先日ツイートしたように、 どうやら最近バイオセクターに資金が流入してきているようで、その中でも「がん治療」関連銘柄に集中しているように思います。
がん治療薬系バイオ企業15社(※下記参照)をピックアップして、2016年1月からの2年間ほどの時価総額の推移を見てみました。
※増資等で発行株式数が変わったものは考慮できていないので、その点はご了承ください
2016年2月12日を底に、そこから4月21日までの約2ヶ月間で関連時価総額は約2.5倍にまで増加。その後1年半ほどの横ばいが続き、 2017年11月中旬から動意づいてきています。きっかけはおそらくジーンテクノサイエンス(4584)でしょうか。
その後を追って、12月中旬からはラクオリア(4579)が上がり、2018年1月に入ると全体的に資金が流入するようになってきました。
今後も、まだまだ資金流入が見込まれると思うので(前回のように底から2.5倍とすると、まだここからでも1.5〜2倍はいける?)、この波に乗れるよう、主な関連企業についてまとめてみました。
[目次]
- 4579 ラクオリア創薬
- 4584 ジーンテクノサイエンス
- 4594 ブライトパス・バイオ
- 4571 ナノキャリア
- 4572 カルナバイオサイエンス*
- 4575 キャンバス*
- 4586 メドレックス
- 4564 オンコセラピーサイエンス
- 4582 シンバイオ製薬
- 4583 カイオム・バイオサイエンス
- 4588 オンコリスバイオファーマ
- 4597 ソレイジア・ファーマ
- 2191 テラ
- 2370 メディネット
- 2397 DNAチップ研究所
なお、がん治療についても押さえておきたい方は、下記ブログもご覧ください。これまでは分子標的薬が主流だったけど、これからは免疫チェックポイント阻害剤、そしてCAR-T細胞療法を踏まえた開発が重要になってきます。そういった潮流にあるバイオベンチャーを押さえておくことも重要。
それでは各社、見ていきましょう。
4579 ラクオリア創薬
ファイザーの日本法人の中央研究所が前身の創薬ベンチャー。新規の開発化合物の導出による収益獲得が事業戦略の基本で、創薬は探索研究から臨床第2相試験までカバー。疼痛管理領域および消化器疾患領域が中核。子会社テムリックでがん領域に参入。
強みとして挙げられるのは2つ。第1の強みは「イオンチャネル創薬の技術」であり、このイオンチャネル創薬は難易度が高く参入障壁が高い一方、薬効や製品の市場性の面での期待が大きい、新しい世代の創薬技術。第2の強みは「創薬のためのインフラ充実」。具体的には約38万件の化合物ライブラリーやスクリーニング・ロボット、解析のノウハウなどが挙げられる。
- パイプラインまとめ:製品情報 | ラクオリア創薬株式会社
※パイプラインの詳細は下記ブログでもまとめているのでご参照ください
4584 ジーンテクノサイエンス
北海道大学遺伝子病制御研究所発。バイオ後続品を柱とする創薬ベンチャー。バイオ後続品事業で収益を上げ、その収益を新薬開発に回すという堅実な経営戦略に特徴。リスク分散、開発迅速化へ製薬企業と共同研究やライセンスアウト目指す。
抗ガン剤による白血球減少症治療薬G-CSF(GBS-001/フィルグラスチム)は富士製薬と共同開発、2012年11月に富士製薬と持田製薬が国内での製造販売承認を取得し、2013年5月31日に上市。海外での販売も展開していきたい考えで、現在、提携先企業を模索中。
また、フィルグラスチムよりも持続性に優れ、患者負担の軽減につながるペグフィルグラスチム(GBS-010)のバイオシミラーも開発中。非臨床試験は終わっており、現在は商用生産に向けた生産技術確立の段階にへ。国内の上市時期は2023年ごろが目標となり、現在、提携先企業を模索中。
- パイプラインまとめ:開発情報 - 株式会社ジーンテクノサイエンス
さらに、2016年5月、ノーリツ鋼機傘下入り。傘下の再生医療会社や新子会社で再生医療製品開発にも意欲。
4594 ブライトパス・バイオ
久留米大学発の創薬ベンチャー、テーラーメードの「がんペプチドワクチン」、T細胞療法などを開発。
主要開発品目の「ITK-1」は前立腺がん対象、2011年に富士フイルムへ導出。国内臨床3相後期は2018年3月終了予定。
「GRN-1201」はメラノーマの米国臨床1相、非小細胞肺がんの免疫チェックポイント抗体併用で米国臨床2相実施中。
- パイプラインまとめ:開発パイプライン一覧|ブライトパス・バイオ株式会社
