「わろてんか」一週間 第15週「泣いたらあかん」[字] 2018.01.14
(てん)また東京ですか?ホンマ行ったり来たりせわしないわ。
(藤吉)浅草の師匠らにようやっと会うてもらえる事になってな。
はあ…。
(隼也)なあなあ東京は大阪より進んでるさかいなお父ちゃんなめられたらアカンで。
これ隼也。
ホンマ最近生意気になってきよったな。
よう聞こえてるで。
はよ帰ってくるさかいそれまでにあの口縫い付けといてや。
へえ。
・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」
(風太)イチ。
(イチ)はい。
これや。
・
(アサリ)もう辛抱できん!大番頭さん!もうあんな相方やってられんわ!またか!またなん?
(万丈目)今度の相方オモロイやっちゃ思うで。
お前の辛抱が足らんのちゃうか?キースさんがいてくれはったらなぁ。
もうあんな奴とっくに忘れたわ!アメリカ行って2年もたつのに手紙一つよこさん薄情もんや!ホンマはキースさんと組みたいんとちゃいますの?つまらん奴らとばっかり組まされて怒っとるだけや。
(戸が閉まる音)リリコさん笑顔でお願いします。
(リリコ)交通安全運動に区画整理事業。
あっちこっちいっぱい寄付して勲章でも欲しいんか。
(栞)チャリティーだ。
何やそれ。
会社は順調で利益も出てる。
だったらその利益を社会に還元するのは当然の務めだ。
何の後ろ盾もなく会社を経営していくためには世間に認められなければならない。
ちゃんと寄付するだけ偉いわ。
立派なチャリティーさんや。
ありがとう。
(藤吉)東京でも寄席を始めよ思てまして。
大阪の席亭さんが今更おいでになってもなかなか芸人が集まらんでしょうな。
そこをなんとか。
弱りましたなぁ。
おはようございます!あの師…。
キース!?
(キース)と…藤吉!?浅草の小料理屋に住み込ましてもうてんねん。
何で知らせてくれへんかったんや。
こっちで一旗揚げてから知らせよう思てたんや。
そや。
あいつどないしてる?アサリか?この2年で相方4人かわったわ。
はあ!?俺はキースとアサリが組んだら日本一いや世界一の芸人になれると思てるけどな。
ひゃ地震?地震やわ。
(亀井)えらいこっちゃ!関東で大地震や!東京は壊滅らしいで!え?藤吉はまだ東京か?分からん。
おいみんな!藤吉はん!ゆうべ名古屋に泊まってさっきこっち着いて…。
よかった…。
それより大変や!東京にキースがおるんや。
え?
(藤吉)いつになったらつながるんや。
連絡がつかへんのやったらこっちから捜しに行く事はできまへんやろか。
俺が行く!俺やったら家族もいてへんし何かあっても大丈夫やろ。
分かった。
行くなら何か持ってってあげられへんやろか。
家燃えてしもてみんな困ってはるやろし。
毛布100枚くらい用意しましょ。
布団屋回ってかき集めよ!
(岩さん)よっしゃ。
ほなわしら日もちする食べ物集めまっさ。
今日からしばらくこの小屋は休みにする。
(一同)へえ!東京支社の方は連絡がつきません。
もし連絡がついたら…。
はあ。
向島辺りがどうなっているか聞いておいてほしいんだ。
向島ですか?ああ。
持ってき。
ん?無事に帰ってきぃひんと一生許さへん!お母ちゃん。
乾パンもうてきたで。
何か思い出したか?
(志乃)あんたは私の息子のキーちゃんだろ。
そや。
それだけ覚えとったら大丈夫や。
おなかすいてんだろ。
ほらたんとお食べ。
はいフフフフ。
東京にいち早く救護物資を送ったそうじゃないか。
僕も役所を通じて送ろうとしたんだが手続きに手間がかかって。
君らに託した方が早いんじゃないかとここに来た。
栞君東京いてたやろ。
知り合いもぎょうさんおるやろ。
心配やな。
ああ。
それ取りに倒れかけた家戻ったんやでお母ちゃん。
へその緒か。
ホンマの息子は外国行ってえらい成功してるて自慢してたからきっと大丈夫や。
すんまへんここら辺で偉そうな大阪弁しゃべる奴知りまへんか?風太?キースおいお前キースか!東京で右も左も分からんかった俺を拾てかわいがってくれたんや。
地震が起きた時にな家に大事なもんがあるて取りに戻って倒れてきた柱で頭打ったみたいで…。
志乃さんと大阪に戻れ。
大阪に帰る気ぃはない。
意地張ってる場合ちゃう!食いもんも医者も薬も足らんこんなとこにあのお母ちゃん置いとくいうんか?
