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表参道で働くシニアのブログ

野球やサッカーのように、チームとしてアイドルを応援すること

いわゆる「全盛期」のダンス☆マン編曲(「LOVEマシーン」を皮切りに「恋のダンスサイト」「ハッピーサマーウェディング」「恋愛レボリューション21」「ザ☆ピ〜ス!」「そうだ! We're ALIVE」と続く素晴らしきソウルファンク歌謡たち)をきっかけによく聞いていたモーニング娘。を、ここ数年またそれなりに見るようになった。推しをきかれたら工藤遥と答えていたけれど、昨年末の卒コンを風邪をで欠席したので失格である(チケットはなんとか譲れたので空席は阻止できた。個人でもスマホからバイク便が送れるのは学びだった)

失格だし、あまり浪費もしないただの在宅だけど、この3年くらいのモーニングやハロプロを見ていておもったことをちょっとだけ書いてみようとおもう。

工藤遥卒業シングル「若いんだし」(つんく♂のセルフライナーノーツも参照のこと)。くどぅ卒業の第一報がはいってきてすぐ浮かんだのは、なぜか竹原ピストル「Forever Young」だった。

きっかけは道重卒業

再会のきっかけはおよそ3年半前、年号付き表記になったモーニング娘。'14から、最後に残ったゼロ年代加入の道重さゆみ(6期、8代目リーダー)が卒業するというので、知っているメンバーがこれで誰もいなくなるという節目に元ファンとして区切りをつけておくべきではないかと卒業ツアー中盤の武道館公演に参戦し、お別れを告げるはずが再びよろしくお願いいたしますということになった。

ひとつには、たまたま12期の発表にあたり、新人が加入するというめったにないイベントを目撃してしまい思い入れができてしまったこともあるが、それより単純にコンサートが面白かったのだ。

全盛期のモーニング娘。は、さいたまスーパーアリーナでいちど見たことがあるのだけれど、ずいぶんと音がよくなかったことばかり覚えていて(あと目の前を、当時そういう言葉はなかったけどピンチケが飛び回っていて、かなりつらかった)、残念ながらステージの記憶があまりない。

その反省から、こんどは事前にセトリを教えてもらってちゃんと予習したうえで、おっさんにも優しい着席のファミリーチケットを取ってもらい、それで落ち着いて観戦できたし、10年も経てばアイドルといえど大会場での音響もよくなってて、パフォーマンスをちゃんと楽しめた。そして、思いもよらないことに、すこぶるかっこよかったのだ。

何より印象に残っているのは「シャボン玉」の最後のサビで、小田さくらがサイドキックを斜め上に向けてかますのだけど、その立ち姿のカッコ良さ。

その当時の編成でのスタジオライブ、小田さくらのラストパートは2分33秒あたりから。

シャボン玉は、つんくらしいといえばつんくらしいけれど、そのギミックのあざとさが……というようなことを語りがちなところが自分にはあるのだけど、そんな理屈はもうどうでもよくなってしまった。どんな曲かよりも、それがどうパフォーマンスされて、かっこよくステージングされるかが見たいのだ。

チームとしてのモーニング娘。

現在のモーニング娘。にはもちろん結成当時のメンバーはいないし、道重の卒業によって2011年以降に加入した若いメンバーのみになった(当時は全員が10代)。こうしてメンバーが総入れ替えになったのも、飯田圭織(1期)と矢口真里(2期)が抜けた2005年に次いで2度目で、つまりいまのモーニングは第三世代である。

そうなるとこれはもう別のグループなのではないか? という疑念がクビをもたげるところだが、意外とそういうかんじはなかった。

同じ曲を歌い継いでいることも大きいのだろうけど、個人的にはむかし好きだった野球チームをまた応援したくなったようなかんじ。例えば、LOVEマシーンがリリースされた年に26年ぶりのリーグ優勝を決めた福岡ダイエー(当時)ホークスを見ていた感覚に近い。

実際、経験豊富な道重さゆみが抜けた穴をほかのメンバーが埋めているのを目にし、絶対的エースと言われた鞘師里保(9期)が抜けても戦い続けられるあり方は、エースが移籍しても、主砲がトレードされても、主力が次々と渡米しても、大道が戦力外通告されても持ちこたえたホークスに重なるものがある(最近はそれほど野球見てないことがわかる例示だ)

