就職活動で、なかなか「内定が出ない」と悩む就活生が多いですが、一方で内定を出すことを条件に今後の就活を終わらせようとする、いわゆる「オワハラ」に悩む学生も少なくありません。オワハラとは何か、そしてその対策を紹介します。
就職活動中の学生を悩ませる「オワハラ」とは
「オワハラ」の意味は、「就活終われハラスメント」の略語で、内定を出すことを条件に今後の就職活動を終わらせようとする、文字通り企業の就活生に向けたハラスメントです。就職活動は、本来学生の自由な職業選択のもとにされるべきものですが、「オワハラ」は、企業が採用したいと目を付けた学生に対して、公平・公正な就職活動の邪魔をするものです。オワハラの内容によっては、脅迫や強要に相当するものもあり、厚生労働省から事業主に対して行き過ぎた行為がないよう注意喚起しています。
背景には、企業が内定を出した後も学生は就職活動を進め、他社への就職を決めた結果、内定辞退となり、企業側としては採用したい人数確保ができないというケースが多発したという事情があります。そのため、企業側は採用したい学生をつなぎとめるために、いろいろな策を講じていますが、思い余ってオワハラという反則手段を使ってしまう企業が出てきました。また学生側も第一志望は決めていても、スベリ止めの感覚で何社も受けるのが普通で、第一志望の会社から内定をもらっていない時点では、受かった会社の内定を辞退することはしません。
特にオワハラが増えるのは、求人の多い売手市場が続いている場合。こういった状況では、人材不足という点から学生の方が優位になります。すると、内定をたくさん持ちながら就職活動をすることになり、辞退を止めたい企業側は強硬策に出てしまうという背景が強く影響しているのです。しかし、だからといってオワハラが正当化される理由はまったくありません。
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出典:写真AC
就職活動中に起こりやすいオワハラの具体例
では、実際にオワハラはどのように行われるのか具体例を紹介します。
1.内定を条件に就活の終了を迫る
オワハラの典型的な形で、オワハラの概要で述べた通り、内定を出す代わりに就活を終了するよう強要します。強要の仕方はいろいろありますが、最終面接中もしくは最終面接直後に別途呼び出し、追い詰めます。その時のセリフは、「内定を出そうと思っているのだが…」と柔らかく切り出します。そして、「確か君は当社が第一志望だったよね?」と続き、最後は「じゃあ、就活はこれで終わりだよね?」と返事を迫るやり方です。ひどい場合は、就活中の企業にその場で辞退電話をかけさせたりします。
2.内定をほのめかしその後の就活の邪魔をする
最終面接が終わった直後に場所と時間を変え、「君には是非いい返事を出したいが、聞きたいことがある。」と内定をほのめかして呼び出します。今後も就活を続けるという話を聞き出すと、具体的な他社日程を根掘り葉掘り聞いてきた上で、役員との懇談会や企業研究会を同じ日にセットするなどし、内定を出さないまま何度も呼び出すやり方です。「内定ということでしょうか?」と尋ねてもあやふやな返事でごまかし、日程を延ばし他社への就活の邪魔をします。
3.内定後の書類による拘束
はっきりと内定を告げた後、別の日に印鑑持参で呼び出し、誓約書、内定承諾書などに捺印をさせるやり方です。誓約書や内定承諾書の文面をその場で読み上げ、今後内定辞退することは周囲に迷惑をかけ、さも違反になるかのような印象を与えた上で、捺印させます。文面は、内定を辞退することが与える影響について事細かく書かれていて圧迫感を与えるものとなっています。
就職活動中にオワハラに遭ったらどうすれば?
