ネット中傷後絶たず 人権侵害1900件

社会
2018/1/12 23:17
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 インターネット上の事実無根の書き込みが発端で、いわれのない中傷電話やメールなどに苦しめられる被害が後を絶たない。法務省によると、ネット上の人権侵害は4年連続で過去最多を更新した。

 「容疑者の勤務先です」。北九州市の石橋建設工業の石橋秀文社長(47)は、「ある日」を境にネット上の書き込みを常に確認するようになった。

 神奈川県大井町の東名高速道路で2017年6月、ワゴン車の夫婦が死亡した追突事故。神奈川県警が容疑者を逮捕した直後から、ツイッターやネット掲示板には石橋社長を「容疑者の父」などとする誤った情報が書き込まれた。会社の電話番号や自宅住所も拡散された。

 会社には「罪を償え」といった中傷や脅迫めいた電話が相次ぎ、ピーク時は1日100件以上も。福岡県警は、ネットに情報を流した数人の関係先を名誉毀損容疑で家宅捜索。石橋社長は「事実無根で取引先の信頼も失った。同様の被害が出ないように捜査してほしい」と訴える。

 17年12月には米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)近くの「緑ケ丘保育園」の屋根に米軍ヘリコプターの部品が落下した事故が発生。「自作自演疑惑が浮上」など根拠のない情報が一部サイトで拡散した。以降、園には中傷の電話が殺到。「子供を預けられない」などと書かれたメールも送られた。神谷武宏園長(55)は「なぜこんな被害に遭わなければいけないのか」と途方に暮れる。

 被害は全国各地に及ぶ。法務省によると、誹謗(ひぼう)中傷やプライバシー侵害などのネット上の人権侵害は16年に1909件に上り、4年連続で過去最多を更新した。背景にはスマートフォンの普及に伴い、誰もが気軽に投稿できるようになったことがある。

 サイト開設者が閲覧数を稼いで、広告収入を得るための書き込みにより被害を受けたケースもある。ある俳優は「違法薬物で逮捕」などと虚偽の中傷記事をまとめたサイトが掲載され、俳優の仕事に影響が出るなどしたという。警視庁は17年7月、偽計業務妨害容疑で男女3人を書類送検しており、調べに対し「興味を引いて閲覧数を伸ばし、広告収入を増やしたかった」などと供述した。

 法務省は被害者に、サイト管理者に削除依頼する方法を教えたり、直接管理者に削除要請するなどの対応を進めている。自身もネット上の中傷を受けた経験を持つ唐沢貴洋弁護士は「ネット上で中傷する人には罪の意識がない人が目立つ。ネットリテラシーを高める教育を充実させることが必要」と指摘する。

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