長いです。笑。
twitterで議論が盛り上がってしまったので、改めて整理しようと思い、今日の記事をば。
創作における「言語化」と「フォーマット化」の話です。
創作活動は「どうすれば上達できるのかわからない」と悩んでいる人が多いように感じます。
では、それはなぜなのか?
筆者が創作関係の知人などと話す中で感じたのは、ご自身の創作活動の「言語化」と「フォーマット化」が不十分だからではないかということでした。
今回は創作力上達のために、なぜ「言語化」と「フォーマット化」が必要なのか? その2つは具体的にどうやればいいのか? このあたりについて書きたいと思います。
まず「言語化」について。
これは文字通り、自分自身の活動を言語化することです。
では、具体的に何を言語化すれば、創作力の上達につながるのでしょうか?
それは、ビジネスの世界でいう「PDCAサイクル」です。
PDCAサイクルの4つのアルファベットには、
- P:計画
- D:行動
- C:振り返り
- A:改善
といった意味があります。つまりPDCAサイクルとは、
「常に何が必要かを考え(P)、それを実践し(D)、結果を反省し(C)、それを改善する(A)」
サイクルのことです。もっと簡単にいってしまえば、ただがむしゃらに努力するんじゃなくて、努力すべき内容を考えながら努力しようね、ということですね。
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自らの活動を言語化しないリスクはなにか? それは以下の3つです。
- 努力のベクトルを外す(努力の方向性が違う)
- 努力の内容を外す(努力の効率が悪い)
- 努力の結果に納得感がない(努力の成果が無に帰す)
1について。
ただがむしゃらに努力するのは、極めて非効率です。なぜか? 努力が的を外す可能性が高いからです。本来は腹筋を鍛えなければいけないのに、腕立て伏せをしても意味はありませんよね。
そのため、自分の創作活動をきちんと分析して「今の自分にはどんな知識やスキルが足りないのか?」を言語化することが大切です。そうして努力の方向性をしっかりと見極めましょう。
2について。
努力の方向性を正しく見極めたとしましょう。腕立て伏せではなく、やるべきは腹筋だときちんと認識できた状態です。
ですが、そこで「よし! 今日から毎日腹筋を100回やろう!」と決断してはいけません。理由は、それがあなたに適した方法とは限らないからです。
腹筋にも種類がたくさんあります(普通の腹筋以外に斜め腹筋とか)。また器具やプロテインの使用の有無なども関係してきますね。こうしたさまざまな要素を踏まえた上で「どんな努力をすべきなのか」をきちんと考える必要があります。
自身の改善点をきちんと認識して言語化できていれば、努力の内容を誤るリスクを減らせます。
3について。
仮にただがむしゃらに努力した結果、1と2の壁をクリアしたとしましょう。つまり山勘で「鍛えるべき場所」を「採るべき方法」で鍛えることができた状態です。
では、それでいいかというとよくありません。なぜか? 本人に納得感がないからです。
納得感がない知識やスキルは、よほど意識して維持しようとしないと自然と衰えていきます。なぜなら丸暗記で勉強するのと同じだからです。腹落ちしていないので記憶にも定着しませんし、応用力も利きません。
これはなにを意味するのかというと、スキルに実用性がないため、使う場面がないということです。なぜか? 覚えた状態のコピペという形でしか使えないからです。応用問題になった途端、丸暗記した公式が役に立たないのと同じですね。
だから、その力が衰えることはあっても(使わないので)、伸びることはありません(コピペなので)
ですが、身につけるべき知識やスキルは大量にありますし、どんどん増えていきます。だから一度身につけたものにそう簡単に衰えてもらっては困ります。故に納得感をもって知識やスキルを身につけることが大切です。
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では、次に「フォーマット化」です。
これは文字どおり、ある作業の手順をフロー化するなどして、定型化することです。
例えば、本ブログで以前、キャラクターを創造する4ステップという記事を上げました。あの中で書かせていただいた4ステップや、キャラクターを構成する要素などが「フォーマット」です。
(こちらです)
さて。なぜ「フォーマット」が大事なのか?
