(cache)海外アニメ・映画とかのブログ: アラビアンナイト Arabian Knight

アラビアンナイト Arabian Knight

28年もの歳月を重ね、紆余曲折を経て完成した千夜一夜物語
アラビアンナイト 1995 (米)
原題Arabian Knight(制作当時はThe Princess and the Cobbler)
  


 公開時期のせいでディズニーのアラジンの模倣品のように扱われた悲劇の一作。日本で視聴できる作品は、未完成品のアラビアンナイトだけですので、今回はこちらの紹介します。


 原作は、アラビアン・ナイトの締めを飾る恋物語靴直しのマアルフとその女房ファティマーの恋』(第989夜‐第1001夜)の辺り。原作の理不尽な展開や、エロティックな部分を多少削って映像化したのがこれ。監督は『ロジャー・ラビット』、『アンとアンディの大冒険』で有名なアニメーター、リチャード・ウィリアムズ。今回は、彼が描く驚異的な映像が存分に堪能できる本作の紹介と感想です。

ストーリー
悪の魔法使い・ジグザグの怒りをかってしまった靴職人のタック。しかし彼は危ういところを王女によって救われる。それ以来、ふたりは仲良くなるが、ジグザグの怒りは消えない。そんなある日、タックは自分が魔法を使えることに気付き、ジグザグとの戦いを決意するが…。 (ALICINEMAから引用)


予告編


感想(日本語吹替版)
 王道で無難。だけど、豪華。
 台詞が多すぎることを除けば、ファミリー映画として普通に楽しめます。(逆に英語版は台詞が極端に少ない...) 会話で子供の集中力をなくさないための対処法だから、まだいいけどちょっと多いか。な(特に主人公が)

 この映画が凄いのは、作画。それも半端じゃない28年に渡って製作されただけあってアニメーションは凄まじい。カートゥーンのような安直なギャグの表現を極限まで滑らかに描いたかと思えば、レコンキスタの頃のスペインの宮廷を想わせるアラビアらしい背景美術まで描かれている。しかも、それらが違和感なく物語に溶け込んでいるから、常に目が離せない。

 個人的に最も凄いと感じたのはここ。
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 目が錯覚を起こした時の幻覚をアニメにしたような映像。宮廷を舞台に繰り広げられるここのシーンは、見栄えすると同時に目が痛くなります。『ロジャーラビット』の冒頭でロジャーが掃除機を吸い込んだ後のシーンや、『ラガディとアンの大冒険』の階段のシーンよりも躍動的です。本作品の背景美術の担当者は、『眠れる森の美女』でも背景美術に関わったチェコ人アニメーターのカレル・ゼマン(超現実主義の彼の作風とは全然違うのによく引き受けたな.....)

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靴職人のタック(右)。口の動きを釘で見せているのが可愛らしい。

 ディズニーの摂理とは相反するアニメーション。悪党の表情、王女の衣服の動き、タックの行動力と可愛らしさなどを演出する作画は、D社やワーナー、MGMとも違いどこか艶めかしくて魅力的。

 青顔の魔術師・ジクザクも典型的な悪役だけど憎めない。英語版ではホラーやサスペンス映画で名を馳せていた名優ヴィンセント・プライス、吹替版ではドラゴンボールのピッコロ大魔王や、ちびまる子ちゃんの友蔵、アニメ版バットマンでのジョーカーを演じた青野武氏。邪悪そうな声、滑らか過ぎる腕や足の動き、感情によって変わるカラフルな肌。どこをとっても素晴らしい。

 逆に、演技と作画とは違い物語は平凡そのもの。ただ、演出が際立っているので退屈はしない。実際ディズニーのアラジンも音楽とジーニー抜いたらそう変わらないでしょ。軍隊が登場したり、執念深く泥棒やジクザクがつきまとうものの、物語としてはやはり微妙。

アラベスクな世界観の冒険活劇が見たい方にはお勧めの一作。
 

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