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突如現れた「北朝鮮は悪くない」論に耳を傾けてはいけない

さらなる危機を歓迎する気か

北朝鮮の主張を鵜呑みに

朝鮮半島情勢が新年早々から動き出した。北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長が新年の辞で平昌五輪への参加を表明し、9日には南北閣僚級会談が開かれた。北朝鮮の意図は何か。そして、日本の左派たちは何を言い出すのだろうか。

韓国と北朝鮮が閣僚級会談の後、発表した共同報道文によれば、双方は「五輪成功に協力する」「北朝鮮は選手団のほか高官級代表団を派遣する」「軍事当局者の会談を開く」「南北間の問題は同じ民族同士で対話と交渉で解決する」などで合意した。

最後の「同じ民族同士で問題解決」というくだりは当然、米国をけん制する狙いである。それは北朝鮮の首席代表が共同報道文の発表で記者団を会場に招き入れた後、カメラの前で語った言葉にも表れている。

 

首席代表は「我々の原爆や水爆、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は徹頭徹尾、米国を狙ったもので同族を狙ったものではない。中国やロシアを狙ったものでもない。朝鮮半島非核化の話を持ち出せば、今回の合意は水の泡になる」と語ったのだ。

こういうセリフを聞くと「なんだ、そうか。敵は米国だけなのか」と安心してしまう向きもあるのではないか。さらに一歩進めると、韓国では「それなら、オレたちが米国との対立を仲介しよう」という声が出る可能性がある。

日本では「北朝鮮の敵はやはり米国だ。日本が米朝のケンカに巻き込まれるのはゴメンだ」とか「日本が米国に追従すれば、日本も敵視されてしまう」という話になりかねない。それが、まさに北朝鮮の狙いである。

「安倍政権が煽っている」論の奇妙さ

北朝鮮は五輪を成功させたい韓国の足元を見て、五輪参加をエサに核とミサイル開発を事実上、容認させてしまおうと目論んでいる。それで「問題は南北で解決」「敵は米国」と釘を指し、日米韓の連携に楔を打とうとしているのだ。

実に分かりやすい構図である。これに対して日米両国は南北対話を歓迎しつつも、警戒を緩めていない。

米国のティラーソン国務長官は南北会談について「半島の非核化をめぐる対話につながるとみるのは時期尚早」と慎重だった。フタを開けてみれば、北朝鮮は非核化どころか、核とミサイル開発を中断するそぶりさえ見せなかったのだから、それは正解だった。

一言で言えば、今回の南北会談は「平昌五輪をダシにした北朝鮮の宣伝攻勢」にすぎず、問題の解決にはまったく役立たない。したがって緊張は続く。

韓国はもともと文在寅政権が「容共親北路線」なので、金正恩氏の甘言に騙されたところで自業自得である。「敵は米国」というセリフを信じて核とミサイルを容認してしまえば、後になって脅されるだけだ。

問題は日本だ。昨年12月29日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54020)で触れたように、私は元旦放送のBS朝日の討論番組に出演した。そこで、いまだに「危機は安倍晋三政権が煽っているだけだ」という意見が公然と出たのには驚いた。

番組中でも述べたが「煽り論」は数年前の同じ番組でも、当時の司会者だった鳥越俊太郎氏やジャーナリストの青木理氏が盛んに語っていた。いまでも同じだったのだ。日本上空をミサイルが飛んでいるというのに、いったい彼らはどこまでおめでたいのか。

左派系ジャーナリストたちが現実から目を背けて「悪いのは危機を煽る安倍政権」と言い募っている限り、まったく北朝鮮の思う壺である。