日本登山会が大規模なアンケートを実施
全国の登山愛好家たちで作る「日本登山会」はこのほど、会員およびその岳友を対象に「好きな行動食」に関するアンケートを実施した。
その結果、人気第1位の行動食に「ポテトチップス」が輝いた。
本調査で「ポテトチップス」が首位に立つのは始めて。
次点は羊羹。
今回のアンケートは日本登山会のワーキンググループである「日本行動食研究会」が実施したもの。登山中の行動食は今まで、羊羹(今回2位)、クッキー(同3位)、柿ピー(同4位)、ドライフルーツ(同5位)、梅干し(同6位)、ナッツ(同7位)、チョコレート(同8位)、ゼリー飲料(同9位)、おにぎり(同10位)などが人気だった。
今回、初めてポテトチップスが首位に立った背景には昨今の登山ブームなどが影響しているという。
なぜポテトチップスが人気なのか?
山岳ライターの山田氏は、ポテチ人気の要因の一つに、若年登山者の増加を挙げる。
「若い世代の人たちは、独自のカルチャーを持っています。普通山の上でポテチなど食べませんが、彼らは常識にとらわれないことを簡単にやってのけます」
若者が取り入れた行動食にポテチという選択肢が、ここ2、3年、登山界で静かなブームになっていたという。
若者や、その周辺の先鋭的なハイカーたちがポテトチップを支持した理由は何か。アウトドアライターの山川氏は、「高カロリー」「食べやすさ」「安価」の3点を挙げた。
「ポテチは一袋あたり平均300カロリーで、これは羊羹やゼリーに比べて格段に高いです。登山においては歩行時に多くのエネルギーが消費されるので、シャリバテを起こさないためにも、休憩時や歩行時に頻繁にエネルギーを摂取する必要があります。ポテチは歩行しながら食べられるのもポイントの一つ。価格も100円ぐらいと廉価でコンビニやドラッグストアなどどこでも買えるのも、票を集める要因となったのではないでしょうか」(山川氏)
また、「ポテチ大躍進」の背景には、人気登山家の影響もあるという。
NHKで放送された「グレートトラバース」で一躍登山界の人気者になった田中陽気氏が、番組内で歩行しながらポテトチップスを頬張っていた映像が同番組内でたびたび流されたのも、ポテトチップス人気に火をつけた要因の一つと前述の山田氏は指摘する。
「これをみて多くの登山者が、ポテチの有用性に気が付いたのではないでしょうか。また同時に、一線級のアスリートのお墨付きを得たともいえますね」(山田氏)
田中氏は雑誌などのインタビューでも、ポテトチップスは腹持ちがよくいつも山に持って行っているとコメントしている。
ポテチは良いことだらけなのか?
ポテトチップスのメリットはたくさんあるが、デメリットはないのか。
「ポテトチップスは他の行動食に比べてかさばりますね。とくに標高が上がると気圧の変化で袋がパンパンになります」(山川氏)
確かにポテトチップスは、羊羹やゼリー、ジップロックに入れたチョコレートやナッツ類に比べて10倍以上の体積になる。重さについてはとくに気にならないレベルだが、とにかく軽量・低容量が好まれる昨今においては、ポテトチップスのかさばりは大きなデメリットと思われる。
しかし、これに対して、今回のアンケートに答えた先鋭的なハイカーたちはこぞって、異を唱える。
ある二十代のハイカーは、「長期の山行ならまだしも、日帰りや一泊程度の山行で、かさばりを気にする必要はないのではないでしょうか。とくに日帰りで、たとえば30リットルぐらいのザックで行くならば、雨具やクッカー、バーナーなどを入れても、ザックの中身はスカスカのはずです。業務用のポテトチップス二袋ぐらい入れても問題ないレベルですよ」と指摘。
保守派のベテランハイカー勢たちの多くは、ポテトチップスが最強であるという説に対して強い拒否反応を示している。しかし、いつの時代も新しい文化は若者が発信してきたというのも事実。今回のアンケートが示すようにポテトチップスは総合的に見て最強であるといえる。ベテラン勢たちも、一度山行にポテトチップスを持参したら、意外にもハマるかもしれない。まあ、じいさんばあさんは意固地なので、決して山にポテトチップスを持っていくことはないだろうが。
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