転職活動を始めようとして、一番始めに用意しなければならないもの、それが「履歴書」と「職務経歴書(職歴書)」です。
用紙自体はコンビニにも売っていますし、各種テンプレートのデータであればそこかしらにありますが、今ひとつ実用的なものが見当たりません。
採用担当者から言わせれば履歴書/職務経歴書を見てピンとこない人は面接に呼ばれさえもしませんから、力をいれるべきです。
しかし、多くの求職者はこのはじめの一歩である「履歴書」と「職務経歴書」をおろそかにし、スタートから不利になってしまっている現状があります。
そこで、採用担当から面接までをこなしてきた私が「採用担当者」が面接に呼びたくなるような履歴書、職務経歴書の書き方をお教えします。
「人事にアピールする事ができる」という履歴書の書き方を見かけることもありますが、書類選考は現場の責任者がやっていることがほとんどですので、あまり意味がありません。
(人事が足きりをしていることはありますので、まったく意味が無いわけでもないのですが)
ですから、履歴書/職務経歴書はあなたを採用する権限がある人たちに向けて書くべきものです。
では、一つずつお教えしますね。
自己分析できていますか?
相談にこられた求職者にこのお話をすると、みなさんこう仰います。
「職務経歴書を書きたいだけなのに、なぜ自己分析をしなければならないのですか?」
採用担当として相談を受けているとき、転職コンサルタントとして話をうかがっているとき、何百回と受け答えした質問です。
「私が知りたいのは職務経歴書の書き方なんです。ノウハウやコツを教えて下さい」
そう言われるお気持ちもよくわかります。
しかし、自己分析ができていない職務経歴書では転職に失敗します。
そもそも、なぜ転職を成功させるために自己分析が必要なのかお教えします。
自己分析は目指す企業に対して向けて書類選考を通すため
職務経歴書によって自己分析ができていないと通したい企業で書類選考が通らず、どうでもいい企業にしか書類が通らなくなります。
すると、通ったのだからいいやという気持ちになり、そのまま面接し内定を経て転職に失敗します。
まずは自分自身を振り返り、
「私はどんな仕事がしたいのだろう?」
「自分の強みとはなんだろう?」
「今までの経験の何が活かせるだろう?」
このように考えてみる必要があります。
例文通りに書いた職務経歴書ではあなたが入るべき企業に入れません。
また、きちんと書かれていれば入るべきではない企業では書類選考が通らなくなります。
その理由はあとでお話ししますね。
自己分析は面接の合格率を格段にあげるため
職務経歴書の役割は書類選考まで、と考えていませんか?
面接で向かい合っている面接官は職務経歴書でしかあなたのことを知りません。
ですが、事前に職務経歴書を読んだ時点である期待感を持つケースがあります。
それは、「この人は欲しい」ということが感じられるきちんとした職務経歴書になっているからです。
この期待感というのは馬鹿にできません。
人間は第一印象で好意を感じると、それを補強しようとする性質があります。
要するに職務経歴書から期待感を感じてあなたに会う面接官は既にあなたに良い印象を抱いているところから面接が始まるのです。
この期待感を持たせる職務経歴書を作成するために自己分析が必要です。
自己分析を進めるための4つのステップ
自己分析とは客観的に自分を見つめ直す作業です。
あなたのことは誰よりもあなたが分かっていると考えがちですが、それは間違いです。
あらためて適切なステップで自分を見つめ直してみましょう。
まず、これには「Will・Can・Mustフレームワーク」を使います。
Willとはやりたいこと、Canとはできること、Mustとは求められるものを指しています。
ですが、この3つについて考える前に、まずはキャリアを振り返ってみましょう。
必ずキャリアの振り返りから始める
はじめにしなければならないことはキャリアを振り返ることです。
自己分析をする際に何から考えるべきか混乱するためです。
自身のキャリアを振り返ることで、その後にWill/Can/Mustを正しく考える手がかりを見つけることができます。
「できること(Can)」の前に「やりたいこと(Will)」を考える
転職系の情報サイトなどには「面接に合格するために、あなたができることを書き出しましょう」とありますが、これは大きな間違いです。
