2018年1月12日 17:00
ビジネスではITを活用しないと生き残れません。とはいえ、世の中にはデジタル製品もITサービスも溢れかえり、百花繚乱です。コストだけを見ると銭失いになりかねませんし、何も考えずに選ぶと予算オーバーになることも。そこで、本連載は、副業で個人事業主となろうかと考えている人から、10人くらいまでの小規模企業を経営している人向けに、ビジネスのためのITという切り口で製品やサービスを取り上げようと思います。
筆者も、国内外に展開する飲食企業を含め複数の会社を経営しているので、デジタルリテラシーの低い社員や予算がないといったよくある悩みを抱えています。そんな現場のリアルから、業務効率改善や働き方改革に効く情報を紹介します。
初回となる今回は「ビジネス向けのノートPCの選び方」編。
プライベートではスマートフォン全盛かもしれないが、仕事ではまだまだPCが必要。コモディティ化したとはいえ、季節ごとに新機種が大量に発売されており、何を選ぶのかが悩みどころ。特にビジネスで使うのであれば、コストは重視したいが、パフォーマンスを削ってしまっては業績に悪影響を及ぼしてしまう。そこで今回は、目的別と予算別にどんなPCがあるのかを総ざらいし、お勧めモデルも紹介する。(※表示価格は1月12日時点のもの)
PC選びの前に基本的なスペックの見方をおさらいしておく
中小企業だと、ノートPCを会社で一括購入するというよりは必要に駆られて五月雨に用意するケースが多い。場合によっては、社員が自分で購入するケースもあるだろう。そんなときは、ビジネスで使うからといって無理に法人モデルでなくても、コンシューマーモデルを選んでも問題なし。
ただし、PCを選ぶ前に、スペックの見方の基本をおさらいしておきたい。細かい知識をマスターする必要はないのだが、性能とコストのバランスをチェックしたり、限られたコストの中でどの性能を重視するか、といった判断に役立つからだ。
ちなみに、日本ではノートPCが圧倒的な人気だ。一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の統計では2017年9月のPC国内出荷実績は、デスクトップが18万3000台、ノートPCが56万3000台と大きく差が付いている。オフィスでは、デスクトップPCも根強く利用されているが、フリーアドレスオフィスやリモートワークなどの導入で、やはりノートPCが主流となっている。
OSはWindows 10一択となるだろう。基本的にはHomeエディションを搭載しているモデルが多いが、グループポリシーやAzure Active Directory機能を利用するなら、Proエディションが必要になる。HomeエディションからProエディションにアップグレードすることもできるが、1万3824円かかるので、必要であればProモデルを選んだ方が良いだろう。
CPUの種類はたくさんあるが、ざっくりとモデルを把握しておけばいい。やっぱり主流はインテルで、最も製品数が多いのがCore iシリーズ。そこそこ動けばいいならCore i3でOK。Microsoft Officeをはじめアプリをいろいろと使うならCore i5で普通に使える。Core i7ならサクサク操作でき、写真編集などのヘビーな操作も快適だ。
ほかには、Atom、Pentium Dual-Core、Celeron Dual-CoreといったCPUもあり、低消費電力だったり安価だったりと特徴がある。とはいえ総じて処理性能は低くなる。逆にCADやゲーム開発のためにパワーが必要な場合はXeonというCPUもあるが、もちろん高価になる。AMDからは、A-SeriesやE-Seriesなどが出ており、性能は控えめだがコストパフォーマンスがいい製品もある。最近、Core i7以上の性能を持つ「Ryzen Mobile」というCPUをリリースし、今後の動向が注目されるところ。
メモリは4GBもしくは8GBが主流だが、事務用途であれば4GBでも十分。ストレージは使い方にもよるので、SSDなら128~256GB、HDDなら500GB~1TBあれば標準以上という感じ。もちろん余裕があるに越したことはないが、PCのスペックにそこまで求めるよりは外付けストレージを利用した方がお得なケースも多い。低価格帯になると、SSDよりも遅いフラッシュドライブのeMMCを搭載しているモデルや、32GBや64GBといった容量のモデルもある。
もし、会社でMicrosoft Officeを用意していないなら、付属しているモデルだと割安にゲットできる。最近は、Office 365のサービスを1年間利用できる「Microsoft Office Home and Business Premium」が付属している製品が多い。
基本は社内モバイル、時々出張に持って行く人なら
オフィスでは、ウェブで情報を集めて営業や企画の資料を作り、複数のコミュニケーションアプリで取引先とやりとりし、頻繁に行われる会議にももちろん携帯。時々だが、出張があるときにも持って行く、という人なら13.3型ディスプレイを搭載するモデルがぴったり。多数のウィンドウを並べて使うのは難しいが、1つのアプリならメインマシンとして快適に操作できるサイズとなる。
