明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、知らないと損する豆知識や社会情勢の変化の個人の生活への影響などを、ファイナンシャルプランニングの視点から発信したいと考えています。住宅・不動産の相談実例を踏まえたテーマの他、政治・経済の時事も興味をもったテーマを取り上げてみたいと思います。

『賃貸住宅の新築抑制中、さて賃貸住宅は供給過剰なのか?』 ~日本の賃貸住宅ストックはどうあるべきか?~

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こんにちは!

明るく前向きに自分の財産を築いていこうと頑張るみなさんに、ハッピーな人生を送るための情報を提供する「ハッピーリッチ・アカデミー」管理人の川瀬です。

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
今日は過熱気味とも言われる「賃貸住宅建築」についてです。

■過熱気味?賃貸住宅新築は抑制中

さて、2018年が始まりました。
色んな経済指標を見ても今年も世界的に景気は良さそうですね。日本でも企業業績は好調なところが多いようです。
消費の活性化が課題だとこれまでずっと言われてきましたが、政府の後押しもあっていよいよ今年は賃上げも本格的に起きそうです。
消費が回復して、景気が安定しますと2019年10月に予定されている消費税の10%への増税を見送らないといけないような要素が減ります。
消費増税が予定通り実行されるということになりますと、駆け込み的な事象も起きて2018年は住宅やクルマ、家電などの大きな買い物が増えるかもしれませんね。

2018年の経済は視界良好、と言ってもよさそうです。
しかし、実は住宅業界において特に「賃貸住宅」はただいま停滞中なのです。

<アパート建設熱、冷める貸家着工6カ月連続減>
(2017年12月27日付 日本経済新聞)
『急増したアパート建設に歯止めがかかり、家賃下落や空室増への懸念が強まってきた。
国土交通省が27日発表した11月の貸家着工戸数は6カ月連続で前年同月の実績を下回った。
金融庁の監視強化で地銀の積極融資が止まり、相続税の節税対策も一巡。過剰供給が住宅市況を揺さぶる。』

アパート建築は、2017年5月まで19カ月連続でプラスでした。アパートローンの借入金利が非常に低いことや、相続税増税に伴う相続対策などが要因でした。
しかし、金融庁が「アパート融資がちょっと過熱気味だ」として、2017年の春ごろには金融機関がアパート・マンション向け融資を引き締めました。
その後、一気に賃貸住宅の着工は減り、以降マイナス基調が定着してしまっているのです。

さて、賃貸住宅は果たして供給過剰なのでしょうか?そして今後はどうなるのでしょう?

■賃貸住宅ストックは老朽化が目を引く

全国の賃貸住宅の空室率はおおよそ13~15%くらいと言われています。すでにかなり空いていますね。
今後、さらに人口も減っていくことも考えると「賃貸住宅はすでに供給過剰。
これ以上建てなくてもよい。」というのが今の世の中のムードのようです。
しかし、果たして本当にそうなのか、ということを住宅ストック統計を見ながら確認してみたいと思います。

国土交通省の統計によると、平成25年時点での日本全国の住宅の総数は5,210万戸。
その内、持ち家が3,216万戸(全体の62%)で、貸家は1,852万戸(同36%)です。
貸家1,852万戸の内のほとんどは「民営貸家」と言われる一般の地主が保有している賃貸住宅です。その総計は1,458万戸(全体の78%)です。それ以外は公営賃貸や社宅などになります。

貸家総数1,852万戸の建築時期別のストックは以下の通りです。

  • 昭和55年以前 387万戸
  • 昭和56年~平成2年 355万戸
  • 平成3年~平成12年 417万戸
  • 平成13年~平成22年 429万戸

平成に入ってからは年間平均でだいたい40万戸くらいが建築されてきたようです。ちなみに「過熱感がある」と言われた平成28年度は年間43万戸が新築されました。

住宅は持ち家でも賃貸でも、一般的に築15~20年になると何らかの修繕やリノベーションが必要になってきます。
貸家総数1,852万戸の内、築年数で17年を超える平成12年以前に建築された賃貸住宅が合計で 1,160万戸、全体の62.6%もあります。
賃貸住宅ストックの過半以上が修繕やリノベーションの時期を迎えているようですね。
さらに、大規模改修とか場合によっては建て替えや解体も視野に入ってくる平成2年以前(築27年超)のストックが約742万戸(全体の40%)と多いことも目を引きますね。
日本の貸家ストックはかなり古いものが多いのです。

■貸家ストックの刷新はあまり進まない?

