マンガアシスタントについてのブログ

カクイシシュンスケのブログ。マンガ家のアシスタントという仕事について主に書いていきます。

三田紀房先生に残業代を請求したことについて

私は大学卒業後、マンガ家の三田紀房先生のもとでアシスタントをしていました。

記録によると平成17年9月5日から平成29年4月27日まで、11年と7カ月です。

かなり長いこと働いていました。

その間、楽しいこともあったし、いやなことも少しはあったような気がしますが、だいたい平和な11年7カ月であったと思います。

それは職場の人間関係が落ち着いていたことに加えて、業界の水準に比べても三田先生の職場が時間にきっちりしていたことが大きいと思います。

完成するまでとにかく徹夜と残業で乗り切るといったようなマンガ家の職場としてよくあるようなルーズさはありませんでした。だからこそ11年7カ月の間、落ち着いて仕事を続けられたのだと思いますし、業界の良くない慣習に流されずそうした職場をつくったことは三田先生の手腕だと思います。

しかし、です。

業界の水準よりはずっとましではあるものの、完全にホワイトかと言われるとそうではありませんでした。労働基準法にきちんと則った職場であったかというと、そうは言えないでしょう。

news.yahoo.co.jp

上の記事に、「現在、三田のアシスタントが働くのは9時30分から18時30分まで。休憩は自由にとることができるが、残業は禁止されている。」とありますが、これはちょっと嘘じゃないですか?

残業は今までさんざんしましたよね?

徹夜は11年7カ月の間、1日たりともなかったです。でも、業界の水準に比べたらずっとましとはいえ、残業は毎週していたじゃないですか。私が退職した後、さらに業務改善されて残業ゼロになったのでしょうか?だったら、そのように書いてほしいものです。まるで昔からなかったかのように読めてしまいます。

あと、自由に休みをとって良いというのも、言葉からイメージされることと実際はずいぶん違いますけど。休憩はあったじゃないですか。15時00分から15時15分くらいまでの10~15分間だけ。そこで簡単な昼食を各自とって、また描き始めるわけです。休憩を自由にとることができるというのは、トイレに行ったりコーヒーをいれに行ったりすることのことですか?それも休憩と言えば休憩かもしれませんが、ものの数分ですよね。喫煙者の先輩は15時からの15分休憩以外にも日に1回、タバコを10分ほど吸いにいっていましたが、せいぜいそのくらいであって。基本的にずっと描いてましたよ、我々は。労働基準法から言えばこの休憩時間の設定は違法ですが、別にそれがきつかったわけではなく、慣れればどうってことなかったとはいえ(さすがに週の4日目、木曜にもなると疲れがたまっては来ます)、なぜ実際と違うことを書くんでしょうか。

 

で、週4日勤務のうち、月曜から水曜は記事のとおり9時30分から18時30分できっちりしていましたが、木曜はほぼ毎週残業していましたよね。木曜は18時で一度20~30分ほどの夕食休憩をとり、その後22時、23時まで我々アシスタントは残業するのが常だったじゃないですか。24時過ぎたことだってありましたよ。25時までやったことだってありました。

 

そしてその残業代は全く支払われていませんよね。11年7カ月の間、一度たりとも。

 

私はそのことに納得はしていません。なので、思い切って残業代を請求することにしました。残業代の請求に関しては、この記事を読む前からずっと考えていたことです。

どうすればマンガ家のアシスタントがもっと働きやすくなるのか?

長時間労働を是正することができるのか?