その理由は、以下の通りです。
- 取り組むべき作業が明確になる(作業効率向上)
- 必要項目を見落とすことがない(リスクヘッジ)
- 作品のクオリティが安定する
1について。
「キャラクター設定を考える時は、これをやればいい」などと指針が明確になるので、作業効率が上がります。
2について。
フォーマットの中に必要項目を網羅しておけば、油断して考え忘れてしまうなどのリスクが減らせます。
例えば「ストーリーを考える上では、こういう点を考えるのが大事」と気づいても、いざ創作に取りかかる時に意識できていなければ意味がありません。宝の持ち腐れです。
こうした大事な点をチェックリストのような感じでフォーマット化したとしましょう。ストーリーを考える時、そのリストを常に横に置いておけば、嫌が応でも意識しますよね。できあがったストーリーを見直しながら、チェックリストの項目が入っているか確認すれば完璧です。
もっとも、正直、筆者はそこまでやっていません(おい。笑)。ただ、プロットの冒頭に「注意事項」として特に意識しておきたい点は箇条書きにしてあります。そして定期的にそこを見直して、いま目の前にあるプロットがそこからずれていないかを振り返りながら作業しています。
3について。
2の点を踏まえた上で作業をしていれば、大切なことをきちんと押さえながら作業が行えます。それは言い換えれば、創作において必要な技術や知識を繰り返し使い続けられるということです。よって、スキルや知識のレベルが維持できます(退化のリスクを抑えられます)
そして、その下で書き上がった作品のクオリティも、行使すべきスキルによって生み出されているので、一定水準を保つことができます。
ただ、創作は「ネタを考える」→「プロットを考える」→「話を書く」といったプロセスを段階的に踏んでいくことが多いので(同時並行で行う方はあまりいらっしゃらないでしょう)、そこまでうまく話は進まないと思いますが。
余談ですが、筆者は各プロセスのスキルレベルをなるべく下げないために、最低でも2作を同時に動かすようにしています。1作が執筆の段階にたどり着いたら、そちらを書きつつ2作目のネタ出しに入ります。こうして各プロセスの間隔をなるべく開けないようにして、スキルレベルを維持するようにしています。
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では、それぞれ具体的にどのような作業が必要なのか、考えていきたいと思います。
まずは言語化。
創作駆け出しの頃は、以下の2つがいいと思います。
1:知人に感想を尋ねる
これが一番手っ取り早いですね。作品の良い点・悪い点を「自分で」言語化するのではなく「他人に」言語化してもらうのです。
いざ自分で自分の作品の良い点・悪い点を言語化してみようとしても、最初はなかなかうまくいきません。創作に取り組み始めたばかりの頃は特にそうです。なにを書いても面白く見えますから。笑。だから、客観的な他人の目を借ります。
また複数人から一気にコメントをもらえるため効率が良い点も、この方法のメリットですね。もっとも、知人に見せるのは恥ずかしいなどあるかもしれませんが・・・。
2:新人賞に応募する
レビューは編集者の客観的な評価、つまり編集者があなたの作品を「言語化」してくれたものです。これを参考に改善点を洗い出します。
駆け出したばかりの頃は、必ず「落選してもレビューをもらえる新人賞」に応募しましょう。狙いの賞でなくとも構いません。いきなり受賞できる自信があれば別ですが、もしそうでなければ、必要なのは「賞」ではなく「レビュー」です。そうして実力と自信をつけてから、自分と合っている・自分が狙っている新人賞に応募するほうが、最終的に近道ではないかと個人的には思います。
その上でオススメなのが、MF文庫Jライトノベル新人賞です。こちらは一次選考で落ちても、必ず3名の編集者の方からコメントをいただけます(数年前はそうでしたが、もしかして情報古いですか?)。大半の新人賞が1名ですから、これはかなり嬉しいですね。筆者も効率性を重視して、新人賞に挑戦し始めたばかりの頃は、MF文庫にばかり応募していませんでした。
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この2つを繰り返すことのメリットは、作品の評価ポイントを理解できることです。どんな評価項目があるのか、それぞれにおけるポイントはなんなのか? いろいろな評価の切り口が手に入ります。
では、これを理解すると、どんなメリットがあるのか?