それは、道重卒業のころに関連してこういう記事が出ていて、これで日本のアイドルとスポーツチームの関連性を意識するようになったこともある。

もうひとつ、らしい英語表現はメンバー紹介だ。「The group's current roster includes leader Sayumi Michishige...」(グループの現在の陣容はリーダー道重さゆみ……)と、"ロースター”という単語を使っている。アメリカンスポーツ好きの方なら、チームの選手登録リストをロースターと呼び、登録されることを「ロースター入りする」と表現することをご存じだろう。

これがロックバンドなどであれば、ロースターという表現は使われないはずだ。この記事の筆者はおそらく、日本のアイドルグループではメンバーの入れ替わりが日常茶飯事であることや、スポーツチームを応援するような感覚で”箱推し”するといったアイドル文化をよく理解しているものと推察される。

モーニング娘。'14のNY公演を米国はどう報じているか | エンタメNEXT - アイドル情報総合ニュースサイト

ダンスパフォーマンスを軸とするスポーツチーム感

加えて、ライブ活動に軸足を移してからのモーニング娘。(を含むハロープロジェクト全体)が、コンサートでのダンスパフォーマンスを重視するようになっていて、多人数のメンバーが揃えて激しくダンスダンスするのだ! ってなってることも、スポーツチーム感との親和性が高い。

自分たちで曲を作ったり活動の方針を決めたりするバンドやアーチストを見比べると、アイドルグループにはどうしても「やらされている」感であったり芸能界的な構造が見え隠れするのだけど、スポーツの「チーム」のようなものだと考えるようになって、それはほとんど気にならなくなった。

つまりアイドルそれぞれはアーティスト的な表現者というよりは、ひとつのチームを構成する選手であり、それぞれに役割があって所属している。その与えられた仕事をどのようにこなして、どうチームに貢献し、それでチームがかっこよくなっているのかどうか、そこを見るのが楽しい。

モーニング娘。という「チーム」は、もはや個々のメンバーから独立した存在としてあり、加入と卒業を繰り返してメンバーは入れ替わっていくのだけど、チームの伝統は変わらずにあり続ける。

そうしたチームとしての歴史と伝統をギュッと詰め込んだのが、高橋愛、田中れいな(6期)、道重さゆみに加えて辻希美(4期)が登場した昨年12月のツアー中盤の武道館公演から20周年記念のスペシャルメニューのこの動画。何度も巻き起こるファンの歓声に注目してほしい。

高橋や田中の今もって歌声の素晴らしさもさることながら、かつて「つじかご」として愛された辻と加護亜依(4期)コンビの代表曲「ロボキッス」を、その再来と言われる「まーどぅ」(小6で加入した佐藤優樹と工藤遥の10期コンビ)が歌うことはファンの渇望するところで、20周年記念コンサートのアンケートでは(この2人が歌うことを前提に)ユニット曲の2位として演じられた、ことを踏まえたうえで、その1カ月後に再演、しかもオリメンの辻を迎えて、という幾重にも折り重なった歴史とコンテキストが、波のように寄せては返す歓声に表れている。

リーグとしてのハロープロジェクト

道重の卒業と前後して、モーニング娘。を含むハロープロジェクト(ハロプロ)全体が、いわゆる「つんく♂プロデュース」から脱却しようとしていたのだけど、これもアイドルグループをチームとしての楽しもうとするには追い風のようになった。

この体制変更には賛否いろいろあるけれど、これによってハロプロ全体がモーニング娘。とその仲間たちといったものではなく、ひとつのリーグとして個性あふれる複数のチームを楽しめるものになっていった印象がある。

つんく♂一本体制が終了したハロー!プロジェクトは、今最大の過渡期を迎えている

つんく♂の総合P“卒業”後、ハロプロはどう変化する?

2014年末から2015年にかけて、スマイレージをアンジュルムに再編し、カントリー娘。をカントリーガールズとして復活させ、2年ぶりの研修生ユニットとしてこぶしファクトリー、春には続いてつばきファクトリーが結成され、モーニング12期も含めて総勢26名もの大増員。アンジュルム「大器晩成」を手始めにグループそれぞれの強みを活かした楽曲制作とメンバー選抜がなされた。

3年が経った2018年、ハロプロに所属する6つのチームそれぞれに特色があり、良さがある。共通することは、おおむねどのグループも前向きで、みんなが上を目指していることだろうか。いかにも選挙の日には投票行って外食しそう。よくスポーツ新聞で見かける「……と前を向いた。」という締めがどのチームにもふさわしい。めっちゃ大人しそうな子でもバリバリに踊っていて、ほんとにスポーツチームっぽさがある。