そういうことを考えた時に思いついたことの一つが、マンガ家に対して残業代を請求してそれをネットに書くということです。幸い、三田先生の職場はタイムカードを導入していたので、出勤・退勤時刻は正確に記録が残っています。改ざん一切なしの記録があるのだから使わない手はありません。このことがどの程度、今後の業界に影響するかはわかりませんが、やらないよりはましです。

それと、残業代とは別のことで納得いってないことがあります。

それは記事の中にも出てくる作画を外注するデザイン会社とも関係することです。その会社を仮にA社とすれば、A社とは『インベスターZ』での作画をお願いしていた会社ですよね。

私はA社に対して悪い印象はありません。マンガ家から作画を請け負って描くということをやっている会社はそうないでしょうから、頑張ってもっと業界内で有名な存在になってほしいと思っています。マンガ家とアシスタント(的な存在)の関係性において選択肢が増えるのは良いことだと思いますので。

でも正直言ってA社の技術だと描けない部分もそれなりにあり、『インベスターZ』の作画でポイントとなる大きなコマは我々アシスタントが描いたりすることが多かったですよね。

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〈Ⓒ三田紀房『インベスターZ』13巻/講談社(モーニング)〉

上の絵などは私が資料画像を検索して集めて、下描きをし、ペン入れしたものをA社がトーン処理したわけです。

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〈Ⓒ三田紀房『インベスターZ』16巻/講談社(モーニング)〉

この絵も真ん中のチャンピオンベルトの男の顔は先生がペンを入れてますが、首から下は私が下描きしてペン入れしたものです。後ろの人物も私が顔も含め皆描きました。A社はトロフィーとチャンピオンベルト、Kenのロゴ、日の丸、足下の影の線、背後に少し見えるリングのロープ、あとはトーン処理です。靴のデザインもA社かもしれません。

我々アシスタントはヤングマガジンで連載していた『砂の栄冠』を描く仕事がありますから、それをいったん止めて、『インベスターZ』の絵を描くわけです。大抵は私、O先輩、H先輩で描いていました。それなりの時間をとられます。遅れた分は前述のとおり木曜に残業です。でも残業代は出ません。

で、三田先生は言っていましたよね。A社には作品がヒットした時はそれに応じてインセンティブを渡す契約をしている、だから作品がヒットするとA社にとっても大きいんだと。それに、今のところアシスタントを雇うより外注先に支払う額の方が高い、とも。

我々は一度もヒットに応じたインセンティブなどもらったことはありません。

ドラゴン桜』の頃も年二回の賞与が特別多かったという記憶はありません。

なぜA社にはそうした報酬を渡せて、我々アシスタントにはなかったのですか?A社と我々アシスタントでは技術的には我々が上でした。だからこそ上の絵のように全てA社に任せるのではなく我々が受け持つ部分もあったのでしょう。なぜ技術的に上である我々アシスタントの報酬がA社より下なのですか?

結局のところ、立場が強いのはマンガ家の方なんだからアシスタントがインセンティブをよこせと言ってくるはずがない、言ってきたとしてもどうとでも言いくるめられる、というのが理由ではないでしょうか。それ以外に正当な理由があるのならぜひとも教えていただきたいものです。払いたくないから払わなかった以外の理由があるのなら。ないでしょうけど。

そういう意味でも私は残業禁止だとかメディア上で発言することはいかがなものかと思います。

私たちはあなたのマンガのために働いてきました。残業もさんざんしました。その働きを最初からなかったかのように吹聴するのは一体どういうことなのでしょうか。

mitanorifusa.com
こちらの記事ではマンガ家の公務員化などと言っていますが、公務員と言っても業界の水準よりは時間に正確というだけですよね。

平成17年に三田先生のもとで働き始めた時は、私の記憶が確かなら月給13万円からのスタートだったはずです。11年7カ月で10万円ほどアップし、最終的な私の月収は23万円でした。賞与も含めたらどうにか300万円超えるといったところでしょうか。公務員とは程遠い収入です。売れてるマンガ家のもとで働いてもこのくらいの給与ではアシスタントは希望や自信が持ちにくい職業だと思います。マンガ家として独り立ちするというだけでなくアシスタントの技術をきちんとプロの技術と認めて、アシスタントとして稼ぐという道をもっとつくらないことにはマンガ業界の長時間労働は是正されて行かないと私は思っています。

