一般的に、男の人が育児をすることについては「育児に協力的で優しい旦那さん」という評価をする人が多い。この価値観にはあまり男女差がなく、「夫が育児をすることは妻を喜ばせることだ」という考えの人が多数派だと思うし、実際、夫が「育児をしてくれた」りすると「ありがとう、あなた(はぁと)」という感じで、夫への評価を上げている女の人がほとんどだとも思う。
私は、男の人がどれだけ育児をやったところで、それは妻へのポイント稼ぎにはなっていないと考えている。少なくとも、自分の旦那さんがどれだけ育児をやっても、それは私へのポイント稼ぎとしては機能していない。
「ありがとう」は他人が手伝ってくれた場合だけ
男であれ女であれ、自分が作った子どもの面倒を見るのは、その子どもに対しての責任であり、当たり前にやるべきことでしかない。育児をすることが「ヘルプ」という扱いになり、「やってくれてありがとう」という風になるのは、その子どもの親ではない他人が手伝ってくれた場合だけだ。
逆に、親なのにやらないのは大問題でしかなく、親の一存で勝手に産まれてしまう子どもと違って、親になるかどうかは必ず自分で選べるのだから、自分の意志で親になったくせに育児しないとは何事?という話。
私の旦那さんは、世の旦那さんたちに比べたら、かなり育児をしている方の人だと思う。
週に2日ある休みは全て「美咲ちゃんが出かけられるように俺が赤ちゃんとお留守番する日」もしくは「美咲ちゃんと赤ちゃんと3人でお出かけする日」と考えていて、よその人との個人的な予定は一切入れないで空けてくれているから、私は産後すぐから美容院に行けるような状況だったし、仕事の日も、帰宅したらオムツ替えをして、お風呂も毎日2人で入れている。お風呂後の保湿や着替えも、息子が産まれてから3ヶ月半、一日も欠かさずやってくれている。
「今日は仕事が遅くなりすぎるから」と言って中抜けして沐浴をしに帰って来たこともあったし、産まれてすぐの頃に完全母乳で育てようとしていた私に対して「哺乳瓶でミルクも飲めるようにしてくれないと、俺が面倒見れない。おっぱいしかダメだと美咲ちゃんが出かけられないから困る。ミルクもたまにはあげて」と説得してきたほどだった。
赤ちゃんが産まれてからは、というか、息子を妊娠した時から、月に1回ある社員ミーティングという名の会社の経費で行われる飲み会に行くだけで、友達と飲みに行くなども一切していない。本当に、すごくよくやってくれている方の旦那さんだと思う。
「俺は3割くらいはやっている」は大きな勘違い
しかし、私は彼によく「あなたがやっている育児は、全体の1割だよ」と言っている。
そのたびに彼は「いや!俺は3割くらいやってる!」と言い張るのだけど、これは大きな勘違いとしか言いようがないから、毎回そう丁寧に説明している。「いやいや、あなたが知らないところで、あと9倍の育児が存在しているんだよ」と。
彼の「3割」という計算は、育児に携わっている時間を基準としての見積もりになっているのだと思うけれど、まず育児は時間だけで測れるものではない(それに仮に時間だけで計算しても3割は盛りすぎ)。
そして、もしも同じくらいの時間を育児に注いだとしても、母親と父親では、やっていることの質が全然違う。
母乳を出すなど、そもそも母親にしかできない育児も多く、父親でもやれる育児は少ない上に簡単というか楽な事が多い。母親の分担になりがちなことの方が圧倒的にハード。
それに何より、彼(おそらく、多くの働く父親)がする育児というのは、しょせん「やれる範囲でできる限り」のことでしかない。「体力と相談しながら頑張ります」というレベル。
一方、母親がする育児というのは、自分の限界を超えて、とことん子どもの要求に答え続ける、もはやファイトの世界になる。
例えば最近の私は、まばたきした瞬間に寝てしまいそうなくらい眠たくても、赤ちゃんが起きていて遊びたがっていたら寝れない。すでに限界の眠さであっても、目の前で赤ちゃんがギラギラしていたら「次に私が眠れるのはいつのことだろう…!3時間後? 6時間後? 9時間後? 明日…かな?」
こういうことは、よくある。というか基本的に、次に自分が睡眠(食事もそう)をとれるタイミングがいつなのかは、いつも分からない。
また、息子が「抱っこ大好き!」な時期を迎えてからは、数時間単位の抱っこを要求されることが日常になった。そうなるとトイレに行けるタイミングがないことがよくあり、激しめの腹痛に襲われた時などは途方に暮れる。最近は、感じた便意をスルーするしかないことの方が多い。ほとんどを出し逃している。
また、息子は産まれてからずっと、2時間起きにお腹を空かせて泣くスタイルで生きている。昼夜の概念もなければ、まとまって寝ることもない。
そんな息子に、この3ヶ月半、責任を持って授乳をし続けているのは私であり、彼がミルクをあげる時というのは、あくまで自分が起きているタイミングだけだ。寝てるところを起きてあげたことなど一度もないし、そもそも彼は、赤ちゃんがどれだけ泣いても一生気がつかないで眠っている。毎日「え、夜中に泣いてたの?いつ?!」と言う。
どれだけ腰が痛くてもパスなどできない
