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【政治】

18歳選挙権で浮かぶ19歳問題 昨年衆院選 投票率14ポイント低く

衆院選を前に、模擬選挙で一票を投じる生徒たち=昨年9月、埼玉県皆野町の皆野高校で

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 十八歳選挙権の下で実施された二〇一六年参院選と昨年の衆院選で、十八歳に対する十九歳の投票率の低さが際立っている実態が、総務省の調査で浮かんだ。原因として、十八歳までに主権者教育を受けても十九歳になると意識が薄れることや、親元に住民票を残したまま、都市部の大学に進学した人が投票しなかった可能性が指摘される。直近の衆院選はさらに差が広がっており「十九歳問題」への対応が政治の課題になりそうだ。

 一般的に、高校三年生は在学中に誕生日を迎えると十八歳になるが、十九歳の人は高校を卒業している。

 総務省によると、昨年十月の衆院選の投票率は十八歳が47・87%、十九歳33・25%で、差は14ポイント以上あった。選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられて初の国政選挙だった一六年七月の参院選では、十八歳51・28%、十九歳42・30%で9ポイント程度だったが、衆院選ではさらに5ポイント以上広がった。

 公益財団法人「明るい選挙推進協会」が一五年、十五~二十四歳の男女三千人に実施した調査では、親と一緒に住んでいないと答えた大学・大学院生のうち63・3%が「住民票を移していない」と回答した。

 総務省が参院選後の一六年十月、十八~二十歳の男女三千人を対象に行ったインターネット調査では、投票に行かなかったと答えた千四百二十六人のうち、最も多かった理由は「住んでいる市区町村で投票することができなかったから」の21・7%。内訳は十八歳15・6%に対し、十九歳27・5%で10ポイント以上高かった。

 衆院選で投票しなかったという栃木県出身の大学一年二井れなさん(19)=東京都世田谷区=は「関心はあって候補者の演説も聞いていたけど、住民票を移していなかったので投票できなかった」と話す。

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 投票日に住民票がある市区町村にいなくても、事前に投票用紙などを請求する不在者投票で投票できる。だが、参院選と衆院選では、手続きが煩雑だと感じて二の足を踏んだり、制度自体を知らない若者が多かった可能性が高い。

 不在者投票制度の周知や、より投票しやすくすることが今後の課題となりそうだ。

 若者と政治の距離を縮める活動を展開するNPO法人ユースクリエイト(東京)の原田謙介代表は「住民票がない場所でも、簡単に投票できるよう法律を変える検討を始めるべきだ」と指摘。「十八歳の多くは高校などで主権者教育を受けているが、卒業して親元を離れると、政治への興味が薄れる場合がある。その違いが十八歳と十九歳の投票率の差に表れた可能性がある」と分析した。 (坂田奈央)

<不在者投票> 有権者が仕事や旅行、転居などで選挙期間中に住民票がある市区町村以外の場所に滞在している場合、希望先の自治体の一部投票所で投票できる制度。投票前日までに住民票を置く市区町村の選挙管理委員会に投票用紙を請求し、どこで投票したいか伝える必要がある。

 

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