そのために私が今できることの一つがマンガ家に残業代を請求し、それをこうしてネットに書くことです。

昨今、SNS上で出版社のやり方を批判するマンガ家は多いですし、その批判には納得できるものも多いです。しかしマンガ家もアシスタントに対して改めなければいけない部分が山のようにあるのではないですか?なぜマンガ家はアシスタントにさんざん徹夜や残業をさせても手当を支払わなくていいような慣習が未だにあるのですか?おかしいでしょう。そういうおかしなことは徹底的に批判して改善していくべきだと思います。残業代もその一つです。

業界でもマシな方の三田先生のところで残業代を請求するなら、もっとひどいウチで請求してみたってバチは当たらないよなと行動に出るアシスタントが少しでもいたらいいなと思っています。ただ、他の職場でタイムカードを導入してることは少ないでしょうし、そもそもマンガ家とアシスタントの間には圧倒的な立場の差があります。実際に残業代を請求しようとする人はまれでしょう。ただ、出勤・退勤時刻と休憩時間をメモして証拠を一応残しておいてもいいと思いますし、試しに先月の残業代をざっくりと計算してみるのもいいと思います。そうやって自分は本来これくらいもらってもいいはずなのかとか、残業代って請求してもいいんだとか、少しでもマンガ制作に携わる人の意識が変わっていってくれたらなと思ってこういうことをしています。マンガ家の先輩方からしたら余計なこと言ってんじゃねえって感じでしょうけど知りません。それと、私は立場の弱いアシスタントではなく使用者として強い立場にいるマンガ家の方が本来は積極的に意識を変えていくべきだと思います。

三田先生、残業代を支払っていただけませんか?

記事の中でご自分のされていることを「一種の社会貢献」とおっしゃっていますよね。アシスタントの労働力をさんざん搾取してきたマンガ家が、アシスタントに残業代を請求されてきちんと支払うというのも一種の社会貢献ではないですか?「若い人たちに見せて」いくべきことではありませんか?

ぜひとも支払っていただきたいです。よろしくお願いいたします。

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  • mon

    肝心の契約内容も示さずによくこんなこと書けるな。

    佐藤秀峰への反応も泣き事言ってるだけ。
    能力も気概もないのに金だけは欲しいですってそんなの通用するわけないだろ。雇用主はお前のママじゃないんだよ。
    Other読んだけど、11年もアシスタントであんなつまんない漫画描くって、お前才能ないからやめちまえよ。

  • 通りすがったプーさん

    sinさん。仮の話として、雇用主である三田先生がカクイシ先生ら被雇用者と労使契約を締結するにあたり、『木曜日のみ残業できる日なので見做し分として基本給に定額の残業費を加算済みした設定で被雇用者に同意を請う』とか『定時を超過した時間分の手当を残業代という名目で出さない代わりに相応の賞与や昇給といった報酬で還元することを労働者から事前に承諾を取っていた』場合、明細には残業代と記載されてなくても月々の給与の支払いや賞与の授与や昇給が定期的に滞りなく行われていれば、カクイシ先生は三田先生から月々ないし定期的に一括で支払われていた残業代を受け取っていたとも判断できます。

    また、雇用契約を結ぶにあたり、定時からの超過分を15分や30分刻みでいくら払うと前もって両者間で取り決め済みなのならともかく、そうでない場合法的機関を経由したり具体的に概算した不足分を提示しないまま、ただ残業代をくれと言っても果たして相手にしてくれるのか?と私は疑問に思います。
    実態が設定に到底見合わないとか、事前に見做し残業代を固定給や賞与に組み入れた事情を雇用者が説明せず被雇用者を騙し討にしたみたいな事実がない限り、「残業代としては支給してないが、相応分を別な形でちゃんと支払っている」と三田先生が約款まで出して釈明でもしようものなら、カクイシ先生の訴えの方が法的に不当と判断されかねません。
    何故なら初任給こそ13万円とはいえ、年1万円前後の昇給や数ヶ月分の賞与も支給され、さらには週一日残業すればあとは定時で退社できしかも週休3日制で年間160日以上の休日もある。こういう条件だけ見れば事実に然程沿わない面があったにせよ出版関係の個人経営の零細企業勤めにしては業種や規模を考慮すると破格の厚遇だからです。しかもカクイシ先生は表立って正当な争議権も三田先生に対して行使せず、11年7ヶ月も一緒に机を並べて働いていた訳です。

