一面<出発進行> 長良川鉄道(2) 降りて3歩で温泉に
岐阜県郡上市のみなみ子宝温泉駅。長良川鉄道の売り文句は「列車を降りて三歩で温泉」である。乗っていた列車を降り、少し大股で歩いたら本当に三歩で、ホームに面した温泉施設入り口に着いた。戸を開くと売店もある休憩コーナーで、駅の待合室を兼ねている。 温泉発見は一九九七年。合併前の旧美並村が「高齢化が進む村民の余暇と健康のために」と業者に掘削を頼むと偶然、線路沿いの地下千三百メートルに源泉が見つかった。五年後、駅舎を兼ねた施設ができた。 鉄道ファンも来るが、客の九割は車利用の地元住民。地域の憩いの場として根付く。市内の主婦河合未智子さん(67)は「月に三回ぐらい来ます。友達としゃべるのにいい。ひざの痛みもやわらぐし」と語る。 休憩コーナー兼待合室の壁に信号があった。各列車の発車時刻三十分前に青くともり、十五分前に黄、五分前に赤に変わる。客に列車接近を知らせる狙いだ。 下り北濃方面の信号が赤になった。ガタンゴトンという音が近づいてきた。 (文・中野祐紀、写真・今泉慶太) 今、あなたにオススメ
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