いままで猫を飼った経験がなかったものだから、はじめの頃のすにちゃんとの生活は学ぶことが多かった。もちろんはじめはすにちゃんがなにを求めているのか、というのが一切わからない。背中を撫でてやったら逃げていくし、抱っこをするとガブリと噛まれる。
噂には聞いていたが猫というものは犬と違ってなかなか甘えてこないものである。一日の大半は寝ている。うちにやってきた日は興奮していたのかバタバタ走り回っていたのだが、その翌日はすっかり慣れてぐーぐー寝ていたものだから、
「昨日はあんなに元気だったのに!病気かしら!」
と不安になって右往左往したり。
一か月ほどで猫は気まぐれということを嫌というほど学んだ。いまはすにちゃんを何をしても仏の顔で見守っていられるようになった。
当時のすにちゃんはよくこたつで寝ていた。こたつといっても中ではなくて、こたつ布団の上である。当時、うちはこたつの手前にローソファーをおいていた。そのソファとの段差の部分になぜかすっぽりと埋まっているのである。
こたつの中は暑いのだろうか。そこがすにちゃんのお気に入りスポットになったようで、寝るとなかなか起きない。起きないものだからいろいろイタズラするのだけれど、それでもおきない。すにちゃんの耳を引っ張ったり、手を持ち上げたりするのだけど、まったく起きる気配がない。
猫というものは本当に寝るのが仕事なんだなと思う。
猫がたくさん寝るのはあまり熟睡しないからだと聞いたことがある。もともと肉食動物なので、獲物をとるため、もしくは敵から身を守るために睡眠が浅い。だからたくさん寝るとか。しかし、すにちゃんを見ているとそんな感じは一切しない。どんだけ撫でてもまったく起きない。熟睡してるだろ、君。
しかし、それでいいのだ。熟睡しなさい。君はこれからお腹が減ってご飯を探す必要はないし、ライオンやカラスから狙われることもないのだ。あるとしたら酔っ払った僕から酒臭い息を吐きかけられるくらいだろう。そのときは引っ掻いて逃げればいい。
あとはひたすら寝ていればいい。幸せそうに寝ているすにちゃんを見ることで幸せになる人間という生き物がいるということを僕は知っているのだから。