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2018年01月11日
アマゾンのジェフ・ベゾスCEOの個人資産(金融資産だけ)が、1月10日現在で1051億ドル(11兆8000億円)と人類史上最大になったようです。同時点で個人資産が933億ドル(10兆4000億円)のビル・ゲイツを上回っています。
昨年(2017年)10~11月にもジェフ・ベゾスの個人資産が「瞬間的に」ビル・ゲイツを上回ったことがありましたが、今回は「かなり」引き離しており、このままトップを確保していくことになりそうです。
ジェフ・ベゾスの個人資産の大半は7890万株(発行済み株数の16.3%)を保有するアマゾン株式で、その株価は2017年に56%、2018年に入っても7%上昇しているからです。
公表されているアマゾンの最新の決算は2017年7~9月期ですが、純利益は2億5600万ドル(前年同期比1.6%増)と、マイクロソフトの66億ドル(同16%増)と比べると「かなり」見劣りがします。
直近のアマゾンの時価総額は6030億ドル(67兆円)で、実績ベースのPERは250倍、PBRは30倍もあります。
これに対して時価総額が最大のアップル(時価総額が8860億ドル=99兆円)は、PERが18倍、PBRが6倍、ビル・ゲイツのマイクロソフト(時価総額が6800億ドル=76兆円)は、PERが32倍、PBRが9倍となっています。
ところでアマゾンはヘッジファンド(DEショー)を退職したジェフ・ベゾスが1994年に設立し、1997年にIPOしています。設立当時は書籍のみをネット販売していましたが、ベゾスは当初から顧客データを整備して「何でも」販売することを考えていたはずです。
そして設立当時から積極的な設備投資を行い、その生産性向上で生まれる付加価値もどんどん顧客に還元し(サービス向上と値下げに振り向け)、ベゾス自身も含む株主に対して配当支払いも自社株買いも全く行っていません。
またベゾス自身もアマゾンから受けとる年俸は8万ドル(900万円)で、ストックオプションも巨額ボーナスも受け取っていません。ちなみにフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバークの年俸は1ドルだそうです。
つまりベゾスはアマゾンからほとんど何も受け取らず、アマゾンも付加価値のほとんどをサービス向上や値下げで顧客に還元して利益を積み上げようとはしていません。つまり株式市場も目先の利益や株主還元などに拘らないアマゾン株式を、「これからも販売対象とシェアの拡大は間違いなく、その気になればいつでも巨額収益をあげることができる」と評価していることになります。
そしてこの時点で(巨額収益をあげるまえに)ジェフ・ベゾスCEOは人類史上最大の個人資産となったわけです。IPO時点からしばらくのアマゾンは巨額赤字が続きましたが、ジェフ・ベゾスは全く気にせずに巨額の設備投資を行っていました。
そしてアマゾンは連結売上が15兆円(2016年)となった現在も、そのままIPOしたばかりの日本の新興企業並みの「高株価」を維持していることになります。もしジェフ・ベゾスがアマゾン設立あるいはIPO時点から想定した通りに人類史上最大の個人資産となったなら、悪魔級の天才ということになります。
いずれにしてもアマゾンは、アクティビストや機関投資家の攻撃に押されて目先の収益を積み上げ、積極的な配当支払いや自社株買いを行い、社外取締役まで受け入れて株価を上昇させようとしている大半の上場企業とは「対極」をなすことになります。
現時点では、その「対極」にいる企業はアマゾンしか思いつきませんが(かなり以前のマイクロソフトが少し似ているような気がしますが)、その「対極企業」としてのアマゾンの株価の適正水準は誰にもわからないはずです。
例えればトヨタ自動車が、キャッシュフローをすべて新規設備投資と値下げに回して利益水準を10分の1以下とし、配当支払いも自社株買いもすべて止めると宣言したら株価が上昇するはずがありません。
ということはアマゾンの株価水準は、よく考えると「とんでもなく高い」となるかもしれません。比較できる「対極企業」がないからです。
ウォーレン・バフェットが何十年もコツコツと有望企業を傘下に入れ、5000億ドル(56兆円)の時価総額となったバークシャー・ハサウェイはPBRが1.4倍しかありません。つまり3500億ドルもの企業価値(時価総額の5000億ドルをPBRの1.4で除したもの)を積み上げたバフェットに比べて、少し安直であると感じてしまいます。
ジェフ・ベゾスが人類史上最大の個人資産(金融資産だけ)となったことを受けて、アマゾンの株価も冷静な目で見られるようになるかもしれません。
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コメント
大変勉強になりました。
配当しないで企業価値で勝負するってライブドアみたいだ
>配当しないで企業価値で勝負するってライブドアみたいだ
配当しても、その分、企業の解散価値が減るだけですよ。バクシャー・ハザウェイも、グーグルも配当はありません。では、バクシャー・ハザウェイも、グーグルはライブドアなのですか?
配当しても、その分、企業の解散価値が減るだけですよ。バクシャー・ハザウェイも、グーグルも配当はありません。では、バクシャー・ハザウェイも、グーグルはライブドアなのですか?
アメリカ型の刻苦勉励企業家の描写は、大変参考になった。巨匠ペゾスに学ぶところは多いですね。
>>バクシャー・ハザウェイも、グーグルはライブドアなのですか?
褒め言葉で言ったが、それをネガティブに受け取られたようです。
褒め言葉で言ったが、それをネガティブに受け取られたようです。
冷静冷静って、ビットコインや暗号通貨は本質的に無価値だって一年前くらいに喧伝していて。
それからの価格上昇を考えたら、とんでもない機会損失になってはいませんかね?
そろそろ、暗号通貨関連の見解は間違いでしたって発表すべきではありませんかね?
それからの価格上昇を考えたら、とんでもない機会損失になってはいませんかね?
そろそろ、暗号通貨関連の見解は間違いでしたって発表すべきではありませんかね?
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