    入社当時ならいざ知らず、10年経って中堅社員として活躍しながらも社長に対して文句の一つも言って残業代をいくら貰うか払うかの取り決めすらできなかったのか?零細勤めで毎日社長と顔合わせて仕事してる私には疑問でなりません。交渉できないほどおっかない人間がトップにいるような職場に10年以上居れた感覚もよくわかりません。

    残業代をきちんと支払われる環境造りは絶対大事だと思います。ただしカクイシ先生と三田先生の間のケースの場合、実際労務規定がどのように記されていてどういう条件で雇用締結へ至ったのか、その具体的な内容と証拠によっては残業代の請求自体が法的に不当と判断されかねない余地が多分にあります。同業他業種問わず「残業代という名目ではなくてもそれに代わる相応な報酬はちゃんと貰っておいて、辞めてから半年以上経った今になってさらに図々しく残業代も頂戴しようとしてるのか?」と、カクイシ先生の勇気ある行動が歓迎されるどころか心象悪く見られかねないとも私は危惧しています。

    正直私も応援したいと思いつつも、纏まったお金が必要な事情でもあって、前職場と元上司がマスコミに取り上げられてたからそれにかこつけて適当に大義名分を掲げているだけなのではないか?と少し猜疑心を抱いています。

  • sin

    もし週休3日制の週32時間勤務だからと言って残業代が支払われないなら、元々週休2日の社員が何かの都合で週休3日に変更した場合、残業代を支払わなくても良くなってしまいます。

    週休3日制を(1日の勤務時間を延ばさず)採用する場合、基本給などの固定給そのものを下げて対応します。

    その際も、時給換算額を下げては不利益変更になるので、あくまで時給換算額は下げずに、です。

    今回は月収23万という額そのものが最初から1日8時間週休3日での給与、というだけなので、もし残業代を払わないようにするのであれば、木曜のみ所定労働時間を延ばし、基本賃金をその分上げるよう契約を変更する必要があります。

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そもそもなぜアシスタントは低賃金・長時間労働なのか

マンガ家のアシスタントは大抵の場合、低賃金で長時間労働です。

マンガ業界に身を置いてない人でもネット上のマンガ家アシスタント募集掲示板を見れば、その一端が垣間見えるかと思います。誰でも見られます。

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だいたい一日10~12時間労働で時給1000円というのが募集掲示板から見てとれるおおまかな相場と言って良いのではないでしょうか。残業代・深夜手当について明記されてる求人はほとんどありません。また、「経験者優遇」と書かれてることも多いですが、何をどう優遇するか明記されてる求人は見たことがありません。

マンガの絵を描くというのは何の技術も持たない人がすぐに描けるようになるようなものではありません。絵の素養がある人がそもそも少ない上に、実際にモノになる人はもっと少ないでしょう。貴重な技術を持ったアシスタントの給与相場が時給1000円というのはあまりにも安すぎます。東京都の最低賃金は2018年1月現在、時間額958円です。

ではなぜ低賃金なのかと言えば、それは使用者(雇用主)であるマンガ家の収入が少ないことに一つの原因があるでしょう。

マンガ家の収入は原稿料と単行本の印税が主で、原稿料はアシスタントの人件費に消えて印税でカバーするなどとよく言われます。

この原稿料がとにかく安いのです。

私は2004年、2007年に週刊少年ジャンプの増刊号にあたるマンガ誌に読み切りが掲載されたことがありました。その時の原稿料は1ページ1万円に満たない額でした。現在、ヤングアニマル嵐という青年マンガ誌で連載をしていますが、その原稿料もジャンプ増刊と同じ額です。おそらく少年誌・青年誌の原稿料の最低ランクはその額に設定されているのだろうと思っています(もっと安い少年誌・青年誌がないとは言い切れませんが…)。