その数日後
(万丈目)キースが帰ってきたで!ホンマか!?お帰りやす!よう!何にも変わらへんねんな。
東京ではあれだけ人が亡くなって何もかんも壊れてしもたのに。
えらい事でしたね…。
どうぞこちらへ。
こんにちは。
ああ。
あなた…。
おやまあいい男だねぇ。
キーちゃんの知り合いかい?新聞にも載ってる有名人や。
ああそりゃすごい方だねぇ。
この子の事どうぞご贔屓に。
よ!もしもやで…お前がわいと組みたい言うんやったら組んだってもええんやで。
地震の事考えたら笑う事でけへん。
まして人を笑わせるやなんて。
こんにちは。
伊能さん。
キース君彼に聞けば東京の事が分かるんじゃないかと…。
まだ長屋に籠もってるようで。
志乃さんは早速ここを手伝うてくれたはりますけど。
皆さんお昼ごはんを作ってきたから。
食べて食べて。
すいません。
おおきにありがとうございます。
あんたも食べてくかい。
あんた言葉からして東京の人だろ。
大阪の薄味に飽きてんじゃないかい。
味見しとくれ。
アチッ。
大丈夫ですか?大した事ない。
申し訳ありません。
いやいや大丈夫。
あんた…青っちろい顔してるねぇ。
きちんとごはん食べてんのかい?栞君何や気がかりな事があるんやないか?志乃さんって人何かあるんか?藤吉はんもうよろしいんとちゃいますか?あの人は…。
僕の母親なんだ。
元は向島の芸者で父の妾として僕を産んだ。
中学までは一緒に暮らしていたんだが。
お会いできてよろしおしたやないですか。
あの人は僕をお金で売った。
本家の兄は体が弱くて兄に何かあった時の保険として僕は伊能家に引き取られた。
その時あの人は父から多額の手切れ金をふんだくったらしい。
それ以来何の音沙汰もなかった。
こんな事がまさかあるのかと目を疑ったよ。
・はいもしもし。
・堂島新報の山口いいます。
地震への多額の義援金と救護物資あれは「売名行為や」「災害まで利用してる」いう声がありますけど。
くだらない質問に答える気はない。
・あ〜もう一つだけ!社長は東京のご出身ですが実のお母さんはご無事でしたか?
(藤吉)こんなんありえへんやろ。
何なん?これ!地震の前から栞君のある事ない事いろいろ探ってたんやろ。
そやけど売名のために地震の被災者支援してたやなんて…。
嘘もええとこひどすぎます!これであの人の暮らしが立ち行くようにしてほしい。
栞君が自分でやってあげたらええんちゃうか?記憶が戻らないうちはいいがもし戻ってしまったら僕自身どうなるか分からない。
頼む。
ホンマの親子やろ。
・社長よろしいですか?ああどうぞ。
北村笑店の方が…。
お邪魔するよ。
聞いたら昼はろくに食べないっていうじゃないか。
そんなんじゃ力が出ないだろ。
今日は精のつくものたくさん作ってきたからさ。
お食べお食べ。
ほら。
卵焼きが気に入ったかい?おふくろの味だからね。
そんなに慌てて食べなくたっていいんだよもう。
伊能さんあちこちに寄付してはりますけどそれは土地開発に絡んだ賄賂ですか?地震への救護物資も競争相手を出し抜くためですか。
売名行為ですね?この人はねあんたらみたいなげすな人間じゃないんだよ!とっとと帰りな!誰やねん。
伊能社長のお母さんですか?何言ってんだい!この人は関係ない。
やめないか!
(志乃)ああっ!おい!おい…!ここは…!?長屋や。
覚えてへんのか?覚えてる。
あ〜よかった。
お医者さんの話ではしばらく安静にしてて下さいいう事です。
俺の事分かるか?キーちゃんだろ?よかった。
忘れる訳ないだろ息子の事は。
お邪魔するよ。
志乃さん!?ご挨拶に来ました。
東京へ帰らせてもらうんでね。
へ?何してんねや!まだ寝とらなアカンのに。
帰るったら帰るんだよ!お母ちゃん!やめとくれ!何が「お母ちゃん」だ。
思い出さはったんですか?みな思い出さはったんですか?今すぐ志乃さんに会いに行ったげとくれやす。
たった一人のお母さんでっせ。
たった一人だから厄介だ。
あの人と二度と会うつもりはない。
「お前がいると邪魔なんだ」。
離れる時にそう言われた。
それはきっと何かご事情があって…。
どんな事情があるにせよそんなもの認めたくないんだ!すまない。
大きな声を出して。
自分の心も分からないような人間がこうして活動写真を作ってる。
(亀井)東京の地震からこっちお客の入りはええ事おまへん。
お客さんの顔も沈んできた気ぃするな。
・ああはいはい。
はいもしもし。
えっ!?風太から電話です。
師匠らみんな焼け出されてしもて東京中あちこち捜しに行ってたんや。
そら大変やったな。
・いやみんな明るいわ。
わろてたら腹減ってんのもつらい事も忘れられる。
「笑いが一番のごちそうや」ってな。
(藤吉)食べるもんも仕事もろくにないやろに大したもんや。
東京の芸人さんらうちの高座に上がってもろたらどうですやろ?やっぱり笑いは人を癒やす薬です。
