小論文と作文の違いとは、何でしょうか。よく聞かれる質問ですが、はっきり言えば、明確な区別はありません。どちらもあいまいに使われている言葉からです。だからこそ、小論文が入学試験で課される場合に最初に考えていなければならないことを書いておきました。注意しなければならないのは、小論文一般の対策があると思いこんで、何のためにもならない準備をしてしまうことです。
1、小論文とは
「小論文」という場合には、試験科目としての小論文を指す場合と、提出課題としての小論文の場合がありますが、後者の場合はレポートという場合も多く、およそ「小論文」といえばほぼ試験科目のことを指します。
AO入試で「小論文」の提出を求めるという場合はレポートとほぼ同じ意味です。
「小論文」は大学入試特有の言葉とも言えますので、ここでは大学入試の試験科目を中心に考えます。
大学に進んでからは、論文を書くことになります。理論に基づいて主張を論理だてて書くのが論文です。小論文は「小さな論文」という理解で合っているかもしれませんが、決まった作法のある学術論文の書き方とも違う場合が多いです。
試験科目としての小論文とは何かといえば、いろいろなものがあります。あえて定義をしてみるとすると、
- 記述式の試験である
- 解答の方式が一定指示されている
- 試験場で行われ制限時間がある
というものです。
「記述式の試験である」という点も、医学部入試などでの小論文の中には、現代文の試験問題と同じよう語句の穴埋めや接続詞を選択式で出題している場合があるので、少し怪しいところもあります。
しかし、多くの場合は、数百文字の論述、記述があります。
国語、英語、数学などの教科の筆記試験で見ることのできない面を評価しようとするものです。
うがった見方をすると、何らかの理由で他の科目の中ではできない設問があるために、小論文としているということもあります。例えば、大学入試であれば高校まででは習わないが進学後に必要な専門知識・関心分野などや、知識ではない入学後の動機や入学後の抱負・計画などです。
いずれにしても、志望校の試験科目に「小論文」とあった場合に、やみくもに文章を書く練習をすればいいというものではありません。さまざまな形式があるので、まずはそれをきちんと研究しなければなりません。
つまり「小論文」には、あらゆる「小論文」に対する共通の対策はありません。
2、作文とは
では、一方で作文とは何でしょうか。これも特に決まった定義をすることはできません。高校入試の場合は、「作文」という試験科目がありますが、大学入試でいう「小論文」にあたるものであったりします。
ただし、小学校、中学校、高校の学習の中で、作文といえば、読書感想文であったり、「税」や「人権」といった決められた課題についての作文であったりと、おおよその傾向があります。
「論文」「小論文」「作文」の意味するところのなんとなくのイメージとして、
論文 > 小論文 > 作文
というふうに「論文」と「作文」の間に「小論文」があるというのはだいたい合っています。
小中学校の作文の指導を見ると、原稿用紙の使い方については指導されますが、構成や論理展開についてはあまり細かく指摘されません。また、話し言葉か書き言葉か、あるいは敬体(です、ます)か常体(だ、である)ということについても、そこまで使い分けをせずに、のびのびと自由に思ったことを書く方がよいとされます。
作文も小論文もどちら意味がはっきりしない言い方なので、違いを意識する必要はないでしょう。
3、小論文にはどんなものがあるか
小論文には問題の形式でおおまかに分けると、次のようなものがあります。
- 単語など短い言葉の題材について書く形式
- 短い質問や指示に答える形式
- 課題文についての設問に答える形式
- 課題文を要約する形式
- 写真、絵、図や表についての質問に答える形式
また、もっと重要なことに、なぜ小論文の評価の仕方についても大きく2つに分けると
- 点数化、序列化せずに、適性があるかどうかを見極めるためのもの(医学部などに多い)
- 点数化、序列化するもの(慶応義塾大学、早稲田大学など)
評価の要素としても、
- 意欲
- 知識
- 文章能力
- 適性
のいずれかを評価するか、どこに重点があるかなどの違いがあります。
いずれにしても志望校のアドミッションポリシーや過去問を分析して、把握しておくことが必要です。
形式や評価の方法によって、対策をあわせていかなければなりません。
小論文の場合は過去問を分析して対策をしなければなりません。もし公開されていない無い場合は、出題方針や過去の入学者の傾向やアドミッションポリシーから想定することが必要です。
4、作文が得意だった人の落とし穴
作文が得意だった人は、だいたいの場合は小論文は得意です。
しかし、逆にそのことが落とし穴になる場合もあります。
のびのびと話し言葉で書くタイプ
とにかく作文が好きだった人の中には、話し言葉調でどんどん書き進めるタイプの人もいます。かぎかっこで会話文を入れたり、感情表現なども自在にちりばめて書いていきますが、論理的な解答が求められる場合は不適切です。文章を書くのが早いというのは、強みになります。中には反省文ばかり書かされていたので、原稿用紙を埋めるのがとにかく得意という人もいますが、内容が薄いものは評価されないと思ってよいでしょう。
文章の美しさにこだわってしまうタイプ
小論文の場合には、採点者は解答を読まなければなりません。つまり、読み進めたくなるような文章表現の工夫や美しい表現は、ほとんどの小論文の場合は必要がありません。これに関しては、留学生で日本語を外国語として習得した人の方が語彙の少ない中できちんと論理的な文章をかける場合もあります。書き出しを悩んだりする必要はありません。例えば、「○○に対する考えを書きなさい」とあれば、答えは「○○に対して・・・」と書き出すのがよいです。設問に答えることが優先ですので、不必要なレトリックは省きましょう。
誰から見ても正しい意見しか書けない優等生タイプ
独創性や論理性が求められる場合は、誰もが正しいと思っていることをそのまま書いて、論理展開が雑だったり陳腐すぎる主張をすると評価されません。作文では世の中の当たり前のような意見が求められることが多かったでしょうが、小論文は少し違います。優等生的な意見は単に適性や意欲を見るだけの小論文であれば、無難でよいのですが、小論文自体で点数を稼いで合格しなければならないような大学の場合は、どうやって評価される解答になるか工夫しましょう。世の中で賛否が分かれる論点を良く知ることや、当たり前だと思うことをあえて否定する練習もしてみましょう。
5、小論文と作文の大きな違い
実は小論文の大きなポイントは、小論文はほぼ試験の際に採点者にしか読まれないと言うことです。あとで、みんなで読み比べるということはありません。多くの場合は採点者が読むだけです。例外として、志望理由書に近い出題のされ方をする場合は、入学後も担当者が閲覧可能な状態で保管する場合が多いです。
作文との大きな違いとして、作文は誰に対する文章なのかはっきりしないことがありますが、小論文は入学のために評価されるものということがはっきりしています。
小論文ではしっかりと採点者を意識して、何が評価されるかを考えて、対策することが重要です。