
「始めチョロチョロなかパッパ」ってやつより、はるかにわかりやすい!
そして炊飯器より圧倒的に早いんですね。
お米の粒が立っているのがわかるでしょうか。
食べてみると甘くて、「しっかりお米の味!」という感じ。
土鍋炊きはおいしいと聞いていましたが、これ、みんなやるべきだなあ。
遠赤外線効果で熱ムラがないから、一粒一粒がしっかりおいしく炊けますね。
底の方にはキレイなおコゲも!
最近、新しい炊飯器を買ったばかりだったのですが、なんか失敗した気持ちにすらなりました。
で、ご飯を一度に1合も食べないというあなたは、以下のやり方で保存することが賢いです。
ご飯の2つの保存術も教えてもらいました。
【ご飯】ちょっと後に食べるなら
硬く絞ったキッチンペーパーをフタの下に敷くだけでオーケー。
これで蒸発した水分がフタから落ちるのを防止、ベトつきを防げます。
【ご飯】当分食べないなら
あたたかいうちにラップでくるみ、粗熱がとれたら冷凍庫へ。
水分の蒸発を防げるので、解凍後もふっくら食べたいなら「あたたかいうち」が正解だそうです。
新しい鍋を育てる
さて米は炊いたけど、土鍋たるものやはりおいしい鍋料理が作れなくては。
ということで、さっそく何か作りたいのですがどうしましょう。
1人用だからやはり鍋焼きうどんですかね。
鍋焼きうどんもいいけど、鍋焼きカレーうどんもとっても簡単だよ。
え、絶対おいしいやつじゃないですか、それ。
さっそくやってみましょう。
その3 うどんを作る
【材料】1人前
- 冷凍うどん 1玉
- トルトカレー 1パック
- ホウレンソウ 適量
- ピザチーズ 適量
- 昆布 約2g
- 水 250cc
- 醤油 小さじ1/2
材料は超シンプルでいいですね。
それにチーズって、それ、絶対おいしいやつじゃないですか(2回目)。
とはいえ、「鍋を育てる」うえで最重要なのは、当たり前だけどチーズではなかった。
そう、これです。
昆布! 昆布の出汁です。
なんと、これが鍋を育てるには大切ということ。
既製品の鍋つゆもおいしいけれど、自分の鍋を育てるにはしっかり出汁をとって、うま味も風味も豊かな鍋を作り続けることが重要なのだそう。
某有名マンガでいっていたけど、スッポン専用の鍋にしていると、鍋に味や香りが付くんだって。自宅で鍋を育てたいなら、しっかり出汁をとってあげることが大事ですね!
なるほど、鍋に出汁の味を染み込ませるってことですね。
昆布1枚でできるならぜひ育てていきたい!
鍋に水を丼1杯分入れたら、もうそれに昆布を入れちゃう。これだけでちゃんと出汁がとれます。
沸騰させる前に取り出すってよくいうけど、1人用ならずっと入れっぱなしでもいいんじゃないですか、と風間さん。
そのくらいハードル低いと僕でもやる気になるなあ。
ではそろそろ、うどんいっちゃいますか!
作り方
1.沸騰したら香りづけの醤油(小さじ1/2)を入れ、冷凍うどんを投入。
うどんがほぐれるまで煮込む。
2.温めておいたレトルトカレーを全量投入。
3. 下ゆでしたホウレンソウとチーズを満遍なくのせて火を止める。
いやあ、こいつはおいしそう。
じゃあ、いただきましょうか、と箸を探していたそのときでした。
ここで風間さんは驚きの行動をとります。
なんと、トースターのスイッチを入れたのです!
え、なにを始める気ですか?
4.トースターの温度を220℃に設定し、鍋ごと10分ほど焼く。
マ、マジですか。そんなことしちゃっていいの? 土鍋、大丈夫なんですか?
