2017年10月にデビュー45周年イヤーを迎えた、日本を代表するシンガーソングライター・さだまさし。歌手として活動をする一方、慈善事業にも力を注いでいる氏は、2015年に「財団法人 風に立つライオン基金」を設立。被災地へのチャリティー支援や、被災時に活躍する人材の育成などを行っている。
ボランティア活動などに意欲を注ぐさだ氏には、音楽界だけでなく、政財界から賞賛の声が送られている。ところが、「風に立つライオン基金」の理事の二人が、さだ氏の理念を不意にするような「不正」を行っていたことが発覚した。
<一人一人の小さな思いが、沢山の小さな生命を支えることを信じます。『風に立つライオン基金』はそのための組織です>
同基金の設立理念として、ホームページにはこのようなさだ氏のメッセージが掲げられている。さだ氏自身も理事に名前を連ねているこの財団には9名の理事がおり、代表理事にはY氏、副理事長にはF氏という人物が就任しているが、今回、「不正行為」を働いたのが、まさにこの代表理事のY氏と副理事長のF氏だという。
「代表理事のY氏は、さださんと同郷の長崎市出身。小学校も同級生の幼馴染で、芸能活動の拠点である『さだ企画』設立の時も、さださんの弟さんと一緒に設立メンバーに入っているほどさださんの信頼は厚い。
一方、副理事長のF氏は、財団設立前からさださんが被災地で行うボランティア活動を手伝っていました。彼も信頼が厚く、財団の実務はY氏とF氏の2人が仕切っています。さださん本人は、本来のシンガーソングライターとしての仕事が忙しい。2人はその信頼をいいことに、『不正行為』を行っていたのです」(財団関係者)
この不正について、組織内部でも問題になっているという。詳しく見ていこう。
まずは、「評議員会議事録偽造」についてだ。件の財団は、設立当初は「一般財団法人 風に立つライオン基金」という名称だった。それが、昨年7月18日に、一般財団から公益財団へと変更登記をしている。 「一般財団法人」と「公益財団法人」は、名前こそ二文字しか違わないものの、社会的にその信用度が大きく変わるという。同財団関係者が説明する。
「たとえば財団が寄付を集める際にも、『一般』と『公益』では集まりやすさが違うといわれています。また、適用される税制も大きく違う。一般財団法人の場合、すべての所得に課税されるのですが、公益財団法人の認定を受けると、課税対象は原則『収益事業のみ』になります。優遇措置を受ける反面、財団にはより透明性が求められることになります」
「風に立つライオン基金」も、おそらくは個人だけでなく企業など大口からの寄付も募りやすくするため、また税制優遇を受けるために「変更」を行ったのだろう。
だがこの変更に際して、ある「不正」が行われたのだという。同財団関係者が明かす。
「2015年に設立されたこの法人は、2年を経過した昨年6月30日に全役員の任期が切れることになり、法務局に理事・監事の変更をしなければなりませんでした。さきほど、7月18日に一般財団から公益財団法人への名称変更登記を行ったことを話しましたが、一方の役員変更手続きは10月13日に行っています。
その際、法務局には『公益財団法人変更登記申請書』を提出しなければならないのですが、このとき、『定時評議員会議事録』と『理事会議事録』の二つの議事録が必要になります。これは、役員変更に際して生じる重要事項について、財団内で『定時評議員会』と『理事会』を開いて、変更についての承認を得たことを証明するためです。
ところが、Y理事長はこの変更に際して、定時評議員会も理事会も開かなかったのです。そのうえで法務局に『議事録』を提出。開いていないものを『開いたこと』にしてしまったのです」