中国海軍艦艇による沖縄県・尖閣諸島の接続水域進入は、改善の兆しを見せている日中関係に冷や水を浴びせる形となり、日本政府関係者も戸惑いを隠さない。
菅義偉官房長官は11日の記者会見で「中国が日中関係改善の流れを阻害することがないよう強く求めていきたい」と苦言を呈した。一方で、政府が実現を目指す首脳の相互訪問や日中韓3カ国首脳会議への影響については「考えていない」と述べるにとどめた。政府高官は「(艦艇が進入したのは)接続水域だ。領海ではない。しっかり分けないといけない」と強調した。
昨年11月の会談で、安倍晋三首相と習近平国家主席は関係改善を進めることで合意。同12月の高級事務レベル海洋協議では、日中の偶発的な軍事衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の構築と運用開始に向けて「前向きな進展」があった。
杉山晋輔外務次官は外務省に呼び出した中国の程永華大使に抗議した際、「せっかく日中関係が良くなっていく中で、なぜこのタイミングなのか」と伝えた。
防衛省幹部は「中国は『尖閣の問題は今もある』と示す必要があるのではないか。今後の動きを注意深く見ておく必要がある」と警戒感を示した。【高橋克哉、梅田啓祐】