再生可能エネルギーの普及などを背景に、リチウムイオン蓄電池など電力貯蔵設備(ストレージ)を活用したビジネスが世界で次々に誕生している。日経BP総研 クリーンテック研究所はこの変革の波を「世界 再エネ・ストレージビジネス総覧」にまとめた。その中から、新たな電力ビジネスとしての「系統安定化ビジネス」に焦点を当ててリポートする。
ドイツはストレージビジネスがいち早く商業ベースに乗ってきた国だ。同国は電源構成に占める原子力発電の比率を減らし、再生可能エネルギーを拡大する方針を掲げる。風力発電や太陽光発電などの再エネが発電量に占める割合は、2017年1~6月期には前年同期比2%増の35%に達し、史上最高を更新した。
一方で風力発電の建設が相次ぐドイツ北部は、再エネの発電量が地域の電力消費量を上回る事態が急増している。需給バランスの調整が難しくなる中、TSO(Transmission System Operator:独立送電会社)と呼ばれるドイツの系統運用者の間では、送電の安定維持に対する危機感が急速に強まっている。
この先さらに再エネ導入量が増えると、需給をバランスさせるための調整力として利用する火力発電が足りなくなり、再エネの出力抑制(発電停止)を強化せざるを得なくなる。ドイツでは卸電力市場の電力価格が下がっているなどの理由で、火力発電所の閉鎖が相次いでいることも調整力不足に拍車をかけている。
調整力市場向けストレージビジネスが広がるドイツ
自由化が進んだドイツでは、TSO各社は必要な調整力(アンシラリーサービス)を市場から調達する。とりわけ不足が深刻化しているのは短周期変動対策用の調整力で、対応力に応じて、PCR(Primary Control Reserve)、SCR(Secondary Control Reserve)、MR(Minute Reserve)の3つの種類に分類されている。PCRは0~30秒という短時間に自動で調整力を供給する。SCRは自動で、MRは手動でPCR後に残る周波数偏差を解消する。
SCRとMRは、分散電源をアグリゲートするVPP(仮想発電所)や需要家の需要を削減するDR(デマンドレスポンス)で対応できるが、PCRは高速応答が可能であることが入札の条件になる。ドイツにおいてこの分野では、素早い出力調整が可能な火力発電に加えて、充放電の応答性に優れるリチウムイオン蓄電池などのストレージが用いられるケースが増えている。
その1つが、ドイツ北部のシュヴェリーン市(Schwerin)を拠点とする配電事業者、ベマック(WEMAG)が建設した14.5MWh(容量)/10MW(出力)のリチウムイオン蓄電池プラント「Schwerin 1、2」だ。
WEMAGは、2014年に「Schwerin 1」(5MWh/5MW)を建設した際には、ドイツ環境省が拠出した130万ユーロの補助金がベースにあった。2017年7月から稼働した「Schwerin2」(9.5MWh/5MW)は、500万ユーロの建設費全額を自前で調達した。
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