1. 5GにおけるKPIの定義
上述したユースケースは、将来のワイヤレス規格において、既存の規格では十分なサービスが提供できない新しいアプリケーションに対応できるように定義されています。ユースケース毎に実現すべきアプリケーションの要件が異なるため、それぞれに対して異なる新たなKPI(重要業績評価指標)が必要になります。IMT(International Mobile Telecommunications) 2020のユースケースで定義されているeMBB(Enhanced Mobile Broadband)では、ピークのデータレートを10 Gbps(ギガビット/秒)と想定しています[3]。これは4Gの100倍の値です。シャノン・ハートレーの定理によれば、達成可能な最大データレートを決定づける通信路容量は、周波数帯域幅とチャンネルのノイズの関数として表されます[4]。6 GHz以下の帯域はすべてさまざまな用途に割り当て済みなので、6 GHz以上の帯域、特にミリ波帯が、eMBBのユースケースに対応するための魅力的な選択肢となります。
図1.
3GPPとIMT 2020で定義された5Gのハイレベルな3つのユースケース
2. ミリ波帯――3つの周波数帯
世界中のサービス事業者は、莫大な投資を行って周波数帯を確保し、顧客にサービスを提供しています。周波数帯に対する入札価格の高さは、市場におけるその価値と、この貴重なリソースの不足を如実に物語っています。新たな周波数帯を開放すれば、サービス事業者は、より多くのユーザに、より高速なモバイルデータ通信サービスを提供できるようになります。6 GHz以下の帯域と比較すると、ミリ波帯は周波数リソースに余裕があり、免許の取得も容易です。そのため、世界中のサービス事業者が利用できます。ICの製造技術が進化したことから、ミリ波に対応する機器の価格は著しく低下しており、民生向けの製品として提供が可能なレベルにまで達しています。ただし、ミリ波帯については十分な調査が進んでおらず、技術的な問題が完全には解決できていません。このことが、現時点でミリ波帯の実用化に影響を及ぼす主要な課題になっています。
サービス事業者は、モバイルアプリケーションでの利用に最適な周波数帯を特定すべく、ミリ波技術の評価に着手しています。国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)と3GPPは共同で、2つのフェーズから成る計画に沿って5Gの規格策定に向けた研究を行っています。1つ目のフェーズは、40 GHz以下の周波数を調査する期間であり、2018年9月までに商用のニーズの中で最も緊急性の高いものを洗い出します。2つ目のフェーズでは、100 GHzまでの帯域を対象とし、IMT 2020において概要が定められたKPIに取り組む予定です。このフェーズは2018年に開始し、2019年12月までに完了する予定です。
ミリ波で使用する周波数帯の標準化に向けては、世界中で取り組みの足並みを揃えるべきです。そこで、ITUは2015年の世界無線通信会議(WRC:World Radiocommunications Conference)の後、世界的に実用化が可能な帯域の候補として24 GHz~86 GHzの範囲内で複数の周波数帯を発表しました[5]。
24.25 GHz~27.5 GHz 31.8 GHz~33.4 GHz
37 GHz~40.5 GHz 40.5 GHz~42.5 GHz
45.5 GHz~50.2 GHz 50.4 GHz~52.6 GHz
66 GHz~76 GHz 81 GHz~86 GHz
ITUからの提案の直後(2015年10月21日)、米国連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)は規則制定案告示(NPRM:Notice of Proposed Rule Making)を公布しました。それにより、28 GHz、37 GHz、39 GHz、64 GHz~71 GHzの各周波数帯における柔軟性の高い新たなサービスの規則を提案しました[6]。
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図2. FCCがモバイル向けに提案した帯域[6]
ITUや3GPPなどの標準化団体は、2020年を5Gの規格策定の期限として定めています。しかし、携帯電話の事業者は、それよりも早く5Gのサービス提供を開始したいと考えています。米国では、Verizon Wireless社とAT&T社が2017年に5Gの初期バージョンの提供を開始するという計画を掲げています。韓国は、2018年の冬季オリンピックで5Gの試行サービスを導入することを目指しています。日本は、2020年の東京オリンピックのタイミングで5G技術を実演したいと考えています。このように、さまざまな国、企業、団体がさまざまな背景を動機として取り組みを進めています。そうした中で、まずは28 GHz、39 GHz、72 GHzの3つが5Gで使用される周波数帯の候補として浮上しつつあります。
これら3つに注目が集まった背景には複数の理由があります。まず、60 GHzでは、酸素吸収によって約20 dB/kmもの損失が生じます[7]。それに比べると、3つの周波数帯は図3に示すように酸素吸収率がかなり低く、長距離の通信に使用できる可能性が高いと考えられます。また、これらの周波数帯はマルチパス環境でも適切に機能し、見通し外(NLoS:Non Line-of-Sight)通信にも利用可能です。非常に指向性の高いアンテナとビームフォーミング/ビームトラッキングを組み合わせることにより、信頼性とセキュリティに優れたミリ波帯のリンクを提供することができます。28 GHz、39 GHz、73 GHzについては、ニューヨーク大学 科学技術専門校のTed Rappaport博士と学生によって、すでにチャンネルの特性と潜在的な性能に関する研究が開始されています。同博士らは、各周波数帯における伝搬特性とサービス停止の可能性に関する研究結果をまとめた複数の論文を発表しました。3つの周波数帯に関して得られたデータや研究結果と、世界中で利用可能な帯域を結び付けることで、3つの周波数帯を、ミリ波に対応するプロトタイピングの出発点とすることができます。
図3.