あなたの目的は「面接に合格すること」ではありません。
「あなたに適した企業を見つけ、やりたいことを実現するために転職を成功させること」だからです。
転職をしてどうしたいのか、これからどんな人生を生きたいのか、そのために「やりたいこと」を考えなければなりません。
「できること(Can)」と「求められるもの(Must)」は同時に考える
「できること」はあなたの能力、「求められるもの」は企業から求められる仕事です。
これらがマッチングしないと、転職はうまくいきません。
そして、「できること」と「求められるもの」が釣り合っていたとしても、「やりたいこと」がズレていれば意味がありません。
本サイトでは、ここを重要視しています。
最後は「やりたいこと(Will)」を最優先する
最終的には、かならずやりたいことを最優先してください。
先ほども言ったように「できること」と「求められるもの」が一致していてもそれがあなたの「やりたいこと」でなければ転職に失敗します。
やりたいことは何も仕事の内容、深さ、である必要はありません。
給与を上げたい、役職を得たい、というのも立派な「やりたいこと=実現したいこと」です。
では、「やりたいこと」を実現するために必要な職務経歴書に書くべきことをお教えしますね。
職務経歴書に必ず書くべきこととセオリー
職務要約
職務要約は、職務経歴書のはじめに必ず書くべきことで、職務経歴書の要点を記載します。
何故かというと、職務経歴書は書き込むとビッシリと文字が並ぶことも多く、多くの場合仕事内容の羅列になります。
そこに目を通しても採用担当からして「どこを読んで欲しいのか」がわかりません。
ですから最初に目に入る職務要約には「読んで欲しいこと」を要約して書き出すべきなのです。
さらに言えば採用担当が書類を見てすぐに「会ってみたい」と思わせることが必要です。
そのためには、
「客観的に大きな成果を出したことがわかること」
「具体的な数値を使ってそれがどれくらい凄いのかわかること」
「文字数にして200文字から300文字にまとめること」
が必要です。
こんなに凄いことをしました、という主観ではいけません。
あくまでも他人から見て「これは凄いな」と思わせることを書くのです。
「そんな凄いことはしてないよ」
という人も何か一つくらいは結果を残しているものです。
たった1回でも構いません、それが目にとまる職務要約にしましょう。
これが「つかみ」です。
職務経歴
職務経歴書で一番標準的な形式である「編年体」の職務経歴は、新卒入社から現在に至るまで順に事実ベースでキャリアを記載していきます。
入社に始まり、研修や配属、異動、昇進、転職などを記載していくのが普通です。
しかしながら、事実ベースを並べすぎると単に起こったことを羅列するだけの職務経歴になります。
これでは採用担当者の目にはとまりませんし、印象も良くありません。
特に転職歴が多い人はどこを読んだらいいのか分からない職務経歴書になります。
ですから、要約と同じで必ず見て欲しいところをフォーカスする必要があります。
なにもすべて起きたことを平等に記載する必要はないのです。
そして、年代順に記載するのではなく逆年代順に書きましょう。
何故かというと、面接官は10年前、5年前にやったことよりも、ここ1年、もしくは2、3年でやったことに強い興味を持ちます。
それは「あなたは今何ができるのか?」を見ているからです。
ですので、先ほどの要約と同様に読んで欲しいところをここ数年の出来事に持ってくるとより効果的です。
ただし、あまりにも長い年代にわたって同じことをしている場合は、やっていたことが変わっていったことが分かるように書いて下さい。
○○プロジェクトに配属。設計から開発に従事した。
などのように書いてしまうと3年もの間何も変わらない業務を行い、何も成長しなかった印象を与えます。
この3年の間にどのように役割や責任の変更があったか、課題を解決したか、を簡素で構わないので書き記しましょう。
活かせる経験/知識/能力
応募する企業で活かせる経験、知識、能力があるのであればきちんと記載して下さい。
記載した内容によって、それが面接でのスキルチェックの主軸になるはずです。
また、多くの経験、知識を持っているからといって羅列するのは得策ではありません。