さらに、2016年11月、東大医科研発、がん免疫療法(T-iPS 細胞療法)の世界初の臨床応用、事業化を目指す「アドバンスト・イミュノセラピー」を子会社化。iPS細胞を活用した強力な次世代ワクチン開発の進展にも期待。
4571 ナノキャリア
「ミセル化技術」を使う東大発創薬ベンチャー。薬物を必要な場所に効率よく届ける、いわゆるDDS分野において、100ナノメートル以下の超微細な「ミセル化ナノ粒子」という基盤技術を保有し、この技術に基づいて「ミセル化ナノ粒子」に医薬品を封じ込め、患部に直接届き副作用の少ない抗がん剤を開発。2020年には全世界で2兆5000億円程度までに成長するといわれる、巨大なDDS市場の主役となれるか…
抗がん薬内包高分子「NK105」は上市前の最後の治験で失敗。現在、乳がんを対象とした第3相臨床試験については、ライセンスアウト先の日本化薬にて追加臨床試験を計画中。
- パイプラインまとめ:パイプライン|研究開発|ナノキャリア
4572 カルナバイオサイエンス*
がんなどの原因になる酵素、キナーゼを阻害する物質を探索する基盤技術を保有し、この技術に特化した創薬と創薬支援事業を行うバイオベンチャー。がん、免疫炎症、リウマチなど増殖性疾患要因の情報伝達タンパク質であるキナーゼを阻害する医薬品候補物質を開発し導出する事業モデル。国立がんセンターなどと共同研究。
米シエラ社に導出したCDC7キナーゼ阻害剤「SRA141(AS-141)」は多くのがん腫に効果が期待されるが、膵臓がんやトリプルネガティブ乳がん等の難治性がんを対象に開発を進め、早期承認が可能となるブレークスルー・セラピー認定を目指していく可能性が高い。上市までのマイルストーンは270百万ドル、上市後のロイヤリティ率は売上高の1桁台後半のパーセンテージ見込み。
また、大腸がん治療薬候補となるTNIK阻害剤「NCB-0846」は、医師主導臨床試験の検討が進められており、早ければ2018年にも開始される見込み。血液がんターゲットのCB-1763も前臨床入り。
- パイプラインまとめ:カルナバイオサイエンス株式会社 - パイプライン
4575 キャンバス*
抗がん剤開発に特化した創薬ベンチャー。独自のスクリーニング技術で創出した化合物で副作用少ない抗がん剤を開発。
※特定の標的分子による絞り込みをしない、キャンバスの創薬アプローチは気になるところ(これまでの主流は分子標的薬だったため)
正常な細胞分裂を阻害せず、がん細胞だけを攻撃する新薬候補、「CBP501」は臨床2相終了。免疫系抗がん剤等との併用に切り替え2017年臨床1相後期で再開し、順調に進捗していることにより研究開発費は大幅増。
「CBS9106」は米国ステムライン社に導出し(日本、中国、韓国、台湾除く)、技術アドバイザリー収入は安定的にあるものの、2019年以降はなくなる予定。
黒字化はまだまだ先になると思われ、継続前提に重要事象あり。パイプラインの作用機序は論文等で証明されているので、それまでに治験を進めながら、未契約部分の導出目指す。
- パイプラインまとめ:開発パイプライン一覧 | 株式会社キャンバス
※経営陣のブログ発信がコンスタントにあり、参考にしています
4586 メドレックス
イオン液体を利用した経皮吸収型製剤技術が強みの創薬ベンチャー企業。イオン液体を利用した独自技術「ILTS」中心に開発。ILTS技術を活用した「消炎鎮痛貼付剤」は、米国で臨床第3相の追加試験不調で断念。
帯状疱疹、がん疼痛貼付剤やアルツハイマーなど新規貼付剤は臨床段階で開発に注力。貼付剤は経口剤と比べ、臓器への負荷がなく、さらに眠気等の副作用も少ないとともに、効果が持続するというメリットがある。当面は米国治験に集中。継続前提に重要事象あり。
- パイプラインまとめ:パイプライン|株式会社メドレックス
4564 オンコセラピーサイエンス
東大医科学研究所発のがん治療ワクチン創薬ベンチャー。新作用機序を持つワクチン、抗体医薬、低分子薬の3分野で個別化医療を目指す。塩野義製薬と食道がんワクチン等、子会社イムナスファーマで協和発酵キリンとアルツハイマー治療の抗体医薬を開発。自社で乳がん、白血病の低分子医薬治験(「OTS167」)も。この「OTS167」は幅広いがんへの薬効が期待される。
また、新規抗がん剤標的分子TOPKを阻害する化合物「OTS964」はマウスに移植した人の腫瘍を完全に消失させた(6匹中6匹すべて)。一方、これまで二度、がんワクチンが上市目前のPh3で失敗した過去もあり。
- パイプラインまとめ:開発パイプライン | OncoTherapy Science, Inc.