前段紹介したオワハラのケースなど、オワハラと感じたときの対処方法について解説します。
1.内定を条件に就職活動を終えるよう強要されるケース
内定に交換条件はないので、「内定を出そうと思っているのだが…」という話し方をされたら、オワハラが始まる可能性があります。一般には、企業には最終面接が終わったら1週間をめどに「内定」か「不採用」の回答をする選択肢しかありませんので、まずは「それは内定という意味でしょうか?」と聞き返しましょう。
大事なことは、ここで企業からハッキリと「内定」という言葉を引き出しておくことで、後々、誰かに相談する時に事実関係を伝える時に有効になります。「内定です。」とハッキリ答えてくれれば「ありがとうございます。」とお礼を言って次の言葉を待ちます。
しかし、志望企業のひとつなのであまり強く出ると印象を悪くするかもしれないと心配な時は、あえて「ありがとうございます!」と先にお礼を述べる方法もあります。いずれの場合も、交換条件は何かをしっかり聞き出します。
「もう就職活動を終わりにしませんか?」と聞かれた場合の対処法としては、勇気を出して「いいえ、一生に一度のことなので、自分で納得できるまで続けたいと思います。」と断言します。そして、並行して受験している企業の返事待ちの日がわかれば、「あと〇日、返事を待っていただけないでしょうか?」と申し出てお願いするしかありません。
もし志望順位の高い会社なら、ここは「御社は本当に好きな会社なので、必ず返事いたしますので、是非よろしくお願いします!」と懇願します。何度かお願いした後、もし、「それだと内定は出せません。」や、「断りの電話を入れて下さい。」となどど言われたら、就活終了を強要しているオワハラ以外の何物でもありません。
会社の体質として、営業マンに「売れるまで帰ってくるな!」と言ってしまうような会社かもしれません。その場合は残念ですが、「学校もしくは公的機関に相談します。」と言うしかありません。
2.内定をほのめかし理由をつけて何度も呼び出すケース
企業が内定を出したい学生が就活をまだ続けそうだと確認したら、他社の選考日程を聞き出しいろいろな理由をつけて呼び出し邪魔をするケースです。対処法としては、一旦は呼び出しに応じますが、内容が面接選考ではなく囲い込みの勧誘策だと思ったら、選考結果の返事はいつもらえるのかと確認することです。また、他の企業の具体的スケジュールを尋ねてきても、詳細を語る必要はまったくありません。
前段のような、あからさまな交換条件でなくても「いい返事をしたいのだが…」「迷っているのだが…」も一緒で、あやふやな言い方で日程を引っ張られたら、前項同様、「それは内定ということでしょうか」と聞き返し、はっきりとした回答を引き出しましょう。
3.書類に捺印させ就活終了を宣言させるケース
内定承諾書、誓約書、いろいろな表題はありますが、会社に呼び出して内定を出すのと同時にこれらの書類に捺印し、同意をさせるやり方です。郵送で家に書類が届く場合と比べ、高圧的に目の前で捺印を求められるのでかなり圧迫感があります。また、求人サイトに掲載されていた労働条件と異なる条件が契約書に書かれているなど、悪質な求人詐欺をする企業もあるため、その場での判断や捺印は大変危険です。
対処法としては、必ず「相談したい人があるので持って帰らせて下さい。」と言います。この時、「いや、ここでないとダメだ。」と言われたらこれこそ脅迫、もしくは強要でオワハラ以外の何物でもありません。1のケース同様 「学校もしくは公的機関に相談します。」と伝えましょう。
以上、いずれの場合も、言葉巧みに就活終了を迫られる場合がほとんどなので、その場で即答しない事が大切です。「相談したい人がいるので時間を下さい。」と一旦その場を離れ、改めて今後の対策を信頼できる人と相談します。
オワハラが怖くても、就職活動中にやってはいけない「マナー違反行為」とは
オワハラは述べてきたように、企業側の行き過ぎた学生囲い込み策という言葉に尽きますが、一方で、オワハラを避けたいがために、企業側に何の連絡もせず、学生が企業の知らない間に勝手に辞退をするということが非難されています。これは「サイレント辞退」といわれるもので、就活ではあきらかにマナー違反となります。1社から内定をもらい、その後他社からも内定をもらった場合は速やかに、そして丁重に内定辞退の意向を伝えるのが就活のマナーであるということを覚えておいて下さい。
周りの力を借りながら就職活動を乗り切ろう
オワハラにはいろいろなケースがありますが、悩んだ時は大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークのような公的機関などに相談し、アドバイスを受けるようにします。くれぐれもひとりで悩みを抱え込まないようすることが大切です。
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◆一部上場企業で人事・採用・能力開発を約15年経験。採用では、新卒を中心に面接官はじめ採用選考実務と管理職(採用課長、能力開発部次長)を経験。
◆採用業務だけでなく、人事異動、能力開発、教育訓練等トータルで経験。
◆上記企業で営業部、販売部、企画部で実務から管理職まで経験。また、転職経験もあり(中堅商社6年、国家公務員2年)。
◆新卒専門のキャリアコンサルタント(国家公務員)として直接大学生に対面指導。模擬面接、ES添削、自己分析指導等、就活カウンセリングの実務全般を2年間経験。その間、大学キャリアセンターと連携し講演実績あり。