片山さつきが在特会に近づいた経緯を元夫・舛添要一が語る
昨年の衆院選を批評した古谷経衡氏が小誌に綴った「女性政治家の通信簿」が反響を呼んだ。女性に点数を付けることが「女性蔑視」との声も寄せられたが、政治家の資質を問うことが非難されるのもおかしい。
先進国で日本の女性議員率は圧倒的に低い(衆議院で約10%、世界平均の半分)。古谷氏は最近の右寄りの女性議員は「伝統的な反共右翼ではなく、『スピリチュアル右翼』だ」と指摘する。スピリチュアル右翼は神話の世界や神道、『古事記』に傾倒するのだという。前号に続き古谷氏、そして日本はもちろん、海外の事例も知る舛添要一前都知事とともに、女性政治家の現状を語ってもらった。
〔議員名のあとの括弧内の表記は、(年齢、所属、当選回数)を表す〕
舛添:(女性議員がスピリチュアル右翼化している)根底にあるのが、国際社会における日本の地位低下でしょう。高度成長期、経済戦争の先兵としてビジネスマンはどんどん海外に出て行った。しかしバブル崩壊後、日本人が外に出る機会が極端に減った。
みんな内向きになり、内省しすぎた結果、『古事記』や神話が日本人の拠り所になった。そして「神の国」というイメージに頼るしかなくなった。
古谷:安倍政権の長期化にもつながる指摘ですね。
舛添:まさにそこが、女性議員が劣化したもう1つの原因ですよ。安倍政権以前と以後では自民党内の雰囲気がまったく変わってしまった。
古谷:女性議員もですか?
舛添:そうです。たとえば、稲田朋美(58・自民・衆5期)は異例の出世を遂げました。彼女は安倍総理の寵愛を受けた。それは、彼女が「女」で「右」で「弁護士」だったから。能力を純粋に評価されたわけではなかった。にもかかわらず、彼女はなぜ自分が出世できたのか、その理由を自覚していなかった。
古谷:「先生」「先生」と持ち上げられて承認欲求が満たされて舞い上がってしまったのでしょうね。
でも、それは小池百合子(65・都知事)も三原じゅんこ(53・自民・参2期)も山谷えり子(67・自民・参3期)も、失礼ながら、元奥様の片山さつき(58・自民・参2期)も変わりません。ほとんどの女性議員は準備もないまま政党に下駄を履かせてもらって、政治の舞台に上っている。その構図は、リベラルの蓮舫(50・民進・参3期)も同じです。
舛添:いま名前が出た女性議員は一緒に仕事をしたのでよく知っています。とくに片山さつきはね(苦笑)。あえて片山の立場に立って話すとすればこうなるのではないでしょうか。片山は上に媚びるのが苦手なタイプです。でも、隣には取り入るのがやたらとうまい稲田や小池がいる。さらに自分以外の女性議員はどんどん出世して大臣になる。
片山は焦るわけです。自分は元大蔵官僚で、しかもミス東大なのになぜ出世できないのか。稲田が安倍さんに重用されるのは右派だからだ。それなら私も右に行けば出世できるのではないか──結果、在特会のデモに参加してしまう。
古谷:ぼくも在特会のデモを取材中に片山さんに会いました。昔から在特会にシンパシーを持つような人だったんですか?
舛添:全然違いましたよ。
古谷:ある時期に右に寄っていったわけですね。
舛添:そうです。議員になれば、まずは選挙に勝たなければならない。集金と人員動員できるのは宗教団体と右寄りの組織。リベラルの人脈なんて頼りにならない。だから山谷なんて露骨に統一教会と在特会に近づいていった(※注)。
【※注:在特会幹部と写った写真が国会でも問題視されたが、山谷氏本人は、2014年10月の参議院予算委員会で、「(写真の男性が)在特会に所属しているとは承知していなかった」と答えている。】
自民党の女性議員が右に寄るのは、そこが大きい。
古谷:とすると右寄りと言われる稲田も三原も山谷も片山も根はノンポリで選挙や出世のために右に寄っていったわけですか?
舛添:本人たちがどこまで自覚しているかは分かりませんが、そうでしょう。
古谷:もしも安倍政権のあとに左派政権が誕生したらみんなリベラルに転向する可能性もありますね。
舛添:大いにありえます。だからみんな服装や髪型が似てくるんですよ。一度、稲田に文句を言ったんです。後ろ姿が片山そっくりでゾッとするから俺の側に来ないでくれ、と(笑)。
【PROFILE】ふるや・つねひら/1982年北海道生まれ。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。文筆家。主な著書に『左翼も右翼もウソばかり』『草食系のための対米自立論』『「意識高い系」の研究』。最新刊に『「道徳自警団」がニッポンを滅ぼす』。
【PROFILE】ますぞえ・よういち/1948年福岡県北九州市生まれ。1971年東京大学法学部政治学科卒業。2001年参議院議員(自民党)に初当選し、厚生労働大臣等を歴任。2014年2月、都知事就任。2016年6月、辞任。辞任後初となる著書『都知事失格』が弊社より発売中。
※SAPIO2018年1・2月号