1ページ1万円に満たないということは月に20数ページ~30ページ描く連載でも源泉徴収を差し引けば月収30万どころか25万円ちょいといったところです。その月のページ数によってばらつきはありますが、印税を除いた原稿料だけなら月収20万円台ということになります。

一方でマンガを描くというのは非常に手間がかかるものです。少しこだわりを強くしようと思えばどんどん作画時間は増えていきます。しかしその作画を部分的にアシスタントにお願いする場合、この少ない月収の中から支払わねばならないわけです。

隔週ペース、週刊ペースとなればページ数は月刊よりも増えるわけですが、収入が増えるかわりに、制作ペースが早まる分、自ずとアシスタントを雇う人数、日数は増やさなくてはいけなくなります。

マンガ家の原稿料はマンガの絵に対する対価と物語(脚本)に対する対価という「報酬」という側面だけでなくアシスタントの人件費を含めた「制作予算」でもあるはずです。にもかかわらず報酬+制作予算としてあまりにも低すぎる金額と言わざるを得ません。月刊、隔週、週刊、いずれも何の実績もない新人の原稿料は一万円に満たない額だとすれば(少女誌やネット媒体はもっと少ないと聞きますが実際の額は私は知りません)、その額はアシスタントの人件費も含めた金額としては設定されていないわけです。

その少ない原稿料からアシスタントの労働条件を無理やり導き出したのが一日10~12時間労働、時給1000円という相場なのだろうと思っています。

しかし収入が少ないからと言って労働基準法を無視し、従業員であるアシスタントの労働条件を厳しくしていいのでしょうか。元手が少ないんだから仕方ないなどと正当化できるものではないはずです。元手が少ないなら少ない範囲で制作するのが本来の筋でしょう。

私は原稿料を決めている出版社の責任が最も重いのは当然として、マンガ家たちにも同様に責任があると思っています。

ネット上などでイラストレーターの方が絵についてよく知らない依頼主にあまりに低いギャラを提示されて憤慨したという話を目にすることがありますが、私は絵についてプロであるマンガ家たちもアシスタントに対して同じことをしていると考えています。経験者優遇と求人に書いているマンガ家は一定以上の技術を持つベテランアシスタントにはいくら払う用意があるのでしょうか。時給1000円と明記されてるところからいくらアップするつもりなのでしょうか。時給1100円でしょうか。1200円でしょうか。仮に時給1200円であっても8時間以降の時給が残業代として割増にならないのであれば、1日10時間、月20日働いても24万円です。アシスタントが慢性的な人手不足である理由がよく分かります。誰だってこんな条件でこき使われるのはいやに決まっています。

絵を描く技術を安く買い叩いてるのはマンガ家自身だと私は思っています。

ではどうしろというのか、労働基準法を守ってアシスタントの労働条件をアップさせたらマンガの絵の密度、完成度は下がるじゃないか、絵の質を下げるわけにはいかないんだと反論したくなる方もいるかもしれません。

私はそれで質が下がるなら下がればいいし、マンガ業界が立ち行かなくなるなら立ち行かなくなればいいと思っています。とっとと潰れろ、と。

労働基準法を守った上で、また、制作に携わる人にまっとうな報酬を支払った上でできあがってきたものが日本のマンガ業界の本来の実力なのではないでしょうか。ドーピングして記録を出したアスリートに私は拍手できません。今の日本のマンガ業界は自分たちが違法なドーピングしてる意識もなく、こんなに私たちはマンガに魂込めてる、頑張ってると大きな勘違いしているのだと思います。

作品が完成するまでアシスタントとともに寝ないで描くというのはもうやめにすべきです。制作予算が少ないなら、その範囲内で完成させる、それでは全く時間も予算も足りないというのであれば報酬+制作予算である原稿料を大幅にアップさせるという当たり前のことをするべきではないでしょうか。

