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女王蜂アヴちゃん×MIKIKO対談 「人」の力を信じる表現者たち

女王蜂アヴちゃん×MIKIKO対談 「人」の力を信じる表現者たち

女王蜂『Q』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:中村ナリコ 編集:山元翔一
2017/05/18
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「流行らそうと思って作ったものは売れねぇんだよ!」って思います。(MIKIKO)

―MIKIKOさんは、PerfumeやBABYMETALの振り付けや演出をされることで、常に「みんな」とも対峙してきたのではないかと思うんです。去年の「恋ダンス」(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』及び、その主題歌である星野源“恋”のPVで披露されたダンス)も、とても大きなムーヴメントになりましたよね。MIKIKOさんご自身は、あの状況をどのように見られていたんですか?

MIKIKO:もちろん、「『恋ダンス』の人」みたいに言われることは違和感があるんですけど、そこまでだったらまだいいんです。ただその後、「『恋ダンス』みたいなのをお願いします」っていう発注を恥ずかしげもなくしてくる人がいるんですよね。まさに日本のシーンを象徴しているなって思いました。

―なるほど。

MIKIKO:「恋ダンス」は流行らせようと思って作ったわけではないし、偉そうに聞えるかもしれないけど、「流行らそうと思って作ったものは売れねぇんだよ!」って思います。下心を持って作ったものではなく、発信する側が全員本気でぶつけ合ったものしか人の心に届かないと信じて、誠意を持って作るだけですね。

左から:アヴちゃん、MIKIKO

アヴちゃん:手加減は絶対にバレますよね。私、MIKIKO先生を見ていて思うのは、最強の委員長だということで。

―どういうことですか?

アヴちゃん:今の時代って、みんな、委員長よりも副委員長の方が好きなんですよ。責任を負って全員を率いるよりも、それなりに権限があって似たことができるポジションを美味しいと思う人が多い。ただ、副委員長は最強の委員長には絶対に勝てないと思うんですよね。

―MIKIKOさんは、まさにそういう方だと。

アヴちゃん:私は、MIKIKO先生を通して初めて、ダンスに解釈を持つことができるということを知ったんです。MIKIKO先生は、その道を作った人だと思う。Perfumeの世界観を踏襲しようとした人たちはいっぱいいたはずですけど、MIKIKO先生には、レッテルを燃やすぐらいの熱さが毎回あるなって思います。

MIKIKO:レッテルを貼られがちだから、一生懸命燃やしているんです(笑)。

MIKIKO

誤解を恐れずに言うと、わかってもらおうと思ってやったことはないかも。(MIKIKO)

―踊りや振り付けというのは、人を自由にする反面、誰もが同じ動きをすることで、人を規制する力も持っている、二面性のあるものでもありますよね。

MIKIKO:うん、そうですね。型を知らなければ踊れないダンスもあるし、何も知らないからこそ踊れるダンスもある。私はどちらでもいいと思います。もちろん、「インプロで踊れてなんぼだ」っていう発想から、振り付けを馬鹿にしている人もいるだろうし。でも結局、私の振り付けって、私のフリースタイルを5人が真似したら「振り付け」になったっていうだけなんです。1人が踊ったらフリースタイルだけど、それをお揃いで踊るから振り付けになっているだけで。

アヴちゃん:素敵……じんとしました。今って至るところで「手段の目的化」が溢れているじゃないですか? ここまで目的を目的のままで、どんどんとすごいものを呼び起こしている先生は、本当にすごいと思います。それは自分たちも目指すところだったし、突っ張ってきたところなんです。

アヴちゃん

―MIKIKOさんにとって振り付けを作ることが目的じゃないように、アヴちゃんにとっても音楽を作ることが目的ではないと。

アヴちゃん:「あくまで目的があってやっている。手段はいとわない」っていう。でも、だからこそ孤独になったり、活動休止してしまったときもあったんです。先生は、そこまで強くご自身の道を進まれていくなかで、「誰もわかってくれへんのかな?」って、孤独を感じていた時期はありませんでしたか?

