みずき~「草の根通信」の志を継いで~(資料庫)

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 ですが、ここ数年、確かに「目立つから」という特性を使って女性記者に戦争報道をさせる傾向があるようです。ローガン記者はその代表例と言えなくもありません。勿論、彼女の場合もイラク戦争ではブッシュ路線に不利な報道をし過ぎるとして「偏向報道」という非難を浴びた「武勇伝」もあり、モデル出身だからといって容姿だけを売り物にしているわけではありません。ですが、ローセンのように「斜め」に見ればその政治的ポジションも「出世のためのウケ狙い」というイメージにもなるわけで、とにかく何らかの知的な関心と正義への情熱はあるにしても「女性の目立つ特性を使って活躍しよう」という「勢い」そのものが不自然なものに見えるのだと思います。

 では、TV局サイドとしてはどうして「女性戦争記者」を使うのかというと、何といっても視聴率のためだと思います。アマンポーラなどの場合はともかく、現在ではホンネとして、女性記者の方が「受ける」という心理が漠然と社会的に存在するからです。これもかなり複雑で、女性視聴者にしてみれば「責任重大で困難な仕事を女性が担っている姿」への好感ということがあり、男性視聴者も基本的に同じですが一部の男性心理にしてみると、「戦場や混乱状態」から女性がレポートすることの「健気さ」を好むとか、「勝気な行動をしている女性が時折見せるパーソナルな表情が好きだ」などの心理があるわけです。そんな複雑なものではなく、無粋な男より女性のほうがスマートで格好良いという印象を男女ともに持っているとも言えるでしょう。

 確かにローガン記者はそうした「ニーズ」をうまく使ってキャリアを積んできたという印象はあります。南アメリカ人として英国にわたり、最初はモデルをしていたのが戦争報道で有名になり、離婚や再婚を報じられる中で芸能人扱いされる一方で、アメリカのCBSに職を得てからは、かなり積極的な取材姿勢が評価されて「ファンサイト」なども出来ているのです。

 単にアメリカの視聴者受けというだけでなく、政治的な背景もあるように思います。ローガン記者を「突撃の急先鋒」として、エジプト革命のプロセスではアメリカから多くの女性記者が現地入りしていますが、そのほとんどはエジプトということもあって、ベールを使わずに、金髪や長い髪を振り乱してデモ隊の中に飛び込んでいます。各局共にどうしてそうした演出になっているかというと、恐らく「この革命は市民の自由化を求める革命であって、イスラムの復権を目指すものではない」という性格付けをアメリカ世論へのメッセージとして送りたい、そのひとつの象徴として多くの女性記者をデモ隊の渦中に送り込んだということは言えると思います。

 つまり「派手な白人の女性記者がデモの群衆の中に入っても、宗教的にそして文化的に排除されない」ということが「これは宗教革命ではなく市民革命だ」ということを正にテレビ的に視覚で表現できるというわけです。この辺りが、冒頭の二つの疑問のうちの一つ目に関わってくるのですが、こうした報道姿勢はアメリカ側としては終始一貫していたように思います。

 先々週のこの欄でもお伝えしたように、アメリカの報道姿勢は「大変だ。エジプトまでが反米の原理主義になるかもしれない」というリアクションを排除して冷静さを確保するということで一貫しています。例えば、ムバラク前大統領が「辞任しない」と頑張っていたときには、サラ・ペイリンが「エジプト情勢に関してオバマがいちいち記者会見すると、みんなでその見解に従うのは異常」だと吠え立てて、「原理主義拡大の動きに警戒を」と呼びかけていたのですが、これに対しては保守本流の大物政治家であるリンゼイ・グラハム上院議員(共和)が「呆れた発言だ」と大統領を擁護するなど、政界も超党派で冷静さを保っていたぐらいです。

 ちなみに、下手をすると反米センチメントの拡大もありそうな、イエメン、ヨルダンのデモに関してはアメリカの報道は抑制気味、一方でリビアのデモは長年の仇敵カダフィ政権の動揺への期待から扱いが大きくなっています。イランの民主化デモに関しては、アメリカの世論も政界もデモ隊側を応援していますが、彼等を支援するがゆえに報道を自制しているような感じもあります。

 いずれにしても、今回のエジプト革命が「アメリカ人として応援できる」そして「アメリカにとって有害ではない」市民革命の一種だということを強調する報道姿勢は明らかにあると思います。また「何とか自分たちの理解の範囲にある」エジプトの例にアメリカ世論の関心を引きつけておこうという気配もあり、それは、アメリカの超党派の本流のホンネであると同時に、とにかくアメリカの保守派による過剰反応がかえって現地での反米心理の拡大になってはいけないという相互性を意識してのことということもあるように思います。

 ララ・ローガン記者が一度目の危険遭遇にも関わらず、自ら強く志願して現場に復帰した、そして革命の瞬間に立会いつつ事件に巻き込まれたというストーリーの背景には、そうしたアメリカの「文脈」があったと言って構わないでしょう。またローガン記者の被害というプライベートなニュースが、一旦何者かが事件を暴露した後に大手メディアでも報じられたのは「暴力被害にあった女性の権利は守り切る」という文化が背景にはあるのだと思います。