ミリ波帯における大気吸収特性[7]
3. 28 GHz帯に関する現状
サービスプロバイダは、広大で割り当てもされていないミリ波帯をすぐにでも利用したいと考えています。実際、ミリ波帯の中で具体的にどの周波数帯を使用するかということについてはサービスプロバイダが多大な影響力を持ちます。Samsung Electronics社は2015年2月、独自にチャンネル測定を実施しました。その結果を基に、同社は28 GHzが携帯電話向けの通信に利用可能な周波数帯であるとの見解を示しました。同社が行った測定により、都市部におけるパス損失の予測値が確認されました(パス損失指数はNLoSリンクで3.53)。この結果から、「28 GHz帯の通信リンクでは200 mの距離に対応できる」とSamsung社は主張しています[8]。また、同社はフェーズドアレイアンテナを用いた研究も行っており、複雑なフェーズドアレイを携帯端末の内部に搭載するという設計を行った場合、どのような特性が得られるのかを評価する作業にも着手しています。一方、日本では、NTTドコモがNokia社、Samsung社、Ericsson社、Huawei社、富士通と提携し、28 GHz帯(ならびにその他の周波数帯)における独自のフィールド実験を成功させています。
Verizon社は2015年9月、「Samsung社を含む主要な提携先と共に、2016年に米国でフィールド実験を行う」と発表しました。5Gの規格策定時期として提案されている2020年より4年も早く実験を行うことで、Verizon社はいち早く5Gの市場に参入したいと考えています。2015年11月には、Qualcomm社が128本のアンテナを用いて28 GHz帯の実験を実施しました。その実験により、密集した都市部の環境下でもミリ波技術を活用できることと、ビームフォーミングを用いたNLoS通信が行えることが実証されました。FCCが「28 GHz帯はモバイル通信に利用可能である」と発表したことから、米国ではより多くの実験が続くと予想されます。さらに、Verizon社はXO Communicationsから28 GHz帯を借用するというリース契約も発表しています。この契約には、2018年末にその帯域の買い取りも行えるというオプションが付与されています。
ただし、28 GHz帯は、ITUが定めた世界的に実用化が可能な帯域には含まれていないことに注意する必要があります。つまり、5Gにミリ波が採用された場合でも、28 GHz帯が長期的に使用されるかどうかはわかりません。28 GHz帯は、米国、韓国、日本で利用が可能です。また、米国の各種サービスプロバイダは早い段階から28 GHz帯のフィールド実験に取り組んでいます。そのため、世界的な規格とは関係なく、米国固有のモバイル技術として28 GHz帯が推し進められる可能性があります。また、韓国は2018年の冬季オリンピックで5Gの技術を披露したいと考えています。そのため、標準化団体が5Gの規格を正式に策定するよりも前に、28 GHz帯に対応する民生向け製品が登場する可能性があります。ただ、この周波数帯が、IMTが提示した帯域のリストに含まれていないという事実が看過されるはずはありません。実際、FCCの中にはこれに注意を払っている委員もいます。FCCの委員であるJessica Rosenworcel氏は、2016年2月にワシントンで行われたに講演で次のように述べました。
「高い視点から見れば、米国が単独で進めていかなければならないことが間違いなく存在するはずです。それには28 GHz帯への対応が含まれます…(略)…残念ながら、2015年にジュネーヴで開催されたWRC(WRC-15)では28 GHz帯は取り上げられませんでした。5G向けの周波数帯の調査リストには含まれていないのです。しかし、28 GHz帯は世界中でモバイル向けに割り当てられています。したがって、米国は28 GHz帯の調査を続けるべきでしょう。実際、この帯域については韓国と日本でも既に試験が実施されています。私たちもこのタイミングで踏みとどまるべきではありません。独自に取り組みを進め、2016年末までに28 GHz帯の枠組みを構築する必要があると考えます」
同じくFCCの委員を務めるMichael O'Rielly氏に至っては、FCCのブログ記事でWRC-15の結果に対する自身の不満を以下のように表明しました。
「WRC-15がもたらす実質的な効果と、それが今後のITUの役割に及ぼす影響について、憂慮せざるを得ません。このままでは、今後のWRCの価値が低下してしまうかもしれません。また、ITUが政府機関の手先となり、現行の帯域利用者による効率的なスペクトルの活用や技術的な進歩を妨げる存在になりかねないということが現実的な懸念になっています[9]」
