週刊文春「カップ焼きそば真昼間の“怪しい湯切り”撮った」
一月下旬。西新井のアパートの一室から、マスクをした男が出てくる。男は警戒するように周りを見ながら、近くのコンビニへと入っていった。
男は会社員A氏(29)。身長百六十五センチ、中肉中背で、顔は俳優の柄本時生に似ている。A氏をよく知る人物はこう証言した。
「彼がコンビニに行く姿はよく目撃されています。本人は気づかれていないと思っているようですが、コンビニの店員には『また同じ人がきた』と思われています。あだ名も付けられているようです」(関係者)
十分後、A氏がコンビニから出てくると、右手にはビニール袋がぶら下げられている。買い物を終えた様子のA氏は足早にアパートに戻っていった。キッチンでA氏は、袋からカップ焼きそばを取り出すと、おもむろにビニールパッケージを剝がし始めた。
「彼のカップ焼きそば好きは界隈では有名です。毎日一度は食べているそうですよ。大っぴらに公言はしていませんが、信頼できる仲間には打ち明けているようです」(同前)
A氏は慣れた様子で手のひら大のパックを二つ取り出す。かやくとソースだ。同時に、ヤカンを火にかけてお湯も用意する。そして、かやくを麺の上にかけ、お湯を注いだ。ごく普通の光景に見えるが、実はA氏が勤務している食品会社はそのカップ焼きそばのライバル社。そのうえ、A氏はカップラーメンの営業を担当しているというのだ。カップラーメンからカップ焼きそばに“ゲス不倫”していたとなると事態は穏やかではない。関係者は続ける。
「さすがに会社では食べないようですが。だけど、知っている人は知っている話。でも、プライベートですからね。微妙なところです」(同前)
信頼は“五分”では回復しない。
町田康「カップ焼きそば、つくってこます！」
1, お湯を入れる。しかし果たしてお湯は何°Cのお湯を入れればいいのであろうか。わからんではないか。お湯の温度によって、湯切りを待つ時間も微妙に変わってくるのであり、それは5分と書かれているにしても、お湯の温度を書くことがまず先決ではなかろうか。ぎゃふん。
2, お湯の温度問題が解決していないなか進めるのは非常に私のなかでもやもやする感じ感があるが、思い出したよやまちゃん。誰やねんやまちゃんて。かやくもあるよ。かやく。お湯の温度問題が解決しないとかやく問題も解決しないよやまちゃん。だってふくれすぎちゃったり、かたかったりするじゃないの。
3, しかし私はひらめいた。カップ焼きそばごときで私のこの貴重な時間を浪費していたことを私は悔やんだ。説明書きをよく見てみたら、熱湯を注ぐって書いてあったことを思い出したのである。熱湯を辞書で引けば何°Cか書いてあるのではないか。凄まじい勘の鋭さ。みんなみていろ、カップ焼きそば、いってこます。
4, 2週間帰ってこない妻が帰ってくるかもしれない。辞書を壁に叩きつけて私は考えた。私ひとりでも立派にカップ焼きそばをつくることができたなら、妻も私を認めざるを得ないだろう。そう思ってシンクにお湯を流したとたん、ボンと大きな音がなり、私はびっくりして、麺を投げ出してしまった。しまったしまった島崎藤村。私はそのとき、妻の本当の不在の理由を知ったのである。