土鍋は焼くときに1000℃以上の高温で焼いていますからね。耐熱性はまったく問題ありません。だからトースターはもちろん、オーブンにも使えます。
なるほど、それは知りませんでした。
確かに説明書にも「トースター、オーブンに使用可」と書いてありますね。
チーズに焼き目がついて香ばしさと、カレーの食欲を誘う香りが漂います。
もう、見るからにおいしそう。
これだけステキならちゃんとメニュー名をつけましょう。
うぬぅ、なんと名付けよう、焼きチーズカレー鍋焼きうどん。
鍋焼きカレーうどん焼きチーズトッピング……。
「鍋焼きチーズカレーうどん」でいいんじゃない。
そうですね、それが正解、日本語って難しいな。
チーズがトロッ!
いやあ、確かにチーズも最高なんだけど、何よりカレーがまろやか。
ここで効いているのがやっぱりアイツです。
そう、昆布がやっぱり効いていました。
醤油しか調味料を使ってないのに、こんなに完成度が高いスープができるとは驚きました。
鍋を育てる昆布は、当然ながら料理の味も格上げしてくれます。
本当に偉大です。
古い鍋も育てる
新しい鍋、これから育てていこうと思います!
が、僕には十数年連れ添った相棒がいまして。
それが、コレ!
大学に入った最初の冬に寂しさ(こいつ、寂しいとかばっかりいってるなあ)から購入した大きな土鍋。
これ普通に4人くらいで囲めるサイズで、スゴくお世話になってきたんですよ。
この子もちゃんと育てられないものですかね。
普通に鍋を作るのもいいけど、ほかの調理もできるから新しい料理に挑戦してみたら!
そうか、そうですよね。そろそろこいつも新しいステージに上げてやらないと。
ということで鍋だけど鍋じゃない料理にチャレンジします。
蒸し料理を作る
【材料】2人前
- 白菜 1/8個
- 鶏ムネ肉 200g
- トマト 1個
- ジャガイモ 1個
- ニンニク 1かけ
- オリーブオイル 大さじ2杯
おっ、流行の鶏ムネ肉! 野菜たっぷりで何やらヘルシーですね。
では作ってみましょう。
1. オリーブオイルで刻んだニンニクを炒める。
焦がさないように注意。
以降ずっと弱火でオーケー。
2. 鶏ムネ肉を表面が白くなるまで炒める。
3. 白菜、ジャガイモを入れ軽くかき混ぜる。
4. トマトを入れ、水を大さじ2杯入れてフタをし弱火で蒸す。
フタから蒸気が上がり、野菜が柔らかくなったらできあがり。
と、インスタ映えしまくる料理が完成。
鶏ムネといいインスタ映えといい、昨年の流行をすべて詰め込んだような料理ができました。
蒸し料理だからとってもヘルシー。それに色もキレイですね。
炒める、蒸すも土鍋におまかせ! といったところでしょうか。
題して「白菜と鶏胸肉のペペロン蒸し」。
蒸したからかムネ肉でもまったくパサつきません。
煮込む以外の場面でも土鍋は優秀ですよ! いろんな使い方をするのも「土鍋を育てる」ことになるんじゃないでしょうか。
いやあ、「土鍋の育て方」、とても勉強になりました。
何より、おなかいっぱいで、もう眠たくなってきたなあ、などと余裕かましていたら風間さんはこういいます。
でも大切なのはメンテナンス! ちゃんと扱わないと長く使えませんよ。
なるほど、育てるだけでなく、面倒もみないとですね、ということで最後に土鍋のメンテナンス法も教えてもらいます。
鍋の面倒をみる
その1 しっかり洗う
ものスゴく当たり前だけど、これがとても重要。放置しておくと鍋が傷む原因に。やわらかいスポンジで洗剤を使いしっかり清潔をキープしましょう。
その2 ちゃんと乾かす
洗ったらしっかり水気を取り乾かすのが大切! 水滴が付いたまま棚にしまうとカビの原因になります!
あとはこれもNGとのこと。
濡れたまま火にかけるのもダメです。ヒビ割れの原因になってしまいます。
使用中も使用後も、やさしくしてあげるのが正しい土鍋との付き合い方なのです。
冬にお世話になりまくる土鍋、ちゃんと育てて面倒をみれば、鍋料理がさらにおいしくなること間違いなしです。
僕はさっそく出汁用の昆布を買って帰りました!
※この記事は2018年1月の情報です。
お店情報
人形町キッチン
住所:東京都中央区日本橋人形町3丁目2-10
ウェブサイト:FORM☆AGGIO