確かに、28 GHz帯が5Gで広く採用されるかどうかはまだわかりません。しかし、現時点で重要な周波数帯であることは明らかです。
4. 73 GHz帯に関する現状
ここ数年間、28 GHz帯を巡る取り組みと並行して、モバイル通信用の周波数帯としてEバンドも関心を集めています。Nokia社は、ニューヨーク大学が73 GHz帯で行ったチャンネル測定の結果を活用し、同周波数帯の研究を開始しました。また同社は、ナショナルインスツルメンツ(NI)の年次会議であるNI Week 2014において、NIのプロトタイプ向けハードウェアを利用し、73 GHz帯を使用した無線(OTA:over the air)でのデモを同社としては初めて披露しました。その後、研究が進むに連れ、このプロトタイプシステムはさらに進化を続けており、デモを通して新しい技術的な成果が着実に発表されています。Mobile World Congress(MWC) 2015までには、このシステムにレンズアンテナとビームトラッキングを採用しました。それにより、データのスループットを2 Gbps以上に高めることができました。また2015年のBrooklyn 5G Summitでは、このシステムのMIMO(Multi-Input Multi-Output)版により10 Gbpsを超える動作が実現されました。それから1年足らずの時期に開催されたMWC 2016では、14 Gbpsを超える双方向の無線リンクが披露されました。
MWC 2016で73 GHz帯のデモを披露したのはNokia社だけではありません。Huawei社もDeutsche Telekom社と共同で、73GHz帯で動作するプロトタイプを披露しました。MU(マルチユーザ) MIMOを採用したこのデモは、高い周波数効率を実現するだけでなく、20 Gbpsを超えるスループットが個々のユーザに提供される可能性を示すものでした。
すでに、73 GHz帯に対する取り組みは始まっており、今後3年間でさらに研究が進む見込みです。73 GHz帯は、28 GHz帯や39 GHz帯よりも優れた決定的な特徴を備えています。それは利用可能な連続帯域幅が広いことです。モバイル通信において、73 GHz帯では、提案されている周波数帯の中で最も広い2 GHzの連続帯域幅を利用できます。米国では、28 GHz帯で850 MHz、39 GHz帯で1.6 GHz/1.4 GHzまでの連続帯域幅しか利用できません。前述したとおり、シャノン・ハートレーの定理に基づき、帯域幅が広いほどデータのスループットは高くなります。つまり、73 GHz帯にはほかの周波数帯に勝る大きなメリットがあるということです。
5. 39 GHz帯に関する現状
39 GHz帯については、現在のところあまり多くの研究成果が公開されているわけではありません。それでも、39 GHz帯が5Gの規格で候補となる周波数帯の1つであることに間違いはありません。実際、ITUは世界中で実用化が可能な周波数帯の1つとして39 GHz帯を挙げています。ニューヨーク大学も、39 GHz帯による実用化が可能であることを示すチャンネルのデータをすでに公開しています。39 GHz帯に関する問題の1つは、28 GHz帯や73 GHz帯と比べてすでに多く利用されていることです。FCCは、モバイル用の候補として39 GHz帯を提案するとともに、米国におけるこの帯域の研究を促進しています。
Verizon社は、2016年に行う28 GHz帯のフィールド実験に力を注いでいます。しかし、同社は39 GHz帯の試験もすでに計画しています。XO Communications社は、28 GHz帯だけでなく、39 GHz帯においても大量の免許を保有しています。1つのサービスプロバイダがこれだけの投資を行っていること、またIMTのリストにも含まれていることから、39 GHz帯は2020年に策定される5Gの規格の有力な候補だと言えます。
6. ミリ波に対応するプロトタイプの開発
5Gにおいてミリ波の潜在能力を活用するには、新しい技術、アルゴリズム、通信プロトコルを開発する必要があります。ミリ波のチャンネルの基本的な特性は、現行の携帯電話システムのモデルとは異なることに加え、まだ十分に解明されているとは言えません。そのため、特にミリ波の研究の初期段階でプロトタイプを構築することには極めて重要な意味があります。ミリ波に対応するシステムのプロトタイプを構築すれば、技術や概念の実現可能性や採算性について、シミュレーションだけでは得られないレベルで検証できるからです。さまざまなシナリオを対象とし、リアルタイムの無線通信を実現するミリ波対応のプロトタイプを利用すれば、ミリ波のチャンネルについて未解明の部分を明らかにし、技術の導入と普及を促進することが可能になります。