4582 シンバイオ製薬
がん・血液・疼痛管理の3領域に特化した創薬ベンチャー。研究所を持たず、他社から新薬候補品開発権を取得し、臨床試験を経て製品化するビジネスモデル。大手製薬企業が参入しにくい、医療ニーズは高いが患者数が少ない領域を狙う。上市されれば競合薬がないため安定した収益を上げやすいが、マーケットが小さい分、複数のパイプランにより収益を積み上げていくことで補完。
アステラス・ドイツから導入した抗悪性腫瘍剤「トレアキシン(SyB L-0501)」はエーザイが販売し、順調。同薬の適応拡大を進める。その他、オンコノバ社から導入したマルチキナーゼ阻害作用(がん細胞の増殖、浸潤及び転移に関与する複数のキナーゼを阻害することによりがん細胞を死に至らしめる作用)を有する抗がん剤「リゴセルチブナトリウム(SyB L-1101/SyB C-1101)」の開発に注力。
4583 カイオム・バイオサイエンス
迅速に抗体作製する独自技術ADLibシステムを基盤技術に持つ理研発創薬ベンチャー。製薬企業に抗体作製技術や抗体を提供し開発進捗報酬を得る事業モデルから、自社で初期臨床まで行い導出する事業形態への移行進める。
DLK-1を標的分子とするがん治療用抗「LIV-1205」の抗体薬物複合体(ADC)開発用途における開発、製造および販売に関するライセンス契約をADC Therapeutics社と締結。一方「LIV-1205」の通常抗体は、初期臨床開発に向けて独プロバイオジェン社と製造委託契約を締結し、2年後に自社臨床入り目標。
- パイプラインまとめ:開発パイプライン|株式会社カイオム・バイオサイエンス
4588 オンコリスバイオファーマ
岡山大学発バイオ創薬ベンチャー。腫瘍溶解ウイルス技術を使うがん治療薬、がんマーカー開発、B型肝炎など重症感染症治療薬も。製薬企業にライセンスアウトし、契約一時金やマイルストーン収入、ロイヤルティ収入を得るビジネスモデル。
特にがん領域では、腫瘍溶解ウイルスのプラットフォームをベースに、固形がん治療を行う腫瘍溶解ウイルスの「テロメライシン」が最重要パイプライン。
また、第2世代テロメライシンである「OBP-702」や「OBP-405」などの開発を進めるとともに、がんの早期発見または術後検査を行う新しい検査薬、新規エピジェネティックがん治療薬を揃えることで、がんの早期発見・初期のがん局所治療・術後検査・転移がん治療を網羅するパイプラインを構築。
4597 ソレイジア・ファーマ
がん領域(主にがん治療と副作用緩和)が主眼の創薬ベンチャー。候補物質の開発権導入による臨床開発が主体のファブレス。上市間近なパイプラインを複数抱えており、目利き力の高さは評価に値する。一方で、シンバイオ(4582)同様、市場規模が限定的であり、臨床後期段階の化合物を導入していることからローリスク・ローリターンなビジネスモデルとなっている。
がん化学療法による悪心・嘔吐を対象とする「SP-01(経皮吸収型5HT3受容体拮抗剤)」とがん化学療法・放射線療法による口内炎の疼痛緩和を対象とする「SP-03(カテゴリーは医療機器)」の中国における承認取得のタイミング、及び高収益をもたらす中国3大都市での収益見通しがいつごろからある程度明確に見込めるようになるか。継続前提に重要事象あり。
- パイプラインまとめ:開発品情報 | ソレイジア・ファーマ株式会社
2191 テラ
東大医科研発ベンチャー。樹状細胞ワクチンによるがん免疫細胞療法の再生医療製品化目指す。免疫細胞療法のひとつ、樹状細胞ワクチン「バクセル」を核とするがん治療総合支援サービスが主柱。樹状細胞ワクチン療法はアジアからのインバウンド需要が伸長。
条件付き承認制度を利用し、和歌山県立医大で膵がん対象の医師主導治験推進。2022年度承認目標。継続前提に重要事象、延滞債権回収など進め営業キャッシュフローの黒字化図る。
2370 メディネット
東大医科研発ベンチャーで、がん免疫細胞療法の草分け。細胞加工受託が核で、細胞医薬品開発との二本柱。
Argos社から日本での開発権を取得した、がん治療細胞医療品「AGS-003」は、アメリカでのPh2の結果によると、抗がん剤との併用により患者の全生存期間を伸ばす効果が確認されている。今後さらなる治験の進展によって、1クール150万円という高額な免疫細胞療法に見合う効果を示すことができるかが注目。
2397 DNAチップ研究所
米国アジレント社製DNAチップや次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析受託主体のバイオベンチャー。研究者、製薬・食品向け受託解析サービス、リウマチ多剤併用効果判定、肺がんの薬剤耐性、糖尿病、うつ病態診断サービスなど、未病社会を目指す研究開発に注力。
次世代シーケンサを用いた「EGFR-NGSチェック」とは、がん患者に対し、上皮成長因子受容体(EGFR) に対するチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI) の感受性変異の検出を行うもの。薬事承認、保険適用に向けて準備中だが、なかなか申請が行われていないのが現状。
※最後に|MSワラントには気をつけて!
こういった、小型のバイオ銘柄を触るときに気をつけておきたいのがMSワラント(詳しく知りたい人は、下記ブログを読んでください…)。小型バイオベンチャーの多くは赤字が続いていて、中には治験が長引いてしまい、その資金を捻出するのも苦しい企業があります。そういった企業は、銀行から融資を取りつけることもままならないため、既存株主にはマイナスになってしまうような資金調達をせざるを得ない状況に。そういった状況ではないかどうか、財務諸表等で確認しておくことはしておきましょう!