マンガを好きで読んでいる読者の方々には、アシスタントを雇って描かれたマンガはほぼ10割、マンガ家によるブラックな雇用のもと制作されているということを覚えておいていただきたいと思います。

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  • 今村

    お忙しい中返答ありがとうございます。

    >条件は日給2万円(源泉差し引くと19558円)、交通費別途支給、10時~18時まで(休憩1時間)、残業一切なし
    この条件だと本当に月に数日しか雇えないのでアシスタントは掛け持ちが必須になりますし、作業時間的に本当にその現場のやり方をわかっているベテランじゃないと難しいと思います。
    カクイシさんの場合も月1~2回で毎月ではない数回、それも知人のベテランアシという条件ですので、この待遇をどの現場にも採用させるというのはまだまだ厳しい気がします。
    自分の経験などを振り返ってもアシスタントの7時間の仕事に2万円の価値があるかと聞かれれば「必ずしもあるとは言えない」と思いますし、もしこの条件でなければアシスタントを雇えないなら自分はアシスタントを雇わず一人で描くでしょう。

    原稿料ですが、2倍3倍もらえたら確かにありがたいですが雑誌が赤字の時代に結果を確実に出せる作家でもない限り難しいと思います。
    出版社自体人材を育成する余裕がなく、フォロワーの多い絵師やバズった漫画、果てはニコニコの動画投稿者などに手当たり次第声をかけている状態で末期といえばすでに末期です。

    カクイシさんの記事を読んだ感想は「アシってそんな厚遇する仕事じゃないような気がする」「それでも三田氏の雇用はおかしい」でした。
    アシ時代は自分より収入が少なく仕事に苦悩している先生を何人も見てきたし、売れてる先生は売れてるなりに給料に関しては真摯な人だったのでカクイシさんの経験とは少し自分の感覚は違うかもしれません。
    とはいえ、カクイシさんが与えられた条件下でなるべく雇用形態を改善させようとしている姿勢は、私も出来うる範囲で見習いたいと思います。
    先ほどと併せて長文失礼いたしました。

  • id:kakuishishunsuke

    今村さん
    原稿料、月に20~30ページ描いて月10数万という額だとしたら、あまりにもひどいしうまくいくはずがないと思います…。私は現在、普段は他の職場で働いてるベテランのアシスタントの人に(その職場が休みの日に)来てもらっていて、条件は日給2万円(源泉差し引くと19558円)、交通費別途支給、10時~18時まで(休憩1時間)、残業一切なしというものです。毎月ではないし、まだ来てもらったのは数回です。7時間でページ数こなしてもらうために下描きは自分できっちりしておき、ペン入れをどんどんしてもらってます。描き込みの密度も最低限で。私の収入ではこの条件だと月一、二回呼ぶのがやっとですが月刊の内はこの条件でやっていこうと思っています。家賃を抑えめにして4万5千円の2Kの物件を、アシスタントが多く住む地域の沿線で借りました。通いやすいよう駅から徒歩10分以内で。机を二つ置くと狭いのでアシスタントの人が来る日だけ折りたたみテーブルを出して私は描きます。アシスタントの人に机で描いてもらいます。デジタルアシスタントの人に頼めばそこまで物件も選ばなくて良かったかもしれませんが、不安があったので通ってもらえる形を選びました。知り合いのベテランアシスタントも近くに何人か住んでますし。それが連載開始前に私が考えた精一杯の条件です。
    原稿料は相場の二倍か三倍が作画スタッフへの(まっとうな)人件費も含めた制作予算+マンガ家への報酬として本来は妥当なんじゃないかと思います。

  •  

    アシスタントは賃金よりも、漫画家を経験できるといった付加価値の方が大きいだろ。
    何年もやるものでないし、それだけ頼られる、いわゆるプロアシという人間は、普通それに見合ったお金をもらってる。
    正直三田先生レベルの絵を代りに書いた程度で文句言うのはおかしい。
    あの絵のレベルでイラストレーターと比べるのは間違ってる。
    三田先生の漫画は内容で売れただけで、絵にはそこまでの価値がない。
    残業代を請求するのは正当な仕事の対価だからいいとして。