基本は社内モバイルであれば、そこまで堅牢性や軽さ、バッテリー駆動時間を追求する必要はないだろう。ただし、業務のメインとして使うからにはそこそこのCPUパワーが欲しい。価格優先で選ぶと、もっさり感が出てくるので要注意。とはいえ、ウェブブラウザーくらいしかアプリを起動しないなら、コストを優先させる手もある。
13型前後で安いモデルだと、3万円から見つかるが、多くはCPUがAtomやCeleron Dual-Coreで処理能力が控えめ。PCをたくさん使う業務には向かないだろう。逆に、そこまでヘビーには使わないが、PCは置いておきたいというニーズにははまるかもしれない。
がっつり使うのであれば、Core i5のCPUが欲しいところ。もし手書きでメモを取るなどタブレットが欲しい業務であれば、2in1モデルを選ぶのもいいだろう。Windows Hello対応の指紋認証リーダーを搭載している機種であれば、手軽にWindows 10にサインインできる。パスワードをいちいち入力せずに済むので、ばれやすい文字列を使う必要がないし、肩越しに盗み見られるショルダーハックも回避できる。
おすすめ1
日本エイサー「Swift 1」
6万7440円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 13.3型(1920×1080ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Celeron Dual-Core N3350 |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 128GB eMMC |
6万円台という価格が魅力。高速無線LANのIEEE 802.11acに対応し、バッテリー駆動時間も10時間と長め。CPUがCeleron Dual-CoreでストレージがeMMCと性能はやや控えめなので、ヘビーな処理は苦手だ。
おすすめ2
マイクロソフト「Surface Pro FJR-00014」
13万6944円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 12.3型(2736×1824ドット) |
OS | Windows 10 Pro |
CPU | Core i5 |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 128GB SSD |
マイクロソフトの大人気タブレット端末。専用キーボードと電子ペンは別売りとなるが、2in1の使い勝手には定評がある。Core i5/i7モデルであれば性能も十分で、持ち運びも負担にならない。Microsoft Office付き。
おすすめ3
富士通「LIFEBOOK UH75/B3」
18万4485円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 13.3型(1920×1080ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Core i5 8250U |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 128GB SSD |
13.3型ワイド液晶搭載ノートPCとして世界最軽量の約748gという軽さがウリ。バッグの中に入れて持ち出す際も負担にならない。パームレストにWindows Hello対応の指紋認証リーダーを搭載し、サインインも簡単。Office付き。
基本は社内の自分の机、時々会議室へ持って行く人なら
基本的に自分の机に置きっ放しなら、サイズを気にする必要は無い。どうせなら大画面の方が快適に操作できるだろう。とはいえ、ノートPCであれば社内モバイルは可能。お勧めは15.6型前後のモデルだ。このサイズのノートはインターフェースも充実しているので、周辺機器も楽々接続できる。
大画面ノートでがっつり作業をするからこそ、筆者としてはハイパワーなモデルをぜひおすすめしたい。個別の処理はほんのわずかな時間しか違わなくても、積み重なると大きな時短になるためだ。とはいえ、このディスプレイサイズのPCは、実はとても安価に作ることもできるので、目を疑うような価格のモデルもあるのだ。性能が控えめなことをきちんと理解した上で買うのであれば、複数台まとめ買いしても安く抑えられるのは経営者としてはうれしいところ。
オフィスアプリで文書を作ったり、写真などを編集したりするなら、CPUはCore i5以上でSSDを搭載したモデルを用意したいところ。動画編集など、ハイパワーが必要ならCore i7搭載モデルを選ぼう。VR開発に使うノートPCを探しているなら、マウスコンピューターのG-TUNEシリーズが定番だ。
おすすめ4
HP「HP 15-bw000」
3万2800円(税別)
スペック | |
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ディスプレイ | 15.6型(1920×1080ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | AMD E2-9000e APU |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 500GB HDD |
フルHDディスプレイを搭載しているのに、目を疑うレベルの安さが魅力。光学ドライブをはじめ、インターフェースもひと通りそろっている。処理速度さえ我慢できれば、普通に活用できそう。
