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放浪の音楽家Caravanが語る、ステレオタイプな音楽活動への疑問

放浪の音楽家Caravanが語る、ステレオタイプな音楽活動への疑問

Caravan "The Harvest Time" TOUR 2018
インタビュー・テキスト
兵庫慎司
撮影:馬込将充 編集:山元翔一
2018/01/11
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メジャーもインディーも既存のCD流通は使わず、公式サイトのネット通販と、自身が直で取引できる一部の店舗でしかCDを販売しない。ダウンロード販売もやらないし、ストリーミング配信サービスにも参加しない。2012年にメジャーを離れて以降、Caravanはそのような形で活動を行っている。

今やDIYで活動しているアーティストはめずらしくないが、ただしその場合も、たとえばCDの流通は既存のインディーの流通会社を使っているとか、たとえばマネージメントは自身だが楽曲の出版権の一部は〇〇社に預けているとか、そういうふうに活動の一部分は既存の業界のシステムを使うのが普通。Caravanのように本当に100%インディペンデントな形を貫いてそれを行っている例は、毎年日比谷野外大音楽堂でワンマンを切り続けられる規模のアーティストとしては稀だと思う。

Caravanのその徹頭徹尾DIYな姿勢は、そのまま彼の音楽に跳ね返っているし、逆に言うと、そういう活動を選択することを、彼の音楽が求めているということでもあるのだと思う。2017年11月15日から販売が始まった4年半ぶりのフルアルバム『The Harvest Time』の話も含め、どのようなキャリアを経て現在のそのやりかたに辿り着いたのかを訊いたインタビューをお届けする。

いわゆるメジャーの、新人発掘からデビューして売れるまでの一連の流れに疑問を感じた。

—まず、Caravanのこれまでの活動の変遷を伺いたいのですが、インディーズデビュー前の時期に、いわゆるメジャーの業界的な経験があるんですよね。

Caravan:そうですね。最初、高校の同級生とずっとバンドをやっていたんですけど、就職や結婚で、ひとり辞め、ふたり辞め、みたいになって空中分解して。当時自分はギタリストだったので、いいボーカリストを見つけて、新しくバンドを組もうなんて考えていたんです。20代中盤は、まだそんなことを考えるような人間でしたね。

Caravan
Caravan

Caravan:それで、ボーカリストを探すために、デモテープを作って事務所に送ってみようと考えたんです。リハスタに置いてあった『Musicman』(音楽業界各社の連絡先などを網羅した本)って分厚い電話帳みたいなのを見たら「デモテープの送付先はこちら」みたいな一覧があって、所属アーティストを調べて「ここはカラー的に遠くないんじゃないかな」って思った会社に送ったら、すぐに返事が来たんですよ。社長から電話が来て、「一度会おう」って。で、その事務所に所属することになり、曲をいっぱい書いたりして、聴いてもらっていたんです。

—デモ作りの延長で、シンガーソングライターとしての活動に切り替わっていったんですね。

Caravan:そうですね。事務所に所属して、最初は「あ、いいね」って言ってくれていたんだけど、だんだんと「もうちょっとポップな曲を書いてよ」っていう空気になっていって。メジャーレーベルの契約もなかなか決まらないし、「お荷物」っぽくなっていっちゃったんですね。それで、居場所もないし、やりがいも感じられなくなってきて、「ここで上手くやっていかなきゃいけないんなら、俺は無理だな」と思いました。

でも一方で、音楽のやり方って、もうちょっといろんな方法があるんじゃないかって、その頃から考えていて。いわゆるメジャーの、新人発掘からデビューして売れるまでの一連の流れに疑問を感じたというか。「これってちょっと変なんじゃないの?」って思っていました。

Caravan

Caravan:そもそも、自分の好きな音楽はそういうものとは違うというか……ライブハウスに限らず、横浜あたりのバーとかには、すごくいいミュージシャンがいっぱいいるんですよ。そして、そういう人たちには、ラジオやテレビでは一切流れなくても、すごく熱心なファンが必ずいる。当時の自分の置かれている状況を見つめ直したとき、「あの人たちは決してこういう活動をしてないよな」と思ったんです。

