北朝鮮の「美女軍団」、平昌五輪へ 南北にメリット

中国・武漢の大会に派遣された北朝鮮のチアリーダー軍団 Image copyright Getty Images
Image caption 北朝鮮のチアリーダー軍団は、平昌冬季五輪にも登場するだろう(写真は2007年、中国・武漢)

北朝鮮は9日、平昌冬季五輪に代表団を派遣することを発表した。派遣されるなかには、応援団も含まれる。

北朝鮮といえばチアリーダー軍団……では決してないものの、これまで長年にわたり果たしてきた政治的役割は大きい。

どういう人が応援団に

チアリーダーなだけに、メンバーのほとんどは20代前半から20代半ばの女性たちだという。

韓国の南北体育交流協会の金慶星(キムギョンソン)理事長によると、応援団は「容姿にもとづいて」選ばれるだけでなく、「イデオロギー」の適性でも審査されるという。

中国国際放送(CRI)によると、大学生、宣伝隊のメンバー、音楽学校の生徒たちから厳選されるという。さらに北朝鮮政府が、事前に身元を調査し、脱北者の身内や親日派ではないことを確認するためだという。

登場の頻度は

選び抜かれた応援団は、しばしば大観衆の前に登場する。年に一度平壌で開催されるマスゲームと芸術の祭典、アリラン祭には、おそらく毎回出演している。

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Image caption アリラン祭のマスゲームには数千人が参加する

応援団は時折、スポーツ選手の海外遠征に同行している。2007年に開催されたFIFA女子サッカーワールドカップの際にも、中国・武漢へ派遣された。

しかし北朝鮮政府は朝鮮戦争勃発以降、韓国には3回しか応援団を派遣していない。

2002年に釜山で開催されたアジア競技大会には288人の応援団が派遣され、2003年に大邱で開催された夏季ユニバーシアードには303人の応援団が選手に同行した。2005年に仁川で開催されたアジア陸上競技選手権大会には、101人の応援団が派遣された。

2014年のアジア競技大会にも「関係改善」のために派遣されるはずだったが、経費などの諸問題について合意できず、北朝鮮は派遣を見送った。

有名なチアリーダーは

チアリーダーたちはその容姿と揃った動きが人気で、韓国にもそれなりにファンがいる。

「美女応援団 」などと呼ばれ、選手よりも注目されることが多い。

Ri Sol-ju Image copyright EPA
Image caption 金正恩委員長の妻、李雪主夫人は2005年当時、応援団の一員だった(仁川・アジア陸上選手権大会)
North Korean leader Kim and his wife Image copyright EPA
Image caption 李夫人の経歴や金氏との結婚についてはあまり知られていない

一番有名な北朝鮮のチアリーダーは紛れもなく、金正恩委員長の李雪主(リソルジュ) 夫人だ。

李さんは2005年のアジア陸上選手権大会で、応援団の一員として撮影されている。

平昌派遣の意義は

北朝鮮が韓国に応援団を派遣するのは、10年以上ぶり。友好と平和の印の、オリーブの枝を差し出しているかのように見える。

これまでに南北朝鮮の緊張関係は悪化を続けてきた。北朝鮮がミサイル発射を繰り返し、6回目の核実験を実施したせいで、国連や米国は制裁を繰り返し強化した。

北朝鮮は核・ミサイル実験に加えて、昨年は日韓米に対して激しい挑発や脅迫の言葉を繰り返した。

魅力的な北朝鮮の美女たちが五輪大会に登場すれば、世界的な舞台で北朝鮮のイメージ改善につながるだろう。

米国から大会に派遣されるチアリーダーたちとも、公式行事で共演する機会もあるかもしれない。

しかし、得をするのは北朝鮮に限らない。

平昌冬季五輪の運営組織はこれまで、チケットの販売不振に頭を痛めていた。半島情勢が緊迫するなかで、主要会場が北朝鮮からわずか90キロの距離にあるのが、原因だったかもしれない。

それだけに美女軍団の登場は、北朝鮮と韓国の双方にとって、状況改善にもってこいなのかもしれない。

(英語記事 North Korea's cheerleading charm offensive

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