売り上げを義援金にすればお客さんも遠慮のう笑えます。
(亀井)それよろしいな。
そっちの師匠ら大阪に招いたらどうや?早速話してみるわ。
・ああ。
これ地震の時お母ちゃんが崩れそうな家ん中飛び込んで取ってきたもんや。
実は栞君から聞いてな。
けど親子やと認めてない言うてな。
何でや。
せっかく会えたのに。
お二人の仲取り持つ事てできひんのやろか。
せめて笑顔でいっぺん名乗り合うだけでも…。
ほならキースが笑わしたらええ。
え?こっち戻ってからずっと笑いもせんし高座にも上がらんかったやろ。
お前が2人を笑わしたってくれ。
志乃さんが崩れ落ちる家に飛び込んで命がけで取ってきた伊能さんのへその緒です。
このままでホンマによろしいんですか?意地張ってるうちに会えんようになってしまうかもしれまへんのやで。
言いたい事あるんやったらそれがたとえ恨みつらみでも今言うとかなあきまへん。
じきお別れのお食事でもしよう思てます。
必ず来とくれやす。
二度とあの子には会わないよ。
あの子が伊能家の立派な一員になるためには私みたいな芸者が母親じゃダメだって。
二度とあの子には会うなってそう言われたんだ。
だからたんまり手切れ金もらってあの子を捨てたんだ。
後生ですからこのまま東京へ行かせて下さい!離しとくれよ。
何だいこれ!東京で新しい暮らしを始められるよう盛大に送り出したるわ。
え〜今日は俺のお母ちゃんを見送る食事会に集まってもろておおきに。
お母ちゃんいうてもホンマもんの親子やない。
(ドアが開く音)よう来てくれはりました。
これを返しに来た。
いらないよ。
捨てたもんだ。
ちょっちょっちょっちょっ…。
ちっちゃい頃から身寄りもない母親の顔も知らんと育った俺は志乃さんにえらい世話んなった。
そん時になよう聞かされた自慢話がある。
生き別れになった息子の話や。
頭がようて気が優しゅうて男前やて。
せっかくお母ちゃんできたて思ったんやけどな〜。
ホンマもんの息子にはかなわへんわ。
これへその緒やろ?うちにもあるで。
何ちゅう字や?「しおり」って読むんえ。
どういう意味や?おばちゃん。
道しるべっていう意味さ。
己の人生道に迷わずたくさんの人を導いていってほしい。
そういう願いを込めて付けた名前だよ。
ふ〜ん。
ええ名前やな栞君。
子どもの頃よく一緒に活動写真を見に行った。
あなたはいつも楽しそうだった。
だから僕は人の心を豊かにするような活動写真を作りたいと思った。
今の僕があるのはそのおかげです。
ありがとうございます。
それだけ伝えたかった。
4回たたいて四ツ橋や!
(笑い声)
(アサリ)ちょっとわしにも貸せ!ホンマに東京帰らはるんですか?今朝の新聞読まはりました?栞君大阪の経済発展に貢献しただけやのうて地震の救援に尽力したいう事で感謝状をもろたそうです。
「これからも人の道標となれるよう一歩一歩歩んでいきたいと思います」。
こんにちは。
忙しいだろ?わざわざ来なくったって…。
これを。
これだけあれば東京で小料理屋をやれます。
いらないよこんなもん。
もらう筋合いないから。
ならもらわないでいい。
僕から借りて下さい。
ただ返済するには20年かかります。
それだけ長生きしろいうこっちゃ。
借りときぃや。
ありがとう。
栞の事よろしくお願い致します。
お元気で。
栞もね。
おい。
風太…。
風太や!風太が帰ってきたで!お帰り!おうおうおうおう!お帰り風太!よう戻ってきた。
ほい!これのおかげや。
おおきにな。
被災した芸人たちが出演する復興支援の興行は連日大盛況。
北村笑店の東京進出も一気に進んでいきました
2018/01/14(日) 11:00〜11:20
NHK総合1・神戸
「わろてんか」一週間 第15週「泣いたらあかん」[字]
関東で大地震が起き、東京の寄席に出演中のキース(大野拓朗)を心配した藤吉(松坂桃李)は、風太(濱田岳)に芸人たちへの救援物資を託して東京に向かわせた。
詳細情報
番組内容
関東で大地震が起き、東京の寄席に出演中のキース(大野拓朗)を心配した藤吉(松坂桃李)は、風太(濱田岳)に芸人たちへの救援物資を託して東京に向かわせた。浅草の焼け跡で発見されたキースは、“東京のお母ちゃん”と呼ぶ記憶喪失の女性・志乃(銀粉蝶)を連れ大阪に戻って来る。てん(葵わかな)は志乃と会った時の伊能(高橋一生)の反応が気になり、そのことを伊能にたずねる。すると伊能の口から意外な話が飛び出す。
出演者
【出演】葵わかな,松坂桃李,濱田岳,広瀬アリス,徳永えり,大野拓朗,前野朋哉,枝元萌,藤井隆,内場勝則,銀粉蝶,高橋一生
原作・脚本
【作】吉田智子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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