公益財団法人日本数学検定協会は「数学検定」や「算数検定」以外にも、算数や数学をより多くの方に親しんでもらうためにさまざまな普及活動を行っています。そのひとつがインターネットで数学を楽しむためのコンテンツをお届けしている「数学検定・算数検定ファンサイト」。そこで私はコンテンツ作りに参加しています。
　実は、私は津田塾大学の数学科に在籍している大学4年生。フルタイムで働くのは来年からなのですが、一足先にお手伝いさせていただいています。もともと大学に入った時から、数学を学びたいという気持ちよりも数学の面白さも広めたいという意識が強かったんです。だから、就職活動も「数学の面白さを広めたり、イベントしたり、そんなことができる仕事に携わりたい！」と思って、メディア系や出版などを目指していろいろ動いていたのですが……うまくいかなかったんです。
　それで、「自分ができることは、システムエンジニアなのかな」と思って、システム系の業界で就職活動を始めたんです。信念を曲げてしまったんですね（笑）。システム業界の就職活動は順調で、割りとすんなり内定をいただけました。「これで就職活動も終わりだな……」と思っていた時に、数学検定協会の方から声をかけていただきました。
　私は講談社の『Rikejo』誌で数学カフェなどのイベントをお手伝いするなかで、数学検定協会の方々とお付き合いさせていただいていました。その時に「いいなあ。私のやりたいことをやっているなあ」って思っていましたが、「いきなり履歴書を持っていくのは何だか気が引けるなあ……」とも感じていました。だから、数学検定協会の方から声をかけていただいた時は本当にうれしかったです！

今は数学が大好きな私ですが、小学校から中学校まで、数学は苦手でした。そもそも勉強しなかったというのもありますし、同じ数学でも比例反比例は得意だけど図形になると全然ダメだとか、得意なところと不得意なところがあったんです。どの分野もまんべんなく数学ができないこともあって、数学全部がイヤになってしまっていたんです。
　もともと私は哲学や心理学に興味があったこともあり、高校の文理選択でも私立の文系コースに進みました。でも、高校１年生の時に数学の先生と出会ったことがきっかけで、数学が大好きになりました。その先生は文系の数学を担当していたので、ほとんどの生徒が数学を苦手だったこともあり、基礎からわかりやすく教えてくれました。
　そして授業中にみんなの集中力が切れてくると、雑談のような感じで、数学に関する面白い話をしてくれるんです。　例えば、「三角関数のサインカーブとコサインのカーブは、アジサイの蔓の巻き方と一緒なんだよ」とか。
　テストはちゃんと学校の授業を勉強すればできるという内容の問題だったので、そこで「数学がわかる、できる」という感覚をつかむこともできました。それからは数学まっしぐらです。
　高校１年生まで文系のクラスにいて、それから数学に面白みを感じて理系に転向した私だからこそ、理系文系の両方の立場で「数学は楽しい！」という感覚がよくわかると思っていますしし、その感覚をこのサイトを通じて、みんなにも伝えたいんです。

私は、数学はいろんなものをつなぐ接着剤のようなものだと思っています。人と数学、コンピュータと数学、人間工学と数学、いくらでもつなげることができます。文系科目の英語や心理学でも、そこで数学を入れてみればどうなるのか？　実際、心理学統計という学問もありますし、いろんなメーカーが数理モデルを用いた商品を開発しています。私たちの生活を見回せば、ありとあらゆるものに数学は入り込んでいます。そこに気づいてほしいんです。 　私の夢は数学博物館を作ること。数学は誰もが楽しめるものです。例えば江戸時代は、粋なたしなみということで、みんなで問題を出し合って楽しんでいました。江戸演算とかすごくやっていたんですよね。今で言えば、囲碁をやっているような感じで楽しんでいたようです。そんなふうに数学を身近な存在にしていきたいです。