 この二つの文脈は正にアメリカの「フェニミズム」の現状を反映しているように思います。私はそこに個人的には普遍性も感じるのですが、同時に深刻な問題点も感じる者です。というのは、このようなフェニミズムは「過剰」であり、同時に「独善」だという問題です。過剰というのは、例えば女性兵士の大量派兵という問題です。女性が男性同等ならば、兵士として戦闘に参加するのも当然というのは、しかも大規模で行われているというのはやはり過剰さがあります。そのことと「イスラム圏のデモ隊の真ん中に女性記者を送りたがる」というのは同根という面もあるからです。更に独善性が暴走すると、イラクのアブグレイブでの捕虜虐待に際して「ムスリムの敵兵の自尊心を破壊するために、女性兵士によって拷問を行う」というようなダークな行動にもなってしまいます。

 そこまで行かなくても、女性の権利拡大を押し付ける姿勢が余りに独善的なために、かえって反発を招いてしまい、相手国での女性の人権が拡大しないという問題もあるように思います。アメリカ流のフェニミズムを絶対的に押し付ける態度は、相手から見れば自分への蔑視を含む尊大な姿勢に映るわけで、そうした心理が起きてしまうと、逆効果になるわけです。日本もその一つのケースと見なすことができるかもしれません。

 一方で、エジプトの場合は、非常に微妙な問題が入っています。というのは完全に世俗国家化しているトルコ、マレーシア、インドネシアなどを例外とするならば、エジプト社会における女性の人権はイスラム圏では先進的なのです。その一方で、ムスリム同胞団に代表される宗教保守派は、女性の人権拡大や西側文化の流入に反対して
いるという緊張関係があります。例えば、2001年頃に、アメリカの『フレンズ』というTVコメディがエジプトで流行し、大問題になったのだという話をエジプトのTVプロデューサーの講演で聞いたことがあります。『フレンズ』というのは、男3人、女3人の6人組が恋愛関係になったりパートナーが変わったりしながら「グループ交際」を続ける他愛ない話ですが、エジプトの保守派には十分に刺激的で賛否両論で大変だったのだそうです。

 もしかしたら、ローガン記者はそうした「自由を欲するエジプト女性への連帯」の気持ちを秘めてデモ隊に飛び込んだのかもしれませんし、またそうしたエジプトのフェミニストたちが彼女を暴力事件の現場から救出したのかもしれません。それはともかく、今度は激しいデモはバーレーンに飛び火し、流血の惨事に発展しているという報道もあります。オバマとして、アメリカとして、中東という地域に対して、更に本質的な思考を迫る事態が来る可能性も否定できなくなりました。

補記:ノルウェーの内閣で閣僚の男女比が逆転

フェミニズム問題に関しては、ノルウェーでは閣僚の3分の2が女性、という次のようなニュースもあります。当然のことがニュースになる現実は悲しいことですが、東欧・ノルウェーは私たちの国の「現実」を遥かに超えた社会になっているようです。

ノルウェー政府が「イクメン」支援、男性閣僚2人が育休(ロイター 2011年2月17日)
[オスロ 16日 ロイター] ノルウェーの内閣では現在、男性閣僚2人が育児休暇を取っている。ストールベルゲ法務・警察相が今年の1月から3月末まで、リースバッケン児童・男女共同参画・社会統合相は昨年11月末から3月21日まで育児休暇中だ。

 ノルウェーでは男性の育児休暇が奨励されており、最低でも10週間は有給で休みが取れる。

 1989年に自身も育休を取ったストルテンベルグ首相は「職場や政府で、男性が女性より不可欠な存在ということはない」と語る。現在育休中の2人の閣僚の代わりは女性が務めており、閣僚の3分の2が女性となっている。

 ノルウェーでは出産後、両親は自動的に2週間の休暇が与えられ、その後、2人合わせて有給で46週間の休暇か、8割の給料で56週間の休暇かを選択することができる。年内には最長57週間まで認められることになり、男性のみでは12週間まで延長されることになる。

ノルウェー男性閣僚2人が育休 代理を女性が務め男女逆転(共同通信 2011年2月17日)
【ロンドン共同】ノルウェーの内閣で男性閣僚2人がほぼ同時期に育児休業を取得、代理を女性が務めていることもあり、閣僚の約6割が女性という状況になっている。ロイター通信が16日伝えた。

 育休を取っているのはクヌート・ストールベルゲ法務・警察相とアウドゥン・リースバッケン児童・男女共同参画・社会統合相。期間は法相が今年1月1日から3月31日までの3カ月、児童相が昨年11月末から3月20日までの約4カ月。

 ノルウェーは男女平等の考えが強く、育児支援の手厚さで知られる。閣僚はもともと半分が女性だった。育休は両親が取得できる期間のうち、父親専用に最低10週間が割り当てられるが、政府は年内にこの期間を12週間に延長するなど、制度を拡充する方針。

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