2018年も家計をめぐる税制や社会保障などの制度改正は少なくない。配偶者控除の見直しで会社員のパート妻らが働きやすくなるが、高所得層は増税。保険財政が厳しい医療と介護は一部の高齢者の自己負担がさらに重くなる。家計への影響が大きい制度改正のポイントをまとめた。
会社員の妻がパートで働く場合、17年までは「年収103万円の壁」があり、これを超えると夫の配偶者控除が減らされた。18年からは妻の年収が150万円までなら夫には上限いっぱい38万円の配偶者控除が認められる。
■高所得層は大幅負担増
ただし、夫の年収が1220万円超だと18年からは控除がゼロになってしまう。このほか、妻の年収や勤務先の規模などによっては夫の被扶養者でなくなるので、手取り収入はむしろ減る場合がある。
雇用保険では、資格取得などを目指す人に支給される「教育訓練給付金」が手厚くなった。看護師、社会福祉士といった資格取得のために専門学校などで学ぶ人に受講費用の50%を支給する。18年以降に受講を始める人が対象で、支給率は昨年までに比べて10%上がった。資格を取得するとさらに20%上乗せされる。
同給付金は出産や子育てを経て再就職したい人にも門戸を大きく広げた。離職してから最長4年だった対象者を同20年まで拡大。大学が開講する「職業実践力育成プログラム」などを受講するきっかけになりそうだ。
医療と介護では8月から一部の保険給付が削減になる。まず医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」で、70歳以上で年収が約370万円以上ある「現役並み」の人が3つのグループに分かれ、年収の上位2グループの上限が引き上げられる。
現役並みの人は現在、月の自己負担が8万100円を一定程度超えると同制度の対象になる。これを年収約770万~1160万円のグループは月16万7400円、年収約1160万円以上のグループは月25万2600円に改める。外来診療のみの自己負担の上限の特例は現役並みの人については廃止になる。
■保険財政は改善せず
介護保険は一部の高所得者の自己負担が2割から3割に上がる。年金収入のみの単身者は年収344万円以上が対象だ。介護保険サービス利用者の3%に影響が出そうだ。
医療と介護の1年間の自己負担を合算して負担上限を決めている「高額介護合算療養費制度」も、70歳以上の高所得者への給付が削減される。これまで自己負担の上限は年67万円だったが、年収770万~1160万円は141万円、同1160万円以上は212万円に上がる。
給付削減をしても保険財政は厳しい。日本総合研究所の飛田英子主任研究員は「制度の抜本改革がない限り、現役世代の保険料負担がさらに重くなるのは確実」とみる。
投資税制では、低コストの投資信託などに毎月積み立て投資する「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が始まった。非課税の投資枠を年間40万円と一般NISAの3分の1に抑える一方、非課税期間は4倍の20年とする。
一般の住宅に旅行者を有料で宿泊させる「民泊」サービスは6月施行の住宅宿泊事業法で法律的な枠組みが整う。年間営業日数は180日が上限。自治体が条例でさらに規制する動きも出ているが、観光ニーズの大きい地域では、自宅の一部や相続した空き家などを民泊に転用する人が出てきそうだ。
(表悟志)
[日本経済新聞朝刊2018年1月6日付]
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