「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ

企業統治に詳しい久保利英明弁護士に聞く

2018年1月10日(水)

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 日本の製造業は「堕落」した――。
 コーポレートガバナンス(企業統治)に精通する久保利英明弁護士は、日産自動車や神戸製鋼所などで相次いだ一連の品質問題を、一刀両断する。ゼンショーホールディングスの労働環境問題など、多くの事案で第三者委員会を率いた企業統治の専門家は、資本主義のいろはの「い」が崩れたと警告する。(聞き手は小笠原 啓)

久保利英明弁護士(写真:陶山 勉、以下同)

神戸製鋼所や三菱マテリアル子会社など、日本を代表する大手メーカーが品質関連の不正を繰り返していました。ただし安全性には問題がなかったとみられ、今のところ、重大な事故などにつながってはいません。

久保利英明弁護士(以下、久保利):表面上はそうかもしれませんが、僕はかなり深刻な問題だと思いますよ。頭を下げることすらしない某自動車メーカーの社長さんの姿を見ていると、こんな人たちに日本の製造業を任せて大丈夫なのかと、強い危機感を覚えます。

 かつて、不二家が「消費期限切れの牛乳原料」を使ったことが原因で経営危機に陥ったことがあります。世間から大きくバッシングされ、今では山崎製パンの子会社になっています。

 皆さんはこのとき、何が問題になったか覚えていますか。製造したクッキーやケーキで食中毒を出したわけではありません。社内規定から「1日」過ぎた牛乳を使った可能性がある、との疑惑が浮上したのがきっかけです。

 この問題が発覚したら、大手コンビニやスーパーは不二家の製品を一斉に撤去しました。「社内ルールすら守れない企業の商品は販売できない」というのがその理由です。

 過剰反応だと言う人もいるかもしれませんが、僕はまっとうな経済社会の姿だと思います。ルールや契約は守られるべきなのです。

「甦れ!ニッポンの品質」の目次

「「トクサイ(特別採用)」は製造業の堕落だ」の著者

小笠原 啓

小笠原 啓(おがさわら・さとし)

日経ビジネス記者

早稲田大学政治経済学部卒業後、1998年に日経BP社入社。「日経ネットナビ」「日経ビジネス」「日経コンピュータ」の各編集部を経て、2014年9月から現職。製造業を軸に取材活動中

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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