とくにアンジュルムは「最強」(by 蒼井優)との呼び声も高く、「いてまえ」や「ダイハード」と形容できそうな強力打線を誇っている。メンバーを4人、3人、3人にわけてそれぞれセンターとした最新リリースの3曲どれもが遜色のない仕上がりになっているところからも、切れ目なくどこからでも得点できる攻撃力が伝わってくる(cf. アンジュルムで打線組んだ

いまのアンジュルムを象徴する2016年4月発売のシングル曲「次々続々」。リリース直後に卒業した田村芽実と、2017年頭から休業し年末にそのまま卒業となった相川茉穂の姿も見える。

一方、3年前の再編で唯一影響を受けず、メジャーデビューからずっと5人で活動を続けてきたJuice=Juiceは、2017年ついにメンバーを追加。ただでさえ先発の駒が揃っているところに、ドラフトとトレードで即戦力が加入し、盤石で安定した歌唱力が魅力だ。海外遠征も数多く経験している。

2度目の武道館公演より未音源化の新曲「TOKYOグライダー」。

そしてモーニング娘。には、伝統を受け継いできたチームならではの底力を感じさせる。パフォーマンス面では、(先ほどはホークスの名前を挙げたけど)野球というより、サッカーのゴールシーンを見ているような爽快感がある。

統率力の高いパスワーク(フォーメーションダンス)と、フィジカルを活かした石田あゆみ(10期)らの突破力、そして佐藤優樹・小田さくら(11期)というツートップの決定力を存分に活かしたスピード感あふれる試合運びは、なんだかんだいってもやっぱりモーニングだ。

道重に次いで鞘師・鈴木香音(9期)が卒業し、12期に続いて13期が加入した2017年春のツアーより。バックトラックと歌唱が一致しないまま進行するメドレー、これはもうマッシュアップ! って何を言っているかわからないと思うが、実際に会場で見てて何をされたのかわからなかった。ただ口をあんぐりとあけて、とんでもないものの片鱗を味わっていた。

そのモーニング娘。に森戸知沙希が14期として兼任移籍しているカントリーガールズは、クールなモーニング娘。や熱いアンジュルムとは違って、ひたすらに可愛く愛おしい。

もともとダンスに定評のある森戸などを他チームにレンタルしているため活動が限られるなかでリリースされた配信シングル「小生意気ガール」。モーニング娘。12期オーディションに落選した可愛いメンバーをそのまま研修生にするのではなく、可愛さの権化のような嗣永桃子のもとで英才教育を施したらどうなるか? という壮大な実験は、森戸と小関舞というまったく異なる2人の怪物を生み出した。

こぶしファクトリーはどんなときでも真っ直ぐで力強く、

2015年リリースのファーストアルバムの最終曲を飾るフォークロック調の「辛夷の花」は、こぶしファクトリーが置かれた状況を自分たちの決意と宣言のように歌い上げる名曲。3年間の活動でアルバムまで出してて持ち歌にラブソングがまったくないのも、ある意味で等身大のハイティーンのひとつの真実なのかもしれない。

つばきファクトリーは気高く咲き誇る。

こぶしがスカートの下にジャージをはいている部活系女子だとするなら、つばきはその対極として女子力の高い世界観。楽曲も恋愛への憧れ成分が多め。客席との統率のとれたジャンプでおなじみの「初恋サンライズ」は、ハロプロ楽曲大賞'17堂々の2位。

さらに今年は、ハロプロ研修生から次なる新ユニットの結成も言明されており、現行もあわせて7チームになる見通し。

新ユニットのリーダーと発表されている一岡伶奈、Juice=Juiceに加入した段原瑠々、アンジュルムに加入した川村文乃、新しく演劇などのセクションでデビューと発表された高瀬くるみと清野桃々姫というハロプロ研修生から新デビューする5人のスペシャルユニットによる「誤爆」。このままデビューさせればいいじゃんの声多数。

2017年は残念なニュースも多かったが、今シーズンは各チームのさらなる前進を願ってやまない。がんばっていきまっしょい!

と最後まで書いてから気づいたけど、本人も囲み取材の持ちネタにしている小関の父親や、ファイターズ愛にあふれすぎている牧野真莉愛(モーニング娘。12期)の偏ったブログに触れるべきだったかもしれない。まあいいか。

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