宇野 あと、日本の音楽業界に関してすごくダサいと思うことがあって。
たとえばライゾマティクスの真鍋大度さんにしても、MIKIKOさんにしても、素晴らしい仕事をしている人だと思いますよ。でも、一度そういう裏方的なクリエイターが脚光を浴びると、本当にみんながそこに群がっていく。
勝手に「佐野研二郎問題」って言ってるんだけど。そのせいで、イノベイター的存在だったPerfumeがやってることすら、最近はちょっとお腹いっぱいになってきているという。
柴 ビルの屋上で踊りつつ渋谷の街に仮想空間を重ね合わせたPerfumeの紅白のパフォーマンスは世界的にもかなり革新的だとは思いますけどね。
とはいえ、真鍋さんら2010年代の前半に世に出てきたクリエイターの次の世代がなかなか生まれてないような気がします。
宇野 海外を見てると、音楽業界は全てのカルチャーで一番進んでる。そこから新しいデザイナーや映像監督やカメラマンがどんどんフックアップされている。
これはアーティスト自身の問題というより、スタッフの問題なのかもしれないけれど、今旬のクリエイターにあやかろうとする態度って、カルチャーを送り出している人間としてのプライドがないのかなって思う。
逆に言うと、海外はスターの裏側にいるスタッフに、メチャクチャ感度の高くて優秀な人がたくさんいるという話でもあるけれど。
柴 こないだ東京オリンピックの開会式と閉会式のプランニングチームも発表されましたね。椎名林檎さん、MIKIKOさん、山崎貴監督ら8人が選ばれた。
宇野 必然的に、そこで一つのピリオドが打たれるよね。
柴 というより、実はもうピリオドは打たれているんだと思います。
これは去年から言ってることなんですけど、2020年の東京オリンピックはクリエイティブとしては未来を目指すものではないと思うんです。
むしろ2010年代の総決算になるわけで、そこに関わった人は、2021年以降にはいわば過去の人になってしまう。
宇野 「過去の人」というとさすがに語弊があるんじゃない? ただ、「権威側の人」と見られるのは間違いないし、既に椎名林檎はそういう視線にさらされている。でも、そのリスクを承知で引き受けているわけだから、偉いと思いますよ。
柴 そうですね。でも、2018年に新しいことを始めようとする人にとっては、今、目の前のことではなくて、オリンピック後のことを考えたほうがいいと思ってます。
宇野 そういえば、「新しい地図」のロゴデザインは佐野研二郎なんだよね。東京五輪から真っ先に排除された彼が「新しい地図」をやってるというのは、なかなか皮肉が効いてる。
今年公開される映画の企画も含めて、「新しい地図」の動きには、必ずしも全面的にワクワクしてるわけじゃないんだけど。そのあたりはSMAP時代と同じように、ちょっと広告代理店臭が強すぎるというか(笑)。
柴 ともあれ、2018年は時代の変わり目になるように思いますね。2019年4月には平成が終わることも予定しているわけで、実質的には2018年が平成の最後の1年になる。おそらく平成の30年を総括するような動きも増えていくはずで。
宇野 そうか。東京五輪のときは平成じゃないんだよね。
柴 それもあって、2018年は何かが始まるというより終わっていくことが象徴的な年になるという気がします。
宇野 SMAPの解散に続いて、今年9月には安室奈美恵が引退する。のんの活動も本格化してきたし、所属事務所とモメていると報道されているローラが、それでも相変わらずCM女王に君臨していたり、何かが変わりはじめているということにはみんな気づいているんじゃないかな。
柴 たしかに変わらざるを得ない状況になってきてますね。