シリコンバレーのエンジニア給与相場が想像の倍ぐらい高かった

IM飲み会2017で、アメリカの給与相場についての話をした(もはやIMと全く関係ないが、IM開発者の人生に関係があるということで)。会社に雇われてると、こういうトピックを書くには差し障りがあったり、自慢っぽくなったりしてしまうので、タイミングよく無職である今の間に、こちらにも書いておきたい。

内容を一言に要約すると、「シリコンバレーでは、ある程度の経験を積んだソフトウェアエンジニアの年収は3000万円に容易に達しうる」ということになる。

最近、アメリカでは人工知能系のエンジニアの給料は3000万とか4000万とかが当たり前らしい、というような噂をTwitterなどで見かけるが、こういった情報は、間違ってはいないが、完全に正解であるとも言い切れない。このあたりは、日本とアメリカの報酬システムの違いを知らないと、しっかりと理解できない。

USでのエンジニアの報酬システムの概要

アメリカのテック系企業の報酬システムはどこの会社もだいたい似たようなものであって、以下のような要素で構成されるそうだ。

  • base salary
  • restricted stock unit or stock option
  • annual bonus

これらをまとめてtotal compensationと呼ぶ。また、この他に、転職時にsign on bonusが出たり、引っ越し手当が出たりするのも一般的らしいが、このような一時金についてはここでは触れない。

base salaryはいわゆる基本給である。restricted stock unit (RSU)やstock option (SO)は、株式での報酬である。このあたりは詳しくないが、上場後の企業ではRSU、未上場の企業ではSOが使われる、はず。株式(っぽいもの)による報酬については、これら以外の形式での支給もあるらしい。

RSUは入社時にgrantされ、それから半年おき、1年おきなどで数年(典型的には4年)かけて少しずつvestされる。grantは「将来このタイミングでこれだけの株数をvestします」という約束であり、vestは実際の受取である。

RSUはオファーレターでは金額で提示されるが、入社後のあるタイミングで、その日の株価を使って株数に変換される。その後、vestされるタイミングで株価が上がっていれば実質的な報酬はオファーレター上よりも増えるし、株価が下がっていれば実質的な報酬も減る。株価連動型の報酬になっているわけだ。

また、RSUは1年ごとにほぼ同額がgrantされる。つまり、入社後の収入を大雑把に書くと以下のようなイメージである。

  • 1年目: base salary + 14 RSU
  • 2年目: base salary + 12 RSU
  • 3年目: base salary + 34 RSU
  • 4年目: base salary + RSU

実際には各年のRSUの金額は同一ではないし、vestは等量ずつとも限らないので、必ずこのようになるとは限らないが、大枠としてはこんなもんだろう。

日本とアメリカの給与相場比較

さて、上記を考慮して、日本とアメリカの給与相場をなんとなく比較してみたい。モデルとしては、3x歳のシニアソフトウェアエンジニアを採用する。

日本側は、base salary + annual bonusで1000万円の年収を仮定しよう。また、毎年50万円の定期昇給があるものとする。アメリカ側は、base salaryを$150kと仮定し、RSUをbaseの60%、annual bonusを10%とする。1年目から4年目にかけての年間報酬を比較すると、以下のようになる。(1年目には$20kのsign on bonusも追加してある)

  • 1年目:1000万円 vs $207k (約2300万円)
  • 2年目:1050万円 vs $210k (約2400万円)
  • 3年目:1100万円 vs $232k (約2600万円)
  • 4年目:1150万円 vs $255k (約2900万円)

US側は定期昇給を仮定していないが、同程度の昇給を仮定するならば、4年目の収入は3000万円を超えているであろう。(もちろん、為替相場にも依存するが。)

ということで、冒頭のUSでの機械学習エンジニアの収入は3000万円〜4000万円が相場、という話に戻ると、誤解を招きそうなところが何点かある。

  • ある程度評価されているSoftware Engineerであれば、機械学習は関係なく、3000万円〜4000万円の報酬は得られる。
  • 3000万円〜4000万円の年収というのはtotal compensationの話である。RSUの部分はちょっとずつ増えるので、フルでその金額が得られるのは、転職してから4年後の話になる。1〜3年目はもうちょっと低い。ただ、低いと言っても、年収2000万円は余裕で超える。

でも生活費も高いんじゃないの?

アメリカ(というか、シリコンバレー)の方が生活費が高いのは事実である。また、日本人が向こうで生活する上では、年末年始等、日本への帰国のための旅費も無視できない。アメリカで生活したことがないのでざっくりした計算になるが、日本での生活費に+500万円ぐらいすれば、なんとかなりそう、という計算になった。生活費の差を踏まえても、毎年の貯金額は500万円以上変わってきそうだ。10年向こうで働けば、東京に家を買えるぐらいの貯金が貯まるだろう。

このエントリを書いた目的

このエントリを書いたのは、一義的には、アメリカの(ソフトウェアエンジニアの)給与相場がこんなに高いということを広めたかったからである。これまでは、高いと言ってもせいぜい2000万円ぐらいで、生活費を考慮するとそこまで大きな差ではないのではないか、と思っていた。実際には、年収3000万円が十分に狙えるレンジであり、生活費を考慮した上でも日本とは大幅な差がある。

このような情報が行き渡ることによって、最終的には、アメリカに行く人が増え、さらには巡り巡って日本のエンジニアの給与相場が上がればいいなと思っている。

USでは、Glassdoorのような会社レビューサイトに割と赤裸々にsalary情報が載っていたりして、情報共有も日本よりはかなり進んでいる。お金の話をするのはいつでも難しいけれど、日本でももう少し、情報の共有が進めばいいなと思う。

ここまでの内容に嘘は書いていないつもりだが、何分、日本人が日本で書いた、いわゆるこたつ記事であるため、誤解や間違いがあるかもしれない。いつでも指摘してほしい。

参考情報

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