ミリ波での通信を実現するプロトタイプを構築するうえでは、いくつかの課題を解決しなければなりません。ここでは、数GHzの信号を処理することが可能なベースバンドサブシステムについて考えます。LTEに対応するほとんどの実装では10 MHz(最大で20 MHz)のチャンネルが使用され、演算の負荷は帯域幅を拡大すると直線的に増加します。そのため、5Gで求められるデータレートに対応するには、演算能力を100倍以上に高めなければなりません。このことから、ミリ波対応のプロトタイプの開発では、物理層の演算においてFPGAが不可欠な要素になります。
ミリ波に対応するアプリケーション向けにカスタムでハードウェアを構築するのは、気の遠くなる作業です。先述したように、ミリ波帯の周波数が通信用途にとって非常に魅力的である理由の1つは、広大な連続帯域幅を使用できることです。5Gのアプリケーションでは1 GHz~2 GHzの帯域幅に対応する必要があるはずです。このニーズに対応できる市販のハードウェア(送信機、受信機)を探し出すのは容易なことではありません。使用する周波数によっては対応する製品が見つからない可能性があります。もし、見つかったとしても非常に高価であるかもしれません。あるいは、未処理のデータの処理や構成が行えないこともあるでしょう。それらが可能だとしても、何らかの制約があるかもしれません。そのため、FPGAを採用した処理用のボードをカスタム設計するというのが魅力的な選択肢になります。FPGAを搭載するボードの設計にはそれほど時間はかからないと思われるかもしれません。しかし、それと通信を行うためのソフトウェアインタフェースを開発するための時間も合わせると、非常に熟練した技術者であっても1年以上はかかることになるでしょう。しかも、それはプロトタイプのシステムのうちほんの一部にすぎないのです。
また、プロトタイプのシステムでは、FPGAを搭載するボードに加えて、1 GHz~2 GHzの帯域幅に対応するために最新のD/AコンバータやA/Dコンバータを使用する必要があります。現在では、ベースバンドとミリ波の間で周波数変換を行うためのチップを含めて、さまざまなRF ICが市場に提供されています。しかし、利用可能な機能が限られていることに加え、ほとんどの製品が60 GHz帯を対象としています。RF ICの代わりにIF/RF段を使用することも可能です。ベースバンドとIFのソリューションがあるなら、ミリ波対応の無線ヘッドのために、ベースバンドRF IC以外の選択肢を考えることもできます(ただし、そうした製品はまだ多くはありません)。ミリ波対応の無線ヘッドを開発するには、RFとマイクロ波を扱う回路の設計について専門的な知識を持っている必要があります。それらの知識は、FPGAを搭載するボードを開発するために必要なスキルセットとはまったく異なります。したがって、ミリ波対応の無線ヘッドに必要なすべてのハードウェアを開発するには、さまざまな分野のスキルを備えたメンバを擁するチームが必要です。FPGAは、ミリ波ベースバンドのプロトタイプシステムにおける中核的な要素として捉える必要があります。数GHzを扱うチャンネルに対応可能な複数のFPGAをプログラミングする場合には、システムの複雑さが増大することになります。実際、サービスプロバイダや、通信分野の研究者らは、システムの複雑さやソフトウェアに関する課題に直面することになります。そうした負荷を軽減するために、NIはミリ波に対応するプロトタイプ向けの構成可能なハードウェア製品群と、ミリ波システムベースバンドの基本部分となる物理層のソースコードを提供しています。また、各種のタスクを簡素化するために、複数のFPGA間で行うデータの移動や処理を抽象化できるようにしています。これらのツールは、プロトタイプからシステム/製品への移行という5G技術の開発に必須の作業を支援することを目的としたものです。
7. まとめ