MIKIKO:誤解を恐れずに言うと、わかってもらおうと思ってやったことはないかも。もちろん、踊りが認めてもらえることや、踊ってくれる相手が楽しいと思ってくれることは大前提だけど、自分の目的を誰かに強要する気もないし、今でも「対自分」で作っているから。

アヴちゃん:……素敵です。

自分のことを無駄にしている人に腹が立つんですよね。「持て余している場合じゃないよ」って、一人ひとりに言いたい。(MIKIKO)

MIKIKO:アヴちゃんがすごいのは、若くして、こんなにも明快に自分の思考を話せるところだと思う。私は、28歳まで自分の思考と器が一致しない感覚があったんです。当時の私はダンサーと教えることを両立していて、みんな慕ってくれてはいたけど、自分のなかではピンときていなくて。

28歳のときに「演出家と振付師になりたい」って思ったんですけど、その「なりたい」を見つけられたことが、すごく大事だったんですよね。自分の全エネルギーを使えるものを知ったし、そこから生まれる馬鹿力を、身をもって知ったから。

MIKIKO

アヴちゃん:私もバンドを始めたとき、自分が今まで生きてきたことや、自分が内包していた熱を形にできるかもしれない……そんな「やってやった感」や「手に入れた感」があって。それが、先生が28歳のとき感じた合致に近い、私にとっての体験だったのかもしれないです。

MIKIKO:だからこそ、自分のことを無駄にしている人に腹が立つんですよね。どんな人でもすごいから。「持て余している場合じゃないよ」って、一人ひとりに言いたいし、私の振り付けを踊った人には、「私はこの角度で可愛く見えるのかも」っていう喜びを知ってほしい。やっぱり、自分の嫌なところやコンプレックスだって、チャームポイントに変えていけるものなんですよね。それは、世の中に訴えたいですね。

アヴちゃん:そうですよね。バンドマンには、「解き放つ」という言葉を歌詞でしか使えない人がすごく多いんですよ。でも、日常生活のなかで誰しもが解き放たれる瞬間ってあると思うし、その瞬間があったからこそ、「解き放つ」という言葉があるわけですよね。MIKIKO先生の作る世界には、その「解き放つ」感覚が、すごくフラットに存在していて。今、こうやってお喋りしていても、佇まいや、指先の動き一つひとつに、その感覚が宿っているのを感じます。

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リリース情報

女王蜂『Q』初回生産限定盤
女王蜂
『Q』初回生産限定盤(CD+DVD)

2017年4月5日(水)発売
価格:3,800円(税込)
AICL-3289/90

[CD]
1. アウトロダクション
2. 金星 Feat.DAOKO
3. DANCE DANCE DANCE
4. しゅらしゅしゅしゅ
5. 超・スリラ
6. 失楽園
7. Q
8. つづら折り
9. 雛市
[DVD]
1. 金星(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
2. ヴィーナス(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
3. スリラ(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
4. 折り鶴(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
5. 告げ口(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
6. 鬼百合(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
7. 始発(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
8. 緊急事態(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
9. 金星(Music Video)
10. DANCE DANCE DANCE(Music Video Full ver.)
11. 失楽園(Music Video Full ver.)
12. Q(Music Video Full ver.)
13. アウトロダクション(Music Video Full ver.)

女王蜂『Q』通常盤
女王蜂
『Q』通常盤(CD)

2017年4月5日(水)発売
価格:2,800円(税込)
AICL-3291

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イベント情報

『女王蜂 全国ワンマンツアー2017「A」』

2017年5月25日(木)
会場:京都府 磔磔

2017年5月27日(土)
会場:香川県 高松 DIME

2017年6月2日(金)
会場:宮城県 仙台 darwin

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『女王蜂単独公演 全国ツアー2017「A」番外編』

2017年7月29日(土)
会場:大阪府 OSAKA MUSE

2017年8月8日(火)
会場:東京都 鶯谷 キネマ倶楽部

2017年9月2日(土)
会場:北海道 札幌 ペニーレーン24

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プロフィール

女王蜂
女王蜂(じょおうばち)

2009年、アヴちゃん、やしちゃん、ルリちゃんの3人で結成。2010年7月、『FUJI ROCK FESTIVAL』の「ROOKIE A GO-GO」枠に選出され出演を果たし、2011年にメジャーデビュー。同年公開された久保ミツロウ原作の映画『モテキ』のテーマソングおよび出演バンドへの抜擢。独創的かつ衝撃的なパフォーマンス、そのニュース性が音楽業界のみならず各方面で常に話題に。2017年4月、通算5枚目となるアルバム『Q』をリリースした。

MIKIKO(みきこ)

演出振付家。ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰。Perfume、BABYMETALの振付・ライブ演出をはじめ、様々なMV・CM・舞台などの振付を行う。メディアアートのシーンでも国内外で評価が高く、新しいテクノロジーをエンターテインメントに昇華させる技術を持つ演出家として、ジャンルを超えた様々なクリエーターとのコラボレーションを行っている。

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