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マンガ家のアシスタントという仕事について

私は大学在学中からマンガ家のアシスタントの仕事を始めました。その後、大学を卒業してから2017年の4月まで12年ほどアシスタントをしていました。

皆さんはマンガ家のアシスタントというと、どんなことをイメージするでしょうか。

好きなことを仕事にしていていいなとか、徹夜や残業ばかりで大変そうとか、アシスタントするかたわら自分のマンガも描いて早く独立したいと考えているんだろうとか、いろいろあるかと思います。

私もいろいろな先入観を持っていましたが、業界に入ってアシスタントの仕事を続ける中で、そのイメージは変わっていきました。

結論から言うと、日本のマンガ業界のアシスタントに対する給与、待遇、地位はその技術に全く見合うものではなく、変えていかないといけないと考えるようになりました。

アシスタントの技術はちょっと絵の得意な人が一年二年で身につけられるものではない、プロの技術と言って良いと思います。しかし残業、徹夜は当たり前、なおかつ残業代・深夜手当などという概念は日本のマンガ家の職場にはほぼ存在せず、それだけ働いても年収にして300万円もらえてれば良い方、200万円台が普通というのが実際のところではないでしょうか。

アシスタントの技術を買い叩いて成り立ってきたのが日本のマンガ業界だと私は考えています。労働時間と給与から見て、マンガ家のアシスタントは奴隷と言っていいでしょう。奴隷が言葉として強すぎるのなら、使い捨てのバイトでもいいです。

私たちの技術は、何なのでしょうか。

私たちのやってきたことは、その程度の取るに足らないものだったんでしょうか。

私は絶対に違うと思っています。

マンガ業界はそろそろそうしたアシスタントの待遇を変えなければいけないし、そのためには何がどうおかしいのか、きちんと言葉にする必要があると考えて、こうしたブログを書くことにしました。

このブログではアシスタントとはどんな仕事なのか、またはマンガ業界でアシスタントがどのように捉えられているのか、私が経験したことや、他にもマンガ家たち、編集者たちの言葉、マンガ家を主人公としたマンガ作品や映画、ドラマから見てとれるアシスタント像などを書いていこうと考えています。

アシスタントの待遇が一日も早くまっとうなものになるよう、できるだけのことをしていこうと思っています。

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  • アシから漫画家になった人

    技術によって対価が変わるのは当たり前です。
    ただ、最低限お互いが納得できる条件・状況にできるよう努力しなくてはいけないと思います。

    良い方向に進むことを願っております。

  • 今村

    技術の対価なら個人によって変動するのでは?
    さすがにどの現場でもアシスタント日給2万勤務七時間というのは高給取り過ぎる印象があります。

    カクイシさんの場合は雇う人が自分の知り合いのベテランアシで作業がアナログ、月に1~2回、まだ一年も経っていない小規模形態なので納得できますが、中規模程度の現場ではその条件では難しいと思います。
    人気連載の現場ではちゃんと安定した月収やボーナスや退職金も保険のためのお金も出すところがありましたし、三田氏の件だけで業界全体を語るのはちょっと……
    まず作家側の原稿料を上げる必要がありますが、雑誌赤字時代に反して漫画を描く人はWebなどに掃いて捨てるほどいる昨今、アシスタントどころか作家の重要性すら低くなってるので難しいでしょうね。

  • アシから漫画家になった人

    その技術の対価が足りないからこうやって声を上げてる人がいるんでしょう。
    横から失礼さんと私も同じ意見で、アシはむしろ足りないぐらいだと思います。
    それと一番大事なことですが、漫画家が欲しいのは勉強しに来る人ではなく技術がある人です。
    勿論漫画の勉強も含めてアシスタントの仕事をすれば良いとは思いますが、お金を頂く以上仕事は仕事ですから。

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