【バンコク=新田裕一】ミャンマー国軍司令部は10日、同国の治安部隊がイスラム系少数民族ロヒンギャの住民10人を拘束後、虐殺していたことが判明したと明らかにした。治安部隊を束ねる国軍が、自ら迫害行為を認めたのは初めて。欧米や国連は治安部隊によるロヒンギャ迫害を指摘しており、ミャンマーに対する国際的な圧力が強まるのは必至だ。
国軍司令部が10日、フェイスブック上に投稿した声明で明らかにした。2017年12月、ロヒンギャの武装集団と治安部隊が衝突した西部ラカイン州の村で10人の身元不明の遺体が見つかったことを受け、国軍が調査を開始。国境警備隊の構成員4人が殺害に関わっていたことが分かった。
声明によると、10人が殺害されたのは17年9月初旬。8月下旬に治安施設を襲撃したロヒンギャ系武装集団に対し、治安部隊が掃討作戦を展開していた時期にあたる。国軍司令部は虐殺に関与した者を「交戦規定を定めた法に基づいて訴追する」としている。
虐殺が起きたのはロヒンギャと地元仏教徒の村が混在する地域。ある村で仏教徒の住民が殺害される事件が発生し、9月1日に治安部隊が介入した。その際に拘束した10人が武装集団との関係を認めた。翌日、墓地に穴を掘り、10人に入るよう命じた上で射殺した。
規則では最寄りの警察施設に連行することになっていたが、移動手段である船が破壊されていたため、現場の部隊が殺害を決断したという。
国軍は11月中旬、迫害疑惑に関する内部調査の結果を公表し「治安部隊が無実の住民を殺害したり、性的暴行を加えたりしたことは一切ない」としていた。
今回の発表には、仮に違法行為があったとしても、あくまで国軍司令部による組織的な指示ではないことを示す狙いがありそうだ。欧米や国連は、治安部隊が組織的にロヒンギャ住民を迫害しているとし、掃討作戦が「民族浄化」にあたると非難している。
国連の推計によると、治安部隊の掃討作戦を受けて隣国バングラデシュに逃れた難民は65万人以上に達する。11月に締結したミャンマーとバングラの二国間合意では、18年1月下旬から難民帰還を開始するとしている。