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田中克己「2020年のIT企業」

SIモデルの変革を急ぐCTC

田中克己 2018年01月12日 07時30分

 「要件定義を基に開発する時代は終わった」。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の大久保忠崇取締役・専務執行役員はこう認識し、SIモデルの変革に取り組み始めている。その先駆けが2017年10月に東京・五反田に開設したオープンイノベーションの専用スペース「DEJIMA」とみた。

 大久保専務はSIビジネスの限界を感じるとともに、SI企業が社会的な評価を失うことへの危機感を数年前から抱き始めた。そこで、約4年前の特別経営会議で、「SI企業のモデルが変わる」と説き、参加役員らに理解を求めた。「出来上がったモノに責任を持つSIモデルを築かないと、国際競争に勝てなくなる」とし、大久保専務はITの価値を創り上げる環境を整える必要性を訴えた。だが、業績が好調なこともあり、変革はなかなか進まなかった。

工数と単価をかけるSIビジネスの限界

 CTCのビジネスは、ネットワーク設計や工事などのインフラSIと、それに物販を組み合わせた提案だ。アプリの受託開発、運用を含めた統合的なSIビジネスもある。いずれにしろ、想定工数を見積もり、それに技術者の単価をかけた工数ビジネスになる。

 こうした人材を提供するSI企業の価値は、見積もり通りにできたのか、スケジュール通りにできたのかなのだろう。作ったモノの価値は評価の対象にならないということ。インフラSIも、同じように工数に換算されてしまう。米国でボディショップと呼ばれる所以だ。そこでの勝負は単価の安い中国やインド、ベトナムなどの海外企業が優位になる。彼らはメインフレームという過去の資産がなく、新しい技術を取り入れやすい環境にもある。技術面でも勝てなくなる恐れがある。

 CTCに変革を急がせる出来事がもう1つあった。2017年春、大久保専務らが中国・深センの南山科学技術園を訪問したところ、「シリコンバレー以上に活気があった」ことに驚いた。同地域にはソフトウエアやハードウエアのスタートアップ企業のほか、投資会社、テンセントやファーウェイなど大手が拠点を設けている。スタートアップ企業が「こんなことをやりたいので、集まってください」と声をかけると、プレゼンテーションが始める。そのスピード感とスタートアップと大手の協業に、「中国の底力も感じた」。

 そこで、2年弱前に複数の社員から提案があった新しいアイデアの創出から試作づくり、事業化までを支援するプロデューサー型のSIモデルへの変革を急ぐことにした。2017年4月、その推進部隊である未来技術研究所を新設した。プランナーやエンジニア、予算管理など約40人の人材を配置し、国内外のスタートアップ企業を巻き込みながらユーザー企業と共創する。「10年後の当社の屋台骨を支えるものにする」(大久保専務)。

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