また、さっきも言ったように息子は抱っこが大好きで、16時間連続で抱っこを求められたこともあるのだけれど、腕やら腰の筋肉の限界を超えながらそれに応えているのは私で、彼が息子を抱くのは、仕事から帰ってきてからソファーで寝落ちするまでの数十分〜1時間程度でしかない。
というか、それさえ日によっては「腰が痛い」など言ってパスする。一方私は、1日の大半を息子と2人きりで過ごしているから、2人の時に抱っこを求めて息子が泣き出したら、どれだけ腰が痛くても抱き上げるしかない。誰もいないからパスなどできない。
先日、腰に爆弾の気配を感じた私は、針金がバキバキに入ったコルセットで腰をぐるぐるに巻き上げて、強制的にその中の筋肉の動きを止め、どうにか爆弾を刺激しない状況を作って、いつも通りの育児を続けた。
また、彼は家にいる時間、オムツを替えてくれるけれど、オムツからウンチが漏れた時のウンチまみれの服や寝具を洗っているのは100%私だし、彼は息子とよくお留守番をしてくれるけれど、その時に使う哺乳瓶を事前に煮沸して準備しているのも、帰ってきてから散らかっている哺乳瓶を拾って洗っているのも私だ。
結局のところ彼がやっている育児は、自分の生理現象を優先にしながらの、なおかつ楽チンなことに限られている。
体調によっては育児をお休みし、眠くなったら平気で寝落ちをして子どものことを気にせず朝までグッスリと眠る(というか眠れてしまう)のが男の人なんだと思う。
父親は、自分の体と相談しながら育児をする(だからしばしば育児を放棄する)けれど、母親は違う。何がなんでもやるしかない状況に置かれている。
そもそも自分の生理現象より赤ちゃんのことが気になるし、泣いてても全然泣かなくても、何かあったんじゃないかと心配でグッスリなど寝ていられない。
それでも育児が少しも苦ではない理由
そういうわけで、私は「育児の9割は私がやっている」と思っているけれど、そのことについて「私一人に何もかも押しつけやがって」などという気持ちは一切ない。
そもそも10割の全部をやる気で産んでいるから別に想定内だし、それ以前に、育児について「押しつける」だなんて、とんでもないと思う。だって育児は、すごく楽しい。
私は毎日、息子と接している間中、可愛くて可愛くて萌え死にそうになっている。
育児は「やりたくてやってる趣味」であって、決して「嫌な仕事」や「面倒な作業」などではない。だから、10割やっても少しも苦ではないし、萌える回数が増えるだけ。もし、押し付け合ってる親がいるとしたら、子どもに失礼な話だと思う。せっかく生まれてくれたのに。
だから、旦那さんが1割しかやっていないことに対して思うのは「たったの1割しかやってないのに、父親の権利をもらえていて良かったね! 」ということ。
今あなたが持ってる父親の権利など、私の気分一つで、いつ剥奪されてもおかしくない。だって、あなたがいなくても子育ては成立してしまうから。そう思っている。
私は彼が育児を全然やってくれなくても不満ではないけれど、育児をやらないのであれば父親ヅラをしないでほしいとは思う。
「父親として」意見をしたり、私と互角に教育方針に参加したいのであれば、5割の育児をやるべき。育てる作業をしているわけでもないのに、方針だけ言われてもそれはウザい。
第二子のことを考えるにあたってもそうで、第一子をまともに育ててない人には、第二子を希望する権限もない。作るかどうかも、作る場合のその時期も、こちらに一任してもらわないと「育てるのは私なのだから」と思う。
私がこう思っていることを人に話すと、「でも、旦那さんは仕事で疲れてるんだから、美咲ちゃんより育児ができないのは仕方ないんじゃない?」と言われるのだけれど、それは違う。
私は9割の育児をしながら、さらに旦那さんよりも稼ぎ、しかもその他の家事まで全てやっている。だからこそ「仕事が忙しい」は、育児をやれない言い訳にはならないと思っているのだけれど、そのことについてはまた次回、詳しく書こうと思う。
私へのポイント稼ぎをしたいならば
ちなみに、ポイント稼ぎの件について補足すると、彼にはいつも「育児をするのは、ポイントにならないからね。ポイントを稼ぎたいなら、私に対して何かをやってくれないと」と伝えている。
具体的には、休みの日に私と遊び、私がやりたかったことを一緒に叶えたり、一緒にお出かけをして、私の中に楽しい思い出を刻んだり、私が食べたいものを食べに連れて行ったり、私が喜んだり笑ったりすることを言ったり、私をキュンとさせることなどが、私へのポイント稼ぎとなる。
ここ最近でキュンとしたことを一つ紹介すると、先日、無性にお弁当屋さんのおにぎりが食べたくなって彼に買ってきてもらった際に、いざ食べてみたらイメージと違っていて、具とお米のバランスが悪くて味のペース配分が難しく、「味がない」という理由で1つのおにぎりにつき3つある角の部分を「ここはいらない」と残しては、机に並べていたところ、片っ端からその上に自分のお弁当のオカズをのせ「ほら、味がついたよ! これで食べられるんじゃない?」と言ってくれた時にはキュンとした。
お行儀が悪いと呆れたり、食べ物を粗末にするんじゃありませんと叱られるよりも、よっぽど素敵な導き方だし、実際その結果として、まんまと私は机の上に6つ並んでいたおにぎりのカケラを完食した。「さすが、やるなぁ」と思ったし、優しくてキュンとしたのだった。