必ずあなたの強みは何かが分かるようにするべきです。
強みが強調されていれば面接での質問もその分野に関することが多くなり、あなたも答えやすくなるのです。
自己アピールのフレームワーク
自己PRに必要な3つのポイント
自己アピール、すなわち自己PRにもフレームワークがあります。
自己PRは職務経歴書の中でも特に重要な部分で「なぜ企業があなたの採用しなければならないのか」を端的に記した内容にしなければなりません。
そのために押さえるべき3つのポイントがあります。
それは、
- 仕事における考え方(大切にしていること、こだわっていること、信条)
- その考え方を裏付ける具体的な行動
- 行動をした結果として得られた成果
を記載することです。
例文を見てみましょう。
ITエンジニアの方から例を借りたため少々専門的ですがご容赦ください。
私はこれまで「課題解決」を得意としてきました。
開発に配属された当初は、右も左もわからない状況でしたが先輩たちから指導を受け、かつわからないところ、気になったところは家でも深掘りするようにしてきました。
そのおかげで、課題に直面したときに解決の方法がわかるようになったのです。
課題を解決するとは、その問題が抱えている見えない問題を発見することから始まります。
多くの場合、問題として見えていることは氷山の一角で本当の課題ではありません。
例えば、開発中のサーバーが重すぎるというときは、スペックが足りていないという話ではなく、構成や設定に問題があるケースがほとんどなのです。
ですから、私は必ず計測から始め、あらゆる調査をし、可能性を一つずつ潰していき原因をつきとめます。
それが本来の課題を発見し、会社全体を良くすることだと信じているからです。(信条)
この○○プロジェクトでは、担当者がこのサーバーでは要件が実現できない、としてスペックの変更とスケジュールの遅延を申し出ていましたが、私が実際に計測することで本来の問題はサーバーの設定が誤っていることをつきとめました。(具体的な行動)
これにより、このプロジェクトは遅延することもなく、計画通りに完遂し結果をだすことができました。(成果)
このように「何を大切に考えて仕事をしているか」から、それにより「どのような行動を起こしたか」、そして、「どのような成果を出したか」が重要になっています。
何故かと言えば、採用担当者が「これだけのことができるのであれば、うちに入っても同じことをやってくれるだろう=再現性がある」と感じるからです。
志望動機に必要なこと
これは主に上層部が気にすることですが、あなたにとってなぜこの会社でなければならないのか、を見られています。
会社にとって同業他社はたくさんあります。
例えば、インターネット企業であればインターネットビジネスを行っている会社など無数にあります。
なぜあなたはその会社へ応募したのでしょうか、なぜこの会社でなければならないのでしょうか?
その会社が唯一の存在でない限り、同じような仕事をしている会社はあります。
ですから、あなたがなぜこの会社に入りたいのかの根拠をきちんと伝えなければなりません。
ここが非常に薄っぺらい候補者が多いです。
インターネット系の会社に対して「開発が好きで、開発に専念したいです」と書いたとしても、他に開発ができる会社はいくらでもあります。
そうではなく、なぜ御社でなければならないのか、を伝えなければならないのです。
そして、できることならば、なぜあなたが御社で活躍できるのかも書かなければなりません。
これらのことを完璧に記載できた職務経歴書であれば面接官の印象はかなり良い状態から始まります。
印象が最高に良ければ面接官は最初からあなたのことをどう落とそうか考えて部屋に入ってくるはずです。
最後に
職務経歴書の書き方について、採用担当の立場から転職成功できるコツをお教えしました。
すでに書いてきた通り、職務経歴書の時点で「これは良さそうだ」もしくは「この人は欲しい」と思わせるだけの力を持った書き方をしなければならないということです。
候補者の多くは「たかが書類選考でしょ? 面接でちゃんと話せればいいんですから、テンプレで十分ですよ」とおっしゃいます。
しかしながら、候補者の方々は採用の立場にたったことがない方ばかりです。
あなたが採用担当だったらどんな書類を通したいと思うのか、面接に期待を持って挑むのか、それを是非考えてみて下さい。