おすすめ5
ASUS「FX553VD(FX553VD-FY381T)」
12万9384円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 15.6型(1920×1080ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Core i5 7300HQ |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 256GB SSD |
グラフィックスにGeForce GTX 1050を搭載しており、3Dゲームもできる描画力を備える。ディスプレイは広視野角のフルHD解像度で、オフィス用途に向いているノングレア加工が施されている。
おすすめ6
マウスコンピューター「NEXTGEAR-NOTE i5730SA1」
21万5784円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 15.6型(1920×1080ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Core i7 7700HQ |
メモリー | 16GB |
ストレージ | 256GB M.2 SSD、1TB HDD |
ハイエンド級のCPUとグラフィックスを搭載したモンスターノートPC。高速なM.2 SSDと大容量のHDDをデュアルで搭載している。VRの開発にも利用できるパワーを備え、どんなオフィス業務も楽々とこなしてくれる。
外を飛び回って隙間時間にばりばり仕事する人なら
ノートPCを持ち歩くことが多いなら、重量とサイズ的に大画面モデルは厳しい。とはいえ小さすぎると作業効率が落ちるので、12型前後でなるべく軽量モデルを選ぶといいだろう。また、バッテリー駆動時間も重要だ。駆動時間が6時間前後だと、行先によってはACアダプターを持っていく必要があり、その分、荷物がかさばってしまう。駆動時間が10時間以上あれば、ノートPC本体だけでいいので楽だ。
モバイルノートは過酷な環境にさらされる可能性があるので、堅牢性が求められる。そしてできれば、SIMカードを直接装着し、Wi-Fiのないところでもネットを利用できると便利だ。
やはり全部入りだと想像通り高くなってしまうが、最高のモバイルPCによる業務効率の向上はそれ以上のメリットを提供してくれることだろう。予算があるなら、ぜひ積極的に検討して欲しい。
おすすめ7
Lenovo「Lenovo ideapad 120S」
3万3199円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 11.6型(1366×768ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Celeron N3350 |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 500GB HDD |
モバイルでPCは使うが予算はない!というなら、ここまで安い製品もある。社員全員に配るといった使い方もありか。その代わり、バッテリー駆動時間は約7.1時間。重量は約1.27kgで、さらに約180gのACアダプターも持って行く必要がありそう。
おすすめ8
VAIO「VAIO S11」
14万1264円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 11.6型(1920×1080ドット) |
OS | Windows 10 Home |
CPU | Celeron 3865U |
メモリ | 4GB |
ストレージ | 128GB SSD |
LTE対応の11.6型ノート。重量は860gで、バッテリー駆動時間は14.5~16時間と長い。可能であれば、プラス2万1600円でCPUをCore i3-7200Uにアップグレードしたいところ。Microsoft Office付き。
おすすめ9
パナソニック「Let's note SZ6(CF-SZ6QFMQR)」
30万2180円(税込)
スペック | |
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ディスプレイ | 12.1型(1920×1200ドット) |
OS | Windows 10 Pro |
CPU | Core i7 7500U |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 256GB SSD |
12.1型とちょっと大きめディスプレイなのに、光学ドライブを搭載し、Lサイズバッテリーを付けても1.05kgという軽さ。LTE対応で駆動時間は22時間とダントツ。OS、CPU、堅牢性もハイエンドだ。Microsoft Office付き。
以上が、ビジネスノートの選び方になるが、おすすめした製品以外にももちろん、たくさんのモデルが発売されている。
型落ちであればさらにコストを抑えられるし、今後出てくる新モデルだと高くなる可能性もある。今回紹介したチェックポイントを参考にして、できる限りコストを抑えつつも、ビジネスで使えて結果の出せるPCを選び抜いてほしい。