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スキルの種 ~俺のチートは神をも軽く凌駕する~ 作者:黄昏時

勇者召喚編

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第1話 異世界の国トゥーエル

 俺達は今、神父のような黒色の服装の人達に円状に囲まれている。
 それに今居るところもどこかわからない。おそらくはどこかの部屋だと思うが。
 一般的な部屋と言うより、宮殿の一室といった感じのほうがしっくりくる。
 天井には羽の生えたおそらく天使と思われる人と、黒い肌に、こちらも羽の生えたおそらく悪魔と思われるものが戦っている絵が描かれていた。
 足元では青白く光る幾何学模様が、徐々に光を失っていた。

 そう、これだ。入学式が始まるまでの間、教室で自己紹介をする予定で、けれどいざ自己紹介をしようとしたら、教室の床がいきなり光りだした。あまりに光が強かったので目を瞑っていたら一瞬の浮遊感の後に、歓声が聞こえたので目を開けてみたら今の状況だ。
 その時の教室の床の光と、今足元でうっすら光っている光は同じ物に思えるのだ。
 そして光の元と思われる幾何学模様。多分魔法陣・・・ではないかと考えている。

 周りにはクラスメイトと思われる男女。担任の男性教員も居る事から、あの時教室に居た人全員がここに居ると考えていいだろう。でも自己紹介もしてないし、ほとんど今日会った人ばかりだから予想でしかないが。

だがこれらのことから考えられる可能性はーーーー

「ようこそおいでくださいました。勇者様方・・・・

 やはりか。
 今周りの神父のような服を着た人達の中で一人だけ白色の服装で、錫杖を持った男性が皆に聞こえるように言ってきた。
 おそらくこの中では一番偉い人なのだろう。

「待ってください、どういうことですか!? それにここはどこですか?」
「俺達、教室に居たはずだよな? な、そうだよな?」
「え……あ、うん」

 担任が疑問を投げかけたのを合図にするかのように、クラスメイトの男女が騒がしくなり始めた。
 これじゃあ説明して貰うにしても、騒がしすぎて聞こえないと思うんだよな。落ち着きが足りないんじゃないかな? 
 そう思っていると、シャラーンと頭に直接響くような音が聞こえた。

「落ち着いていただけましたかな?」
「あ、はい」

 錫杖を持っている男性の問いかけに、担任が代表して答えた。
 おそらく今の音は錫杖の音だったのだろう。しかし錫杖の音だけであれだけ騒がしかったのを鎮められるとは思えない。何らかの別の要因があると考えた方がいいな。

「皆様の疑問に関してお答えしますが、場所を変えましょう」
「……わかりました」

 どうやら受け答えは担任がやってくれるようだ。少し考えていたみたいだけど、行く以外に選択肢はないだろうな。

「では行きましょうか」

 錫杖を持った男性はそう言うと、後ろの両開きのドアを開けて歩き出した。俺達も担任を先頭にしてついていく形でその部屋から出た。

 部屋を出て数分。言われるがままついて来たが……

「ようこそ勇者諸君。儂はこのトゥーエル王国の国王、ビルデル・ド・トゥーエルである」

 ですよね。俺達の居るところより高い位置にある椅子に座ってるから、もしかしたらそうかなとは思ってたんだ。見た目も、白髪で白い長い髭で、王冠被ってるし赤いマントまでつけてる。ザ・国王って感じなんだよな。

 ちなみにさっきまで、案内してくれていた錫杖の人は俺らから見て国王の右後ろに居る。
 国王の左後ろには、腰に剣をつけたかなりガタイのいい男性が立っている。

「どういう訳か説明していただけるんですよね?」
「もちろんですとも」

 担任はここまできてまだわからないのだろうか?
 クラスメイトの大半は大体わかってきているだろ。中には喜んでいるやつすらいる。おそらく俺の同類だろう。

「質問は、全て話し終わってからお願いできますかな?」
「わかりました」

 担任の言葉の後に俺達も頷く。

 そこから国王は話し始めたのだが……長い。
 どうして、偉い人の話は長いのだろうか? 
 ま~、今のところを簡単にまとめると――――

・俺達は勇者として異世界に召喚された
・この国の他に3つ国があり、そこでも勇者召喚がおこなわれた
・勇者は全員強大な力を持っていること
・この世界には魔物と呼ばれる生き物が居る
・さらに魔王と呼ばれる強力な人型の魔物に国民が苦しめられている
・そして俺達にその魔王達・・・を倒して欲しい
魔王達・・・を倒せば神が元の世界に帰る方法を教えてくれる

 うん、勇者が他にも召喚されている以外は想像通りだ。さっき喜んでたやつらはガッツポーズしてやがる。ここまで想像通りだと、おそらく帰る方法はないだろうな。
 元の世界でこんな感じのライトノベルが大好きだったからめちゃくちゃ読んでたけど、ほとんど元の世界に帰れないんだよね。しかも神様とか出てきたら、大抵敵なんだよな。
 それにステータス・・・・・とか念じたら……目の……前に……