5Gが具体的にどのように実装されるのかはまだ明確になっていません。しかし、ミリ波がそのための技術の1つになることは間違いありません。その理由の1つは、データのスループットに対する要件を満たすためには、24 GHz以上の帯域で利用可能な広大な連続帯域幅が必要になることです。これについては、ミリ波技術を採用することにより、14 Gbpsを超えるデータレートを達成できることがプロトタイプの開発を通じてすでに実証されています。まだ解決されていない最大の問題は、「ミリ波の中でもどの周波数帯がモバイル通信に使われることになるのか」ということです。5Gについては、ITUがその周波数帯の選定に一役買う可能性があります。現在、世界中で使用可能な携帯端末を製造するにはチップセットが複数必要になります。それらを置き換える1つのチップセットが開発/使用できるようになれば、端末メーカーや消費者が負担するコストを低減することができます。しかし、現在の周波数の割り当てを変更するには多大なコストがかかります。世界中で合意が得られる単一の帯域を見出すことが、現在懸命に追い求められている理想的な目標です。しかし、最終的にこの目標が達成されるとは限りません。一方で、各国/地域のサービスプロバイダは、できるだけ早く5Gを実現したいと考えています。そのため、ITUの勧告を無視し、世界規模の拡張は行えなくても、最も利用しやすい周波数帯を採用しようとしています。また、適切なプロトタイプを開発できる製品を活用し、5Gの開発において必須の要素となる双方向通信リンクのフィールド試験も行っています。その結果を活用することで、研究者らはこの新たな技術の実証を行い、かつてないほどのスピードで標準化を進めています。
未知の部分は少なくありません。しかし、ミリ波技術が実用化されること、そしてその日が近いことは確かです。次世代のワイヤレス通信が登場する日を目前に控え、世界中がその具体的な実装方法に期待を込めつつ注目しています。
8. 参考文献
[1] CISCO VNI 2016: http://www.cisco.com/c/en/us/solutions/collateral/service-provider/visual-networking-index-vni/mobile-white-paper-c11-520862.html
[2] RAN 5G Workshop, Sep 19, 2015 http://www.3gpp.org/news-events/3gpp-news/1734-ran_5g
[3] IMT 2020 https://www.itu.int/dms_pubrec/itu-r/rec/m/R-REC-M.2083-0-201509-I!!PDF-E.pdf
[4] Taub, H., & Schilling, D. L. (1986).Principles of Communication Systems. (通信システムの原理)McGraw-Hill.
[5] Resolution Com6/20, Provisional Final Acts WRC-15. WRC-15 (pp.424-426). Geneva:ITU. http://www.itu.int/dms_pub/itu-r/opb/act/R-ACT-WRC.11-2015-PDF-E.pdf
[6] Use of Spectrum Bands Above 24 GHz for Mobile Radio Services(24 GHz以上の周波数帯域を使用したモバイル無線サービス), GN Docket No. 14-177, Notice of Proposed Rulemaking, 15 FCC Record 138A1 (rel. Oct. 23, 2015)
[7] T. S. Rappaport, J. N. Murdock, and F. Gutierrez, ''State of the art in 60 GHz integrated circuits & systems for wireless communications(60 GHzを利用する無線通信用のIC/システムの最新動向),'' Proc. IEEE, vol. 99, no. 8, pp.1390–1436, Aug. 2011.
[8] Samsung "5G Vision(5Gのビジョン)", p. 7, http://www.samsung.com/global/business-images/insights/2015/Samsung-5G-Vision-0.pdf page 7
[9] O’Rielly, M. (2016, January 15). 2015 World Radiocommunication Conference: A Troubling Direction(WRC-15:憂慮すべき方向性) https://www.fcc.gov/news-events/blog/2016/01/15/2015-world-radiocommunication-conference-troubling-direction