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<民団中央>右傾化の危険性指摘…人権週間でシンポ
民団本部で開かれた第1回人権フェスタひょうご
 民団中央本部人権擁護委員会(李根委員長長)は9日、東京・千代田区の在日韓国YMCAで「関東大震災虐殺を還みる追悼と人権の集い‐94年後の今も流言とジェノサイドは息を潜めているか‐」を開いた。民団や日本の市民運動関係者ら130余人が集まった。人権週間に合わせたシンポジウムは兵庫県でも開かれ、約150人の市民らがヘイトスピーチ問題の現況を傾聴した。

「虐殺否定」の背景
ヘイトスピーチ差別の悪循環深刻


 集いでは、地元の鳥取で10年間、人権をテーマにシンポジウムを開催してきた薛幸夫副委員長(民団鳥取県本部団長)が「大震災を、記憶から記録へと後世に伝えてゆこう」と開会あいさつ。続いて関東大震災の証言を記録した映画「隠された爪跡」が上映された。6500人以上の朝鮮人が軍隊、警察、民衆に殺されたという内容を観賞した後、呉充功監督が登壇し、「デマで人を殺すのだろうかと疑問視し、大震災60周年を期して制作した。100人以上の老人に荒川河川敷の遺骨発掘現場で会い、当時の状況を聞いた。94年前の震災時と今と何が違うのか。朝鮮人虐殺はなかったという話が独り歩きしている状況をみると、むしろ悪くなったのではないか」と批判した。

 2部では民団中央本部の権清志企画調整室長をコーディネーターに、ノンフィクション作家の加藤直樹氏(『九月、東京の路上で』著者)と社会学者の明戸隆浩氏によるヘイトスピーチ・クライムに関する鼎談が行われた。4月に内閣府ホームページから「関東大震災」の記述が削除された事に端を発し、小池百合子都知事の横網公園の追悼式への追悼文拒否、さらに荒唐無稽な「虐殺否定本」など、右傾化していく背景と危険性を指摘した。

 加藤氏は「石原都知事が震災時に三国人が騒擾事態を起こす」と述べたことがあるが、そのこと自体がヘイトスピーチだったのに、三国人発言だけが当時問題にされた」と振り返り、「今では朝鮮人暴動はあったと自警団の虐殺の事実を正当化する『歴史否定』が台頭している」と指弾。

 小池都知事に「歴史ねつ造本」を読むように働きかけ、さらに追悼碑を撤去しようと動くある都議の存在を浮き彫りにした上で、「何が真実か歴史家が検証すべきとして追悼文を見送った都知事は、行政のトップとしてあるまじき深刻な行為だと受け止めるべきだ」と強調した。

 明戸氏は差別扇動から直接差別が起き、次に差別をしながら差別否定をして、また差別扇動に戻る悪循環やネット上のデマによって差別観が残る怖さを指摘。「ドイツのようなホロコースト規制をかけるべきだ」と主張した。

 犠牲者に黙祷を捧げた後、李委員長が「日本政府に対して、自然大災害時のヘイトスピーチを厳しく罰する『特別法』の制定を求めた。さらに「公的な真相究明を韓国政府に要請する」と締めくくった。

■□
各地で条例化の動き
兵庫でもフェスタ


 【兵庫】「第1回人権フェスタひょうご」が10日、民団兵庫県本部で開かれ、民団や市民団体関係者ら約150人が参加した。民団県本部など12団体が実行委員会を構成し、兵庫県と神戸市が後援した。第1部の特別講演では、川崎市ふれあい館の崔江以子副館長が、これまでの自身の歩みと川崎市の取り組みなどを語った。

 崔副館長は「2013年から川崎駅周辺でヘイトデモが15回行われてきた。同胞多住地域の桜本を狙ってデモが強行されると聞くに及び、地域を守れという声に共感した老若男女がヘイトデモを阻止した。『オール川崎』」という市民ネットワークも生まれ、ヘイトデモをことごとく阻止してきた。約120万にも及ぶネット上の誹謗中傷に対して法務局に人権救済申立てを行った。参議院法務委員会で申し立て人として参考人陳述を行う機会を与えられ、参議院法務委員らが桜本を現地視察した」と経緯を説明した。

 これらの動きが功を奏して昨年「ヘイトスピーチ解消法」が成立し、川崎市も桜本周辺でヘイトスピーチをできなくする措置を取った。現在は、市独自のヘイト禁止条例制定を前提に、公的施設使用制限を定めるガイドラインを進めている。3月には条例が制定される見通しだ」と述べた。

 2部のシンポジウムは、「ヘイトスピーチ解消法から1年半、何が必要か?各地方の取組から見える成果と課題」をテーマに、崔副館長に加え、神戸市の吉田謙治市議会議員、京都府人権教育・啓発施策推進懇話会の山本崇記専門委員、大阪市人権施策推進審議会の中井伊都子会長、尼崎市ダイバーシティ推進課の橋本弘幸課長が議論を進めた。崔副館長は「ネット上のヘイトスピーチに対してネットパトロールを施行中だ」と述べながら、「差別のダメージは1回でもダメ。事前の策を自治体でつくらなくてはならない」と強調した。

 山本委員は「2月の議会でガイドライン議決の動きがある」と報告し、吉田議員は「条例づくりでは、被害者の救済づくりを早くする。全国で差別はダメだという教育、啓発・啓もうで根絶していこう」と訴えた。中井会長は「ヘイトスピーチを処罰する法規制の強化と法務省傘下の人権擁護機関とは別に、独自の人権擁護機関設置が必要だ」と主張した。橋本課長は「ネット上のヘイトスピーチを市職員にモニタリングさせる制度を全国に広げたい。自治体でセーフティネットをつくり、人権意識を育てることが大事だ」とまとめた。

(2017.12.20 民団新聞)
 
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