そういう、戦略とかじゃない部分で、もっとリアルな音楽の浸透の仕方もあるよな、どちらかというと俺はそっちなんだろうな、っていうのは思っていました。そんなこともあって、事務所を逃げるようにドロップアウトして。

—メジャーの世界のルーティーンに対する疑問を抱えて、事務所を飛び出したと。

Caravan:そうです。それで、自分でCD-Rを作って、クルマに積んで、手売りしながら全国を放浪する生活をはじめました。あてもなくライブをさせてくれそうなところに行って、そのお店の紹介で隣町でライブさせてもらって、夜はそこに泊めてもらって。そんな時期が1〜2年あったんですけど、これが結構はちゃめちゃで、浜松に行って、次の日新潟で、その次の日は清水に戻って来る、みたいな感じで(笑)。

Caravan

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リリース情報

Caravan『The Harvest Time』
Caravan
『The Harvest Time』(CD)

2017年11月15日(水)発売
価格:3,240円(税込)
SFMC-005

1. Astral Train (Instrumental)
2. Retro
3. Heiwa
4. Travelin’ Light
5. Rainbow Girl
6. モアイ
7. Chantin’ The Moon
8. Yardbirds Swingin’ (Instrumental)
9. Maybe I’m a Fool
10. Stay With Me
11. Future Boy
12. おやすみストレンジャー
13. 夜明け前
14. In The Harvest Time

イベント情報

『Caravan "The Harvest Time" TOUR 2018 Release Party』

2018年1月28日(日)
会場:神奈川県 CLUB CITTA'
出演:
Caravan(Vo,Gt)
宮下広輔(Ps,Gt)
高桑 圭/ Curly Giraffe(Ba)
椎野恭一(Dr)
堀江博久(Key)
料金:前売5,000円(ドリンク別)
※振舞い酒あり(サッポロ生ビール黒ラベル)

『Caravan "The Harvest Time" TOUR 2018』

2018年2月3日(土)
会場:茨城県 古河Cafe Lounge BEEP

2018年2月9日(金)
会場:奈良県 奈良カナカナ

2018年2月11日(日)
会場:高知県 蛸蔵

2018年2月12日(月・祝)
会場:香川県 高松umie

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プロフィール

Caravan(きゃらばん)

1974年10月9日生まれ。幼少時代を南米ベネズエラの首都カラカスで育ち、その後、転々と放浪生活。高校時代にバンドを結成、ギタリストとして活動。2001年よりソロに転身。全国を旅しながらライブを重ね、活動の幅を広げてゆく。2004年4月インディーズデビュー。2枚のアルバムを発表。2005年メジャーへ移籍。2007年マネージメントオフィス「HARVEST」設立。2011年までの間、年に一枚のペースでアルバムを発表してきた。一台のバスで北海道から種子島までを回る全国ツアーや、数々の野外フェスに参加するなど、独自のスタンスで場所や形態に囚われない自由でインディペンデントな活動が話題を呼ぶ。2011年には自身のアトリエ「Studio Byrd」を完成させ、2012年プライベートレーベル「Slow Flow Music」を立ち上げた。Caravanも含めたった3人でマネージメントとレーベルを運営しインディーズ流通すら使わず、メディアにもほとんど露出しないその独自なスタンスも注目を集めている。独自の目線で日常を描く、リアルな言葉。聞く者を旅へと誘う、美しく切ないメロディー。様々なボーダーを越え、一体感溢れるピースフルなライブ。世代や性別、ジャンルを越えて幅広い層からの支持を集めている。

関連チケット情報

2018年1月28日(日)
Caravan
会場:CLUB CITTA’(神奈川県)
2018年2月3日(土)〜2月4日(日)
京音-KYOTO-2018
会場:磔磔/KYOTO MUSE(京都府)
2018年2月9日(金)
Caravan
会場:カナカナ(奈良県)
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