ここからは推測です。
貸家ストックの多くは改修時期を迎えているのですが、しかしながらその多くは小さな修繕はしても、住宅ストックとしての価値を維持するための大規模な改修などはあまりされていないと思います。
なぜなら賃貸オーナーには大規模修繕とか建て替えをするためのモチベーションがないし、そのための資金もさほどない(と思われる)からです。

民営賃貸住宅の多くは、地主など個人が所有者です。多くの地主は相続対策や固定資産税対策で賃貸住宅を建築します。計画的に減価償却費分を再投資するという考えはあまり持ち合わせていません。そうしようにも家賃収入は、償却期間中はほぼ建築資金として借りたアパートローンの返済に充てられるからです。

建物の減価償却期間は、木造住宅で22年、重量鉄骨で34年、鉄筋コンクリートで47年です。
ローンの返済がようやく終わった頃に大規模修繕の時期が来ているわけですが、修繕に必要な資金はあまり残っていません。
老朽化が進んだことで多少空室が出たとしても借入金の返済も終わっているので収支上の問題はありません。建物があるので相続税評価額は低いままです。
また今から大きな借入をして大規模修繕をしたり、建て替えをしたりするよりも、さほど高くもない固定資産税と維持費がまかなえるくらいの収入があるならばそのまま放っておいてもいい、ということになります。
その頃には地主さんも高齢化していますね。

そうした老朽化の進んでいる古い賃貸住宅に多くの空室が出ているのだと思います。
やがて、相続が起きた後になって、相続人が売却したり、解体したり、大規模修繕したりしてようやくストックが刷新されていきます。

■毎年40万戸程度の計画的な刷新は必要

住宅は老朽化しますので、本当は常に修繕や建て替えなどのストックの刷新が必要です。
特に、古い民営賃貸住宅は断熱性も耐震性も低いし、部屋面積は狭いです。居住環境として決して良くはありません。

毎年どれくらいのストックが刷新されていくべきなのかというと、仮にこの先の人口減少を考えて賃貸世帯数が1,500万世帯とすると、その賃貸需要に対応するための必要供給数は、賃貸住宅の市場での想定耐用年数を30年とすると年間50万戸、40年とすると年間およそ37.5万戸です。
これまでの賃貸住宅の年間新設着工戸数はだいたいこの範囲内ですね。
マクロでみると年間40万戸程度の新築は決して「過熱しすぎ」というほどでもない、ということになります。
空室の多くは築年数の古い物件だと想像しますが、中には築浅なのに空室の多い物件も現実にはあります。
築浅なのに空室が増えて賃貸経営が苦しくなったオーナーさん達が現われるようになると「過熱」とか「過剰」とか言われます。
これは賃貸の数が多すぎるのではなく、建てている物件がその市場の賃貸ニーズとミスマッチを起こしているからです。
賃貸住宅は土地持ちの地主が相続対策などを動機として建てます。いわばプロダクトアウトですね。
どんなにいい賃貸物件を建ててもそこに賃貸ニーズがなければうまくいくはずはありません。

一方で、明らかに賃貸物件が足りていないところもあります。
例えば、3月の終わり頃にファミリー向けの広めの賃貸を都市部で探してみたらわかると思います。まったく選択肢はありません。

賃貸建築の際は、市場のニーズをしっかりと見極めて建築することが大事です。
地主の皆さまにおかれましては、建てることだけを目的とした建築業者のセールストークを鵜呑みにしないようにお気を付けください。

今、持ち家は性能も向上しつつあり、ストックの刷新が進んでいます。
我が国の住宅ストックの4割程度を占める賃貸住宅ストックの質の向上、そしてそのための計画的な刷新も社会的な課題として考えられないといけないと思います。

今回は以上です。
次回もお楽しみに。

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