トムはまた会社を遅刻した。
今週はこれで3度目だった。
こっそりオフィスに入ってくるトムを、上司が怒った目つきでにらんでいた。
トムは言い訳を始めた。
「今朝は何もかもうまくいかなかったんです。妻は10分で身支度を整え、時間通りに近くの地下鉄の駅まで私を送ろうとクルマに乗せて走り出しました。しかし、途中の橋で事故渋滞に巻き込まれてしまって身動きがとれなくなってしまいました。私は決心し、クルマを降りて川に飛び込み、泳ぐことにしました。だから、ほら、スーツがまだ濡れているでしょう?そして、向こう岸にたどり着くと、近くのヘリポートに行ってヘリに乗せてもらい、市庁舎の屋上に着陸しました。そして、市の役員に先導してもらって市庁舎の外に出て、お礼を言ってから、全力でここまで走ってきたのです」
上司は黙ってトムの言い訳を聞いていたが、そのうち、重い口を開いた。
「トム、君はウソをついているだろう。女性がたった10分で身支度できるわけがないからな」