アリババが1日で2.9兆円を売り上げたカラクリ

独身者の日を盛り上げた影の主役「花唄(ホワベイ)」とは

2018年1月11日(木)

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中国のネット通販が最も盛り上がる11月11日。2017年、アリババの通販サイト「天猫(Tmall)」は開始からわずか3分で、取引額が100億元(約1700億円)を突破した(写真:Imaginechina/アフロ)

 中国インターネット通販で最大の商戦日「双十一(ダブルイレブン)」。11月11日と「1」が連続することから、中国では「独身者の日」とされる。これといって大きなイベントのないこの日を世界最大級のネットショッピングデーへと育て上げたのが、中国ネット通販最大手のアリババグループだ。2009年から始めた大セール「双十一」は、今では中国大陸だけでなく東南アジアや日本にまで広く波及してきた。

 2017年11月11日も若者を中心とした中国ネットユーザーたちは、熱狂の渦の中で我先にとセール品を買い漁った。アリババグループ全体の取引高はわずか24時間で1683億元(約2.9兆円)に達し、前年の1206億元を大きく超え、過去最高を更新した。

 このアリババグループの取引増の背景にあるのがオンライン決済システムである。ダブルイレブン一日の取引の90%がオンラインで支払われた。アリババのオンライン決済といえば、「支付宝(アリペイ)」が日本のメディアなどでも話題となっているが、その他に今回のダブルイレブンで存在感を見せつけた決済方法がある。

 同グループ傘下の金融サービス会社・螞蟻金融服務集団(アント・フィナンシャル)が手掛ける「花唄(ホワベイ)」だ。同社の発表によると、17年のダブルイレブンにおけるモバイル決済の約40%でこのホワベイが使用されたという。

ホワベイとは何か?

 アリペイが即時決済方式であるのに対し、ホワベイは後払い方式、つまりクレジット決済サービスである。

 中国語で、「花(ホワ)」は「消費する・つかう」という意味で、「唄(ベイ)」は文末に用いて「~すればいいじゃないか」という気持ちを表わす。つまり「花唄」には、「(いまお金持っていなくったっていいじゃない)使っちゃいなよ」といった意味が込められている。

 具体的には、実際に消費した月の翌月10日以前に返金すれば無利子で利用できる。金利負担は生じるが、3回、6回、9回、12回の分割払いも可能である。

 ホワベイが使用できるかどうか。使えるとしてもいくらまで使えるか(通常は500元~5万元のクレジット限度額)は、ユーザーごとに異なる。ネット通販やアリペイの使用状況、「芝麻(ゴマ)信用」(注)のスコアなどを基に、システムが自動的に評価する。なお2018年1月現在では、申請条件として「中国大陸の実名登録ユーザー」とあるため、中国に住んでいても外国人は使用できない。

(注)芝麻(ゴマ)信用とは、個人情報や信用履歴などのビックデータを基に計算される信用ポイントで、現在では中国内で広く活用されるようになっている。例えば、信用ポイントが一定基準を超えると、ホテルやシェア自転車のデポジットが不要になったり、消費者金融でお金が借りやすくなったりする。また、婚活サイトで相手を選ぶときの一つの基準にもなっている。

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「アリババが1日で2.9兆円を売り上げたカラクリ」の著者

西村 友作

西村 友作(にしむら・ゆうさく)

対外経済貿易大学 副教授

1974年熊本県生まれ。2010年に中国の経済金融系重点大学である対外経済貿易大学で経済学博士号取得後、日本人としては初めて同大専任講師として正規採用される。2013年1月より現職。日本銀行北京事務所客員研究員。専門は中国経済・金融。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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