それは「自分自身を客観的に振り返る目を養えること」です。
新人賞に応募できるのは、1年でせいぜい4回ほどでしょう。そして知人の強力にも限界があるとなれば、自分で自分をきちんと振り返ることができなければ、上達のスピードを上げられません。
ですが、自分自身を自分で客観視する=自分を「言語化」することができるようになれば、程度の差はあれど毎日が成長の機会となります。この違いはとても大きいです。
よって、駆け出しの頃は、
- a. 新人賞に応募してレビューを回収しまくる
- b. そのレビューから評価ポイントを学習し、自作を客観視する目を養う
- c. 言語化=PDCAサイクルのプロセスを開始する
という流れを踏むのが良いのではないかと、筆者は考えています。
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続いてフォーマット化。
筆者のプロットのフォーマットは、次のようになっています。
- タイトル
- 作品コンセプト
- あらすじ(300文字以内)
- ストーリーの概略(いつ、どこで、誰が、何をしているのか)
- キャラクター設定(以前に上げた記事の内容)
- 作中専門用語について
- 年表
(なお今回は最後の「年表」については割愛します)
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・タイトルについて
まんまですね。以上。笑。
・作品コンセプトについて
どんなテーマの作品なのか、要素の掛け合わせが書いてあります。拙作『高卒参謀長と《白鯨殺し》の少女』ですと「帆船ファンタジー×魔法×異世界転移」となっています。なにが売りなのかを明確にするために書き始めました。
・あらすじについて
最後まで書く必要はありません。簡単にいえば「読者に興味を持ってもらえるような作品紹介文300文字」です。面倒くさいので「あらすじ」と言っています。
これは絶対に300文字以内と決めています。なぜか? 個人的に「面白い作品はそれくらいの文字数でも魅力が十分に伝えられるはずだ」と考えているからです。
よって、300文字以内で魅力が伝わらなければ、基本的には作品のコンセプトから考え直します(もっとも、最近は趣味で好き放題に書いているだけなので、そこまでしませんが。苦笑)
・ストーリーの概略
作品の冒頭からラストまで、時系列でざっくりと概略を書いていきます。ここが最も力を入れるところです。
ここに関しては説明が面倒くさいので(おい)、筆者が『高卒参謀長と《白鯨殺し》の少女』を書いたときのプロットをアップするので、よろしければそちらをご覧ください。
ただ、同作を新人賞へ応募した段階の原稿では、ここに書いた概略から大きく変わった部分もあります。その点だけはご留意ください。
完成形は「小説家になろう」に掲載しているので、プロットと作品を比較されたい方はそちらをご覧ください。
(露骨な宣伝)
▼プロットにご興味ある方は、斧よりダウンロードしてください
https://www.axfc.net/u/3879303
※pass:cachiku
※2018/01/31 23:59:59に削除されます
・キャラクター設定について
以前記事にしたので、そちらをご覧ください。
(再掲)
・作中専門用語について
こちらもそのままなので割愛します。アップしたプロットにも書いてあるので、そちらをご参考までに。
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ざっと書いてきましたが、こんなところでしょうか。少しでも役に立ちましたら幸いです。
最後に身も蓋もないことを言ってしまいますと、ご自身が「楽しい」形で創作するのが一番だと思うので、あくまでもご参考までに・・・。
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(18/01/01)
放置していたtwitterアカウントを再始動しました。笑。
愚にもつかないラノベの創作論とか呟いています。創作畑の方のアカウントは、基本フォロバします。もしよろしければ、よろしくお願いいたします。
(露骨な宣伝)
120,000PV、ありがとうございます。