 でたよ! でちゃったよ! 半透明のウィンドウ! やばいよ、ここまで我慢して冷静でいたけど、もう無理! よっしゃああああああああ! 
 思い切りガッツポーズをしてた。
 興奮が抑えられない。
 多分今の俺の表情は笑顔だろう。
 もしかして、さっきガッツポーズしてたやつらもステータス・・・・・を見てたのだろうか? ステータスのウィンドウが他のやつに見えないとすれば。国王の話に飽きて、俺みたいに勇者召喚で異世界といえば見たいなノリでたどりついた……ありえる。

 俺も飽きたけど、話はしっかり聞いてるぜ。俺はホームルーム中友達と話しながらも、先生の話も聞くことができる特技があるからな。
 国王は、生活に関してはこの国に居るあいだは保障する旨と訓練をすることを伝えて話は終わりらしい。質問はないかと聞いてきている。

 俺も一回落ち着いた方がいいだろう。他のやつから見たら、急に笑顔になって全力でガッツポーズしてるんだから。
 ……客観的に見るとヤバイな。救いは一番後ろに居たことだろう。誰にも見られてないと思いたい。声だしてないし。
 とりあえずステータスウィンドウを消して、後でじっくり見よう。

 質問ね~~。かなり重要なのがあるんだけど、直接は聞きにくいんだよな内容的に。どうしたものか?

「はい!」
「何かな?」
「僕達を奴隷にして、従わせるってことはないですよね?」

 ……何考えてるんだあいつ? て、ガッツポーズしてたやつの一人じゃないか!
 確かに俺もそれは気になっていた、てかそれだよ直接聞きにくい内容。初対面の相手に「奴隷にしないですよね?」とか聞きにくすぎだろ。あいつは大物なのか? それともただのバカなのか? 
 多分後者だろうな。自分のステータスを見て興奮して、何も考えずに言ったんだろう。
 よかった冷静になって。もしかしたら俺がああなってたかもしれないしな。

「大丈夫だ、それは絶対にない」
「なぜですか?」
「実はな、勇者を奴隷にすると能力が半分以下になってしまうのだ。魔王達・・・を倒してもらいたいのにそんなこと出来ないよ」

 なるほどな。そういう形で救済処置されているのか。でも事実とは限らないから警戒しておいて損はないだろう。奴隷にされて一生この国にこき使われるとか嫌だからな。せっかくの異世界なんだから大いに楽しませてもらう。

「すみません。先ほどから気になっていたのですが魔王達・・・というのは、魔王の軍勢という意味ですか? それとも魔王が複数居るという意味ですか?」
「後者だ。魔王は少なくとも4人以上居る」
「わかりました」

 ナイス担任。さっきまで落ち込んでたのに急にやる気になったな。元の世界に帰るには今は、選択の余地がないことを理解したのかな? まあ、何でもいいんだけど。
 それよりも魔王は複数居るのか。倒しても倒しても新しい魔王が出てきて終らないなんてこともありえるな。

「質問は以上で終わりかな? 終わりなら気持ちの整理などもあるだろうから今日はゆっくりして欲しい。一人一部屋と専属のメイドも用意してある。明日からは訓練になるが、頑張ってくれ」

 至れり尽くせりだな。まあでも、無理やり言うことを聞かせられないから、恩を売っているってだけのことかもしれないけど。

「後ででいいので、この子達と話ができる部屋を貸していただけますか?」
「理由を聞いてもいいかな?」
「はい、実はこの子達はほとんどが今日会ったばかりなので自己紹介と今後についての話し合いなどもしたいのです」
「よかろう、食堂で話ができるようしておこう。準備ができたら呼びにいかせよう。」
「助かります」

 そういや自己紹介もしてないな。
 それに担任の口ぶりからして全員の意思統一をしたいみたいだな。めんどくさいけど行かないともっとめんどくさそうだからな……

「もうよろしいかな?」
「はい」
「では……メイド長!」
「お呼びでしょうか?」
「勇者達を部屋に案内してくれ」
「かしこまりました。皆様、メイド長をさせていただいております、グレースと申します。お部屋までご案内いたしますのでついてきていただけますか?」
「わかりました」

 俺達の後ろから来たメイド長のグレースさんは、見た目40代ぐらいで黒の丈の長いワンピースに白いエプロンというまさにメイド服姿で現れた。

 メイド服姿の人なんって、テレビぐらいでしか見たことない。しかも本物のメイドさんだ! コスプレではなく、本物! しかも、国王の話によると一人に一人、専属のメイドさんが付くそうだ! すでに楽しみだ。どんな子かな? かわいい子だといいな。
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