人間が頭の中で考えた架空の場面が、自然界の中で実際に出現することがある。
その実例がスペイン北東部のコスタ・ブラバで起こった。ホシムクドリの大群がある写真家の目の前で、自分たち自身の姿を形づくってみせたのだ。
写真家が偶然に撮影
ホシムクドリは、ハヤブサやワシといった天敵が近づくと、まるで巨大なアメーバのように群れをなして飛ぶ習性がある。自由に形を変えるムクドリの大群は、それ自体が一つの意思を持っているように見える。
そんなムクドリの群れを撮っていたドイツの写真家Daniel Biberさんは、鳥の大群が鳥の形をつくるという珍しい瞬間を撮影し、国際的な写真賞の一つであるエクスポージャー賞を受賞した。
写っていることを知らなかった
海外メディアによると、受賞作品は、撮影現場では気が付かず、後でコンピュータでチェックした時に貴重な一枚であることが分かったそう。
「家に帰って撮った写真をコンピュータでチェックして、ムクドリの群れの形に初めて気がついたんです。現場では撮影することに集中していたので、空に大きな鳥の形が出来ていたことに気づきませんでした」(Biberさん)
忍耐の賜物
Biberさんは、奇跡的な一枚について海外メディアにこう語っている。
以前からムクドリの群れを撮ってはいました。けれど、どうしても思ったように上手く撮れなかったんです。
それで、ムクドリの群れが方向転換してダイナミックに形を変える場所を、しかも背景が写真作品として美しい場所を、時間をかけて探しました。
そのスポットに4日間連続で通って撮ったうちの1枚が、今回受賞したのです。
鳥の形を捉えたのは幸運だったのかもしれないが、その幸運を呼び込んだのは努力と忍耐だったといえよう。