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【社会】

「成年後見利用で失職は違憲」 元警備員男性、国など提訴

 適切な財産管理をしてもらうために成年後見制度を利用した後、利用者の就業を禁じる警備業法に従って警備会社を退職せざるを得なくなった岐阜県の知的障害者が十日、勤務していた県内の警備会社に社員としての地位確認を、国に慰謝料として損害賠償百万円の支払いを求める訴訟を岐阜地裁に起こした。制度利用者の就業を認めない警備業法の規定は、職業選択の自由を保障した憲法に違反するなどと訴えている。 (井上仁、下條大樹)

 原告は三十代男性。代理人弁護士によると、軽度の知的障害などがあるが、二〇一四年四月、県内の警備会社に入社した。会社側も知的障害があることを理解して雇用したという。男性は各現場で主に、通行人や車の誘導をした。

 男性は家庭内のトラブルに悩んでおり、自身の財産管理をしてもらうため成年後見制度を利用することに。一七年二月、財産管理をする「保佐人」が付くことになり、翌月に会社を退職した。制度利用の手続き中に、警備業法の規定で、退職せざるを得ないことを知ったという。

 男性が退職を余儀なくされたことを弁護士が知り、男性に連絡。弁護団をつくって不当性を法廷で訴えることにした。

 男性側は訴訟で「成年後見制度は自身の財産管理を支援する制度で、その能力の有無や程度によって警備員の適性を判断する警備業法の規定には、合理性がない」と主張する。

 男性が勤めていた警備会社の担当者は「勤務態度も真面目で、辞めてほしくなかった」と話した。退職は「警備業法の規定があったため」とし、会社としても本意ではなかったという。

<成年後見制度> 認知症や知的障害、精神障害などによって、物事を判断する能力が十分でない成人に代わり、家庭裁判所に選ばれた親族や弁護士らが財産管理や契約などを担う制度。不動産や預貯金などの管理、介護などのサービスを受ける際の契約、遺産の協議などで、当事者が不当な不利益を被らないようにする。高齢化社会を迎えることから利用促進が期待されている。2000年に従来の禁治産、準禁